巌流島の恋人たち
二人が到着したのは午前11時半。
昼食前であった。
春彦は車椅子に乗って玄関口に二人を出迎えると
「初めまして」
夏月春彦と言います
「来ていただき感謝します」
と挨拶をした。
伽羅も横に立ち
「俺は松野宮伽羅です」
宜しくお願いします
とペコリと頭を下げた。
久那須理は戸惑いながらも
「初めまして、お招きありがとうございます」
と答えた。
荒戸和也も頭を下げて
「初めまして、こちらこそお招きいただき感謝いたします」
と答えた。
春彦は広間に手を向け
「どうぞ」
昼食の用意をしています
と誘った。
それぞれ席に座りゆっくりとコース料理が運ばれた。
譲はその間ドキドキと日頃味わうことのない緊張を味わっていた。
二人を呼んでどうするのだろうか?そう思ったのである。
食事が終わり、紅茶が運ばれると和也が最初に口を開いた。
「あの、今日は何故、俺と…その彼女をここへ?」
そう問いかけた。
春彦はそれに二人を真っ直ぐ見つめ
「このままだと巌流島で久那さん、貴女が和也さんの前で死ぬことになります」
未来でそれが起こるだろうことを知ったのでお呼びしました
と告げた。
須理は目を見開き
「な、ぜ…それを」
と視線を逸らした。
彼女はこの招待が無ければ荒戸和也を誘い巌流島で全てを告白して死ぬつもりだったのだ。
春彦は息を一つ吐き出すと
「そうなる原因は高校2年の夏の事件にあると思っています」
すみません、お二人のこと調べさせていただきました
と告げた。
和也は視線を伏せると唇を閉ざした。
春彦は二人を見て
「荒戸家の長女…和也さんのお姉さんが久那家に嫁いだが亡くなってしまった事件」
それが切っ掛けで久那家と荒戸家は決別してしまった
「和也さんも須理さんと仲が良かったけれど離れてしまった」
と言い
「でも和也さんは今も貴女を思っていると俺は思います」
と告げた。
須理は和也を見た。
「…そんなことはないわ、彼のお姉さまを死なせてしまった敵の家系ですもの」
和也に殺されるその未来は当然起こって当たり前だと思うわ
「その方が救われるわ」
和也は唇を噛みしめると
「馬鹿な」
須理が理由もなく人を傷つけたりしないって俺は知ってる
「何があって姉さんが死んだのか…それも分からないのにお前を傷つけてどうするんだ」
と吐き捨てた。
春彦は「俺もそうだと思います」と言い
「貴女が死んだあと和也さんは貴女の側にずっと座っていました」
恐らく一晩中
「そんな人が貴女を殺したりしないと俺は思います」
もし殺したのなら恐らく船を利用してその場から離れていると思います
「それだけの力を和也さんは持っている」
と言い
「だからこそ、俺はそんな悲しいことを起こしたくないと思っています」
と告げた。
「須理さん、高校2年の夏にあった真実を今ここで話した方が良い」
貴女は少なくとも和也さんを嫌いではないと俺は思っています
「貴女の亡骸を一晩中見つめ続ける彼の悲しさが分りますか?」
そんな悲しいところへ彼を追い詰めて良いんですか?
…それは貴女だけの不幸じゃなく和也さんの不幸でもあると思う…
須理は息を吸い込み吐き出すと
「和也の」
とチラリと和也を一瞥し、しばらくの沈黙の後に
「…全て話すわ」
それで憎まれるならそれも仕方ない
と告げた。
「あの日、お姉さまが妊娠したことがわかったの」
だけどその子供はお兄様の子供ではなく
「お姉さまが他の男性と浮気をして作った子供の可能性があったの」
和也はそれに目を見開いた。
最後までお読みいただきありがとうございます。
続編があると思います。
ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。




