巌流島の恋人たち
須理は視線を下に向け
「お兄様はお姉さまの浮気を知って激怒してお姉さまを問いただしたらお姉さまは離婚してほしいって」
結婚は間違っていたって家を出て行こうとして
「揉みあいになって…階段から下へ落ちて」
と告げた。
和也は俯いて
「姉さんが他の男性と」
と呟いた。
須理は首を振ると
「でも違うの、お姉さまだけが悪いんじゃないの」
お兄様だって他で女性と浮気していたわ
「帰ってきても跡取りを作るためにだけでお姉さまも寂しかったのよ」
父も母もそんな兄に何か言うわけでもなく全てをお姉さまのせいにして責めて
「血筋の子供を残すだけの人形みたいに…久那家自体の問題だったの」
と俯いた。
「ごめんなさい」
本当にごめんなさい
「お姉さまを大切に出来なくて、そのうえあんな形で死なせてしまって」
和也は目を閉じて息を吐き出すと
「それは荒戸も同じだ」
姉さんが嫌がっていたのに久那に荒戸の血の孫を残せばと
「父と母が無理やり結婚させたんだ」
と須理を見た。
須理も泣きながら苦く笑みを浮かべると
「結局、私たちは家の道具なのよ」
私だって…平良家の10歳も上の人と無理やり結婚させられるの
「それで最後に和也に会って全て話して…死のうと思ってた」
だってその人は私を必要としているんじゃなくて久那の血が欲しいだけだって凄く分かるんですもの
と両手で顔を覆った。
和也は顔を歪めると
「俺は…俺は好きな人と結婚したいと思っている」
血を残すとか
「特別な家の勢力争いだとか関係なく」
と呟いた。
須理は顔を上げると
「私も…だけど無理」
もう何もかも遅い
と唇を噛みしめた。
春彦はそれを見て
「…俺、二人が高校二年まで凄く仲が良かったってみんなが言っているって聞いて本当に仲が良かったんだって思ったんだ」
と告げた。
「家系も何もかも取り払って、もし好きな人がいるんなら言った方が良い」
例えばさ、特別な家系が関係ない人に好きって言えるのに
「同じ特別な家系の人には言えないっていうのは反対に家系を気にしているってことにならない?」
須理も和也も春彦を見た。
伽羅は頷くと
「そうだよ、今だってお互い庇ってばかりじゃん」
二人とも二人のこと大切に思ってるじゃないの?
「須理さんがお姉さんのこと話したのも和也さんが不幸になるって春彦がいったからじゃないの?」
それに最後に和也さんに会ってって…やっぱり和也さんが特別だから最後に会いたかったんじゃないの?
と告げた。
春彦はにっこり笑うと
「自分の命を傷つけても」
相手の命を傷つけても
「それは誰も幸せにならない」
相手の命を自分の命を大切にするための方法を見つけることが幸せになる道だと俺は思う
「二人にとってその道は今思いを正直に口にすることだと思う」
相手が好きなら好きだって
と告げた。
和也は須理を見ると
「家同士は今憎しみ合ってるけど、俺は須理を憎いと思ったことはない」
幸せになって欲しいし俺が幸せにしたいと思ってる
と笑顔を見せた。
須理は泣きながら
「私も和也に幸せになって欲しいし、もし、もし、和也が全部全部許してくれるなら私は和也の横で幸せになりたい」
と微笑んだ。
「ずっと、好きだった」
ずっとずっと
和也も笑顔で
「俺も須理の事が家とか関係なく好きだった」
と告げた。
「もし、許してくれなかったら二人で家を出よう」
特別な家系の力なんか俺はいらない
須理は頷いた。
「私も」
春彦と伽羅は笑顔で安堵の息を吐き出した。
最後までお読みいただきありがとうございます。
続編があると思います。
ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。




