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リバースプロキシ  作者: 如月いさみ


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親子の形

太蔵は暫く沈黙を守ったものの息を吐き出すと

「心当たりはありますね」

と答えた。


春彦は大きく目を見開いた。

あっさりと応えてきたからである。

「それは?」


太蔵は「あれは9年か10年ほど前です」と言い

「私は楠野という親友と喧嘩になり彼の利き腕を折ってしまったのです」

彼も私と同じ画家だったのですが結局それが原因で絵を描くことをやめてしまい

「九州から去ってしまいました」

と告げた。

「もし思い当たるとするとそれくらいかと」


春彦は少し考え

「それでその時に大岡さんは」

と言いかけた。


太蔵は吐き出すように

「互いに手を出し合ったということと楠野は警察沙汰にはしないと私の前から消え去りました」

と答えた。

「それ以来、楠野と連絡は取っていませんが間違っても彼はこういうことをする男ではありません」


春彦はふぅと息を吐き出すと

「分かりました」

その楠野さんのフルネームをお聞きしても良いですか?

「脅迫状の内容的にも合致するので調べたいと思います」

と答えた。

「それから、もしかしたら辞退だけが目的ではないかもしれないので身の回りの用心をしておいてください」


太蔵は「わかりました、宜しくお願いします」と答え

「名前は楠野蓮司と言い私と同じ45歳…1977年の10月19日生まれです」

生家は福岡県の博多市です

「今は彼の家も人手に渡っています」

と告げた。


春彦はそれに目を細めて

「…」

と少し間を置くと

「ご協力ありがとうございます。一応、彼のことも調べるようにします」

と答えた。


そして、通話を切るとメモを見て腕を組んだ。

「福岡芸術展の審査委員長か」

タイミングがなぁ

と伽羅の部屋の方へと目を向けた。


伽羅が今描いている絵を出品するのがこの芸術展だ。

自分がこんな関りを持って変に不正などの言いがかりになってしまったらと思うと心苦しかった。


だが、今回の脅迫状を現実にしないために努力を惜しみたくはなかったのである。

止められる犯罪があるなら止めたい。


犯罪は被害者も加害者もその周りの人々も…全てを不幸にするだけなのだ。

春彦は立ち上がると伽羅の部屋へと向かった。


今、美術展に出すための絵を描いている最中なのだ。

邪魔はしたくはなかったが、話しておくべきだろうと思ったのである。


春彦は部屋の前でノックすると

「伽羅」

いま良い?

と戸を開けた。


伽羅は振り向くと

「何?春彦」

と答えた。


春彦は絵を見ると「おおお」と声を零して

「…俺、凄くかっこよく描いてもらってる」

と呟いた。

伽羅は笑うと

「そんなことないけど」

んー、かっこ良く書き過ぎてるかな?

と春彦を見た。


春彦は頷いて

「多分」

と笑って

「あ、その話があってきたんだけど」

と続けた。

「実は、海埜さんから来た依頼なんだけど」

依頼人が今度の展覧会の審査委員の一人なんだ


伽羅はきょとんとして

「うん、それで?」

と答えた。


春彦は「いや、もし伽羅に迷惑かけたらなぁと思って」と答えた。

「変に勘繰られたりとか色々心配したんだけど」


伽羅はにっこり笑うと

「俺、気にしないよ」

と答えた。

「春彦は春彦のやりたいようにやって欲しい」

俺は人智を尽くして天命を待つだから

「その後の結果は結果じゃん」

変な噂されても気にしない


「そんなことで春彦のやりたい事を妨げたりしない」


最後までお読みいただきありがとうございます。


続編があると思います。

ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。

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