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リバースプロキシ  作者: 如月いさみ


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遠い日の約束

春彦は真っ直ぐ球体を見ると

「俺は島津家の当主として…システムに命令する」

島津家当主は今この場から秋月家当主と全く同じ権限を有するマスターチェンジをする

と告げ、指先を前に出すと動かした。


春彦は3月に狙撃された時に赤子の頃の記憶を取り戻したのである。

つまり、このシステムの操作方法を熟知していたのである。


「マスターチェンジを受け入れます」

これより秋月と島津に同じ権限と同じ責務を付与します


元は驚いて直彦を見た。

「夏月、これは」


夕弦も剛士も驚いた表情のまま直彦を見た。

直彦は隆に支えられたまま彼らを見て

「秋月家はシステムの番人だ」

それはシステムを自由にできるがシステムが無くなるまで永劫的に管理し続ける必要がある

「それが、あの秋月直樹の存在の在り方だ」

と告げた。


その意味を全員が理解した。

いや、元は允華から聞いていたので想定はしていたのだ。


元は息を吐き出し

「春彦君はその責務をお前と背負ったということか」

と告げた。


直彦はコクリと頷いた。


春彦は円盤から降りると彼らのところへ戻り笑顔で

「全てを分かった上で俺が決めたことだから」

後悔はないから

ときっぱりと言い切った。


隆は春彦に手を伸ばして頭をガシガシ撫でると

「まったく、お前たちは」

と呟き

「お前達だけにはしないから…絶対に」

と告げた。


ずっと。

ずっと。

直彦と春彦の側にいて支えてきたのだ。


直彦は頷いて

「隆、ありがとうな」

と呟いた。


元も夕弦も剛士も大きく頷いた。

「俺達も同じだ」

「ああ、俺も末枯野も全力で地域の家系を探してコンタクトを取る」

「そうだ、夏月。それに春彦君、任せてくれ」

そう告げた。


春彦は「ありがとうございます」と答え、直彦に手を伸ばすと

「直兄」

その一歩だなよな

「これが」

と笑顔で呼びかけた。


直彦はその手を見て大きく目をも開いた。


自分が今まで手を伸ばして引っ張ってきた。

だが今、気付くと春彦が直彦の手を引っ張っているのだ。


直彦は手を掴み

「ああ」

これはまだ一歩だ

と答え、立ち上がった。


二人は円盤の元に行くと同時に指先を伸ばした。


「このデータベースシステムのフォーマットを請求する」

言って同時に指を動かした。


「データおよびプログラムのフォーマットを実行します」

球体の上の方から光が失われそれが全体に及ぶとシュンッと音と共に球体はその全ての電源を落とした。


同時に何処からか機械音が響いた。

『システムの完全停止を確認しました』

1分後にこの空間を閉鎖します


6人は顔を見合わせた。


剛士は固唾を飲みこむと

「それはここが崩れるってことだろうな」

と呟いた。

夕弦は踵を返すと

「じゃないのか?」

と言い

「動けるか?夏月に春彦君」

と聞いた。


剛士は春彦を抱き上げると

「掴まってろ」

と走り出した。


隆も直彦を抱き上げて

「考えたら二人とも走れるくらい回復してからの方が良かったかもしれないが」

言ってる場合じゃないな

と走った。


元が殿を務め

「一分ある」

とにかく躓かないように走れ

と走り出した。


夕弦が先頭で誘導し全員がその空間を駆け抜けた。

時間が止まることはない。

巻き込まれたら全員あの世へ直行することになる。


今の直彦と今の春彦も、である。


全員が滝の中から外へ飛び出した瞬間に後ろで大きな岩が崩れる音が響き滝の水が流れ出して土煙で濁った。


元はゼーハーゼーハーと肩で息をしながら

「これからの注意事項に入れておかないといけないな」

と呟いた。


夕弦も頷いて

「確かに」

と答えた。


直彦は滝の横手の道を見ると

「丘…残っているか見ても良いか?」

と聞いた。


それに全員が頷いた。

息を整えて全員が歩いて滝の横手の道を通り、開けた視界の中に映る緑の丘を見つめた。


隆は直彦を抱き上げると

「登ってやる」

と歩き出した。


剛士も「じゃあ、春彦君も病み上がりだからな」と抱き上げて丘を登った。

夕弦も元もゆっくりと丘を登った。


春彦は丘の上から周りを見渡し

「昔、直兄に連れてきてもらったことある」

と呟いた。


直彦は笑顔で

「ああ、ここが清美との思い出の場所だからな」

と涙を落とした。


「ここは俺が泣いても良い場所なんだって…泣けない時はここにきて泣いて良い場所だと清美が連れてきてくれた場所だ」


全員が丘の上に座り空を見上げた。

もう、特別な家系を増やすことはできない。

それはこの日本の大きな変革であった。

特別な家系はこれから消えていくことになっても、もう再び生まれることはなくなったのだ。


だが。

これもまた一つの通過点に過ぎない。


元は空を見上げて

「まだ、システムは13残っている」

これからだ

と告げた。


夕弦も剛士も隆も頷いた。

直彦と春彦も顔を見合わせて大きく頷いた。


これからが本当の始まりだったのである。


彼らの頭上には空が一面に広がり、ふと見上げた彼らの目に一際強く輝く星の光が瞬いていた。


最後までお読みいただきありがとうございます。


続編があると思います。

ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。

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