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47.弟子入りする ④

 依織と離れたトオルは、時計回り方面の浮遊船に乗り、六つ目の駅で降りた。ここはセントフェラストの西南、ハイニオスとロッドカーナルの間にある工場団地だ。ただ、工場団地とは言っても、煙突が林立していたり、粗末なタンクや配管があるわけではない。巨大な建物はあるが、空気は新鮮で、街中で見かけるような小魔獣が棲息している。人の気配がない、閑静な町だった。


 私有地と道路の間にはフェンスや垣もなく、代わりに歩道や芝生、花壇など開放的なエリア分けが行われている。ここでは機元作りをはじめ、色々な資源の材料加工、日用品の製造工場などが集まっている。


 トオルはマスタープロテタスのマップ案内に従って歩き続けながら、時折周辺の風景を眺めた。タマ坊も、主人から離れないよう、着いてきている。


 地図上にマークした目的地に到着した。

 大地に置かれた大きな帽子のような、高い建物が建っている。工場の後ろには離着陸場があり、六角柱型のコンテナが、翼のないトンボのような飛空貨船によって運ばれていった。


 余計な悪印象を与えないよう、トオルは念のため、タマ坊をポケット納屋に入れた。ポケット納屋には大小問わず、どんなものでも入れられるが、トオルの持っているのは初心者ランク型のため、20点が上限になっている。


 タマ坊を収納すると、トオルは工場の入り口まで歩み寄った。入り口には蜂の巣のような機元が設置されており、トオルの存在に気付くと、裏側にあった監視カメラが彼に焦点を合わせた。


トオルが玄関付近でまごついていると、扉の隣のセンサーが点滅し、気の強そうな老人の声が聞こえてきた。


「坊や、わしの工場でウロウロして、一体何の目的じゃ?」


「ぼくは仕事の申し込みをしにきました、左門トオルです。依頼紹介所のホクシーさんから情報を受け取り、こちらを訪問しました」


「そうか、お前が弟子入りに来た坊やか。中はちと複雑でな。道を開けるから、こちらに来なさい」


 扉が開き、トオルは中に入った。いくつ左に曲がり、いくつ右に曲がったか、数えられなくなっていく。ネズミの迷路実験のように、トオルは道を進んでいく。そして扉が開くと、外観の新しさとは打って変わり、古い廊下が見えた。光源の明るさは十分で、天井には輸送のための金属配管が複数見えた。配管は途中で曲折し、さらにまっすぐに伸びていく。その先は見えなくなった。急に時代が変わったような工場内部の光景を、トオルは不思議そうに眺めている。


――思ったよりレトロだな。次はこっちか?


 鋭い聴覚を持つトオルは、いくつかの部屋から響いた音が気になっていた。音のする方を覗いてみると、あちこちの部屋に、タンク型の機元が稼働しているのが見える。タンクの狭い観察窓はオレンジに光り、ドロドロの液体になった金属が混ぜられる音がしていた。


 さらに歩いて行くと、ガラス窓の向こうに広い部屋が見えた。そこは機元パーツの製造所になっているらしく、その過程を見ることができる。金属以外の材料の生産もしているようだ。品質管理、包装の作業も見ることができたが、どこにも人間はいない。作業しているのは全て機元だった。


 Mr.バルツァーの元へと向かう道中は、工場見学そのものだった。トオルは最後に倉庫まで導かれた。天井が一気に高くなり、生産されたパーツが箱に入って山積みされている。倉庫の裏口のゲートは降りているが、おそらくあの向こうに、飛空貨船の離着陸場が繋がっているのだろう。


――案内が終わった。どこへ行けばいい?


 そう思った矢先、大型の箱が30も乗った貨物用の飛空艇が低速で飛んできた。後ろにある半開放式の操縦席には一人の老人が座っている。オウムガイのようなヘルメットを被り、太い鼻の下にはハの字に白い髭を伸ばしている。頬にも白い髭が見えた。


「すみません、弟子入りに来ました、左門トオルです。案内の途中で迷子になってしまったんですが、代表者のバルツァーさんの所へ連れていっていただけませんか?」


「わしがバルツァーじゃ。この貨物を下ろすから、待ってくれ」


 玄関で聞いた声と同じだと分かり、トオルは「はい」と言って頷いた。


 飛空艇が指定場所へと飛んでいき、箱の上に箱を積み上げていく。

 作業が終わると飛空艇はUターンし、またトオルの前で止まった。


「わしについて来い」


 太い白眉に、銅鈴のように大きな目。いかにも厳しそうな人だ。


「はい」


 トオルが返事をする間に、老人は飛空艇を駐船スペースに止めた。


 老人が操縦席から降りた。銀灰色の工作用スーツには、注意喚起のため黄色の紋様が入っている。身長は173センチのトオルよりやや高く、少し太っている。この老人が、製作所の代表、ブルーノ・バルツァーだ。


 ブルーノはトオルの前にやってくると、しばらく品定めするように彼を見た。そして、熱気のある声で彼に言う。


「わしの弟子になるには細すぎる。女のようじゃ」


 トオルは何も言えず、ただ「はい」と頷いた。


「言っておくが、わしの修行は厳しい。お前、体力的に耐えられるか?」


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