第4話最初の仲間
楽しんでってください
病院を飛び出す。
夜風が顔を叩いた。
父「72時間……」
残り時間。
71時間42分。
スマホに表示され続けている。
父「絶対に間に合わせる」
娘を助ける。
今はそれだけだった。
_________
東京第七ダンジョン。
深夜。
探索者の数は少ない。
父「第十階層……」
昨日までの俺なら考えもしなかった。
第十階層。
初心者が入ればまず死ぬ。
それでも行くしかない。
娘が待っている。
妻が待っている。
父「よし」
一歩踏み出そうとした瞬間だった。
女「待ちなさい」
父「?」
後ろから声が聞こえる。
振り返る。
そこにいたのは一人の女性だった。
黒髪。
赤い瞳。
長身。
スーツ姿。
年齢は二十代後半くらいだろうか。
胸元には探索者協会のバッジ。
女「あなた昨日のFランク探索者ね」
父「協会の人か?」
女「そう」
女は腕を組む。
女「名前は神崎レイ」
父「……」
女「聞いてるわよ」
女「鉄皮狼を倒したんですって?」
父「まぁ」
女「嘘だと思ってた」
父「俺もだ」
女「……」
女は少しだけ吹き出した。
父「なんだよ」
女「いえ」
女「あなた面白い人ね」
父「娘が死にそうなんだ」
父「冗談言う余裕はない」
レイの表情が変わる。
真剣な顔。
レイ「星蝕症候群?」
父「知ってるのか?」
レイ「えぇ」
レイは頷いた。
レイ「だから第十階層に行くのね」
父「星蝕草が必要なんだ」
レイ「無理よ」
即答だった。
父「……」
レイ「今のあなたじゃ第六階層も危ない」
父「でも行く」
レイ「死ぬわ」
父「それでも行く」
レイ「……」
父「娘が待ってるんだ」
父「俺は父親なんだよ」
沈黙。
レイは数秒黙った。
やがてため息を吐く。
レイ「ほんと」
レイ「バカね」
父「知ってる」
レイ「自覚あるのね」
父「ある」
レイ「……」
再び沈黙。
そして。
レイは腰の剣を抜いた。
銀色に輝く美しい剣。
父「何する気だ?」
レイ「決まってるでしょ」
女は笑う。
レイ「私も行くのよ」
父「は?」
レイ「一人より二人の方が生存率高いでしょ」
父「なんでだ」
レイ「気まぐれ」
父「信用できねぇ」
レイ「私もFランク探索者なんて信用してないわ」
父「お互い様か」
レイ「そういうこと」
女は手を差し出した。
レイ「よろしく」
父「……」
少しだけ迷う。
でも。
今の俺に選択肢はない。
父「よろしく」
手を握る。
その瞬間。
《条件達成》
父「?」
また文字。
《家族以外の大切な存在を認識》
《スキル:絆が解放されました》
父「は?」
レイ「どうしたの?」
父「いや……」
頭が痛い。
今度は絆。
なんなんだこの能力。
《仲間がいる時能力上昇》
《信頼度に応じて上昇率増加》
父「チートじゃねぇか……」
レイ「だからどうしたのよ」
父「いや独り言」
レイ「変な人」
父「よく言われる」
レイ「そうでしょうね」
二人は顔を見合わせる。
そして少しだけ笑った。
________
ダンジョン第五階層。
ゴォォォォォ!!
巨大な咆哮。
父「なんだ!?」
レイ「下がって!」
次の瞬間。
壁を突き破って現れた。
三メートルを超える巨体。
漆黒の毛皮。
真っ赤な瞳。
巨大な牙。
レイ「最悪ね……」
父「知ってる奴か?」
レイの額に汗が流れる。
レイ「第五階層の主」
レイ「ブラックファングよ」
父「強いのか?」
レイ「Bランク」
父「……」
父「帰っていい?」
レイ「駄目」
父「だよなぁ」
ブラックファングが咆哮を上げる。
大地が震える。
圧倒的な威圧感。
昨日の鉄皮狼なんて子犬に見える。
レイ「逃げる?」
父「無理だろ」
レイ「そうね」
父「娘が待ってる」
レイ「私は付き合ったことを後悔し始めてる」
父「俺もだ」
レイ「最低」
父「お互い様だ」
ブラックファングが地面を蹴る。
迫る巨体。
死の気配。
だが。
父は拳を握った。
娘の顔が浮かぶ。
妻の顔が浮かぶ。
絶対に帰る。
そう約束した。
父「悪いな」
レイ「?」
父「まだ死ねねぇんだ」
ブラックファングの爪が振り下ろされる――。
F守、書いてて楽しくないわけではない
でもAPOLLOの方が俺は好き。
APOLLOは日常編とか文字数少なめで読めるので、もしそれ読んでみて合いそうなら本編読んで欲しいです




