思わぬ拾い物(人)をしたんですけど⁉
はい。絶賛今死にそうな状況になっている私です。リンちゃんです。
えー、私は今、どこからともなく家の前に現れた謎の男性によって私が纏っている結界ごと握り殺されそうになっています。本当になぜ?
「貴様かっ!貴様が……我が愛娘を惑わせ、あまつさえ誘拐するとはッ!下等生物風情が思い上がった真似をしおって……!許さぬ。絶対に許さぬぞ!!貴様だけはッ!我が手ずから屠ってやる!」
痛い痛い痛い。
いくら私がね?普段結界を体を覆う膜のようにしているとはいえね。中身は生身なんですよ。どんだけ結界が固くて物理攻撃も魔法攻撃も基本効かないとしても。何事も例外はあるのです。たとえば……今みたいに結界ごと圧殺されそうになったり、とかね。
うん。さて……いたって冷静を装っていますけどどうしたものでしょうか。しかもこの人が言っている娘をどうこうって話、心当たりないんですけども!
えーっと?なぜこうなったんでしたっけね……ふふ。どうやって脱出するか考えてる最中なのですけども。ちょっと現実逃避の回想に付き合ってほしいものです。
***
あれは……そう。今から2日前のことでした。その日の私はアルドさんがこの街にも低級のダンジョンがあると言っていたのを思い出したので、せっかくだし行ってみよう!ということで冒険者ギルドにいつものように向かおうと家を出た時のことでした。
意気揚々と家のドアを開けて外に出て、柵で囲ってある家の敷地から出たらですね。なんとびっくり見知らぬ少女が二人、折り重なるように倒れているではありませんか。どうやらかろうじて息はあるようです。まぁ、その現実を認識した上で私は一旦現実逃避モード入ったのですけど。
「いや~、リーデ。今日はいい冒険日和だね」
「そうですねご主人様。気持ちのいい晴天です」
「…………で、コレ、どうしよっか」
「……どうしましょうね」
どうしようとか言ってますけどまぁ答えは決まっているのです。コレが出先で見かけたのなら……スルーの可能性もありましたが。流石に私の家の前で明らかボロボロでちょっと衰弱もしているだろう訳アリっぽい少女たちを見捨てる選択肢はないんですよね。だって、見捨てたら寝覚め、悪いじゃないですか?
私がのんびり好きに生きるためにスローライフ送りてェ!って願望あるのに罪悪感だとか抱えて生きたくはありません。それでも、救える力があるから力を振るうとか……そんな物語の主人公みたいなことは言いませんが。
「ふぅ……リーデ、今日の予定変更ね。リーデはこっちの獣人の子運んであげて。私はこっちの女の子運ぶよ」
「かしこまりましたご主人様!ウフフ」
「……なに?」
「いいえ?ご主人様はきっと見捨てることはしないだろうなと思っただけですわ」
……まぁ、そうね。内心はどうあれ傍から見ればそう見えるのかな。うんまぁそれでいいですよ。
「御託は良いから運ぶよ。あとできればその子ベッドに寝かしたらマーシャさん呼んできてくれる?まぁ医者ならマーシャさんじゃなくてもいいけど」
「かしこまりました。すぐに行ってまいりますね」
「うん、よろしくー」
マーシャさんというのはこの街で治療院に勤務しているウサギの獣人の女医さんだ。そしてフェルンさんの幼馴染でもあるらしい。この前偶然ギルドの仕事が休みだからと街を散策しているフェルンさんとマーシャさんを見かけてそう教えてもらいました。
マーシャさんに来てもらい、ベッドに寝かせた二人を診察してもらうと獣人の子は栄養失調だとか。もう一人の少女は魔力欠乏のようです。一応栄養剤のような薬を処方してもらい、それから安静にさせるようにという助言を告げてマーシャさんは治療院へと戻っていった。
診察が終わりマーシャさんが帰った後、とりあえず私とリーデで協力して二人の少女の体を拭きました。おっと弁明しておきますが私にはスケベェな下心なんてものは一切ありませんからね。たとえ中身が一般童貞男性だったとしても、気を失っている弱った女性をそういう目で見るゴミクズではないことだけは強調しておきたいのです。童貞でもその程度の分別はある!
とりあえず二人の体を拭き終わった後はまた二人をベッドに寝かせた。空き部屋はまだ2つはあるので一応部屋は別にしてあります。一つのベッドを共有しての看病?は違うと思いましたので。獣人の子にはリーデが、もう一人の子には私が着いていることにしました。
それから数時間後……
私は読書をしながらベッドに寝かせた少女が目を覚ますのを待っていた。すると……
「ん………」
どうやら目を覚ましたようですね。
「お目覚めですか?体の調子はどうです?」
「ッ⁉あ、あんたはどこの誰でここはどこ⁉私に何をしたの‼」
同時に少女は立ち上がり、そして詠唱もなしにどこからともなく大きな鎌を私の首元に向けてきた。大鎌の刃を私の首の後ろから。それだけでは抵抗されることを理解しているのか、大鎌の持ち手の途中からまた別で棘のようなものを突き付けている。
まぁ混乱してますね。見知らぬ天井で目を覚ました自分。そしてすぐ近くには見知らぬ人間に無防備を晒している。……うん、混乱するのも妥当な状況ですね?私でも同じことしますもん。
「あらら、こわ。状況は説明しますから落ち着いてください。まず私はリン。リン・エステルと申します。ただの冒険者ですよ。貴方ともう一人の獣人の子は私の家の前で折り重なるように倒れてたんですよ。最初は死体を捨てられたのかと思って焦りましたよ……。あ、もう一人の子は別室で寝かせてますからそこは安心してください」
やれやれと肩をすくめて見せるとやや警戒を解いたのか、少女は自己紹介を始めた。もちろん、まだ大鎌は残したままで。
「それで、貴方たちは?お名前と、できればどうして私の家の前で倒れてたのかも教えてもらえませんか?」
「……私は、ルミナ。ルミナ・ブラッドリア。吸血鬼よ。」
それから彼女―ルミナさんはポツポツと事情を話してくれたのです。なんでも家で父親から過保護な扱いを受けるのが嫌になり家を飛び出してきた、と。で、道中で力尽きそうだった所、人攫いに捕まり、そして隙を見て逃げ出してきたそう。一緒にいた獣人の女の子はその時一緒に逃げてきたようで名前とかは知らないようですね。
「なるほど。大変ですね。……ご実家には、戻らないのです?戻りづらいでしょうけど、親御さんは心配なのでは?」
「……できれば、戻りたくないわ」
……ま、そうでしょうね。家出してきてんだから素直に家に帰る訳ない、か。それか気まずくて帰りづらいと。いずれにせよ、戻らないなら衣食住をどうにかする必要があるでしょう。
「お金は、持っています?」
「多少はあるわ……だけど、宿暮らしを続けるには心もとないわ……」
「それじゃ、帰りたくなるまでは、家で一緒に暮らします?」
「え?」
「帰りたくないんでしょう?そしてお金も心もとないと。なら、家でしばらく一緒に住めばいいと思います。もちろん家事なんかは分担で手伝ってもらいますけどね。食と住に関してはしばらく保証しますよ」
なまじ拾って関わってしまった以上は目が覚めたからとはいさよならーなんて出来ませんのでね。




