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投資家の弟、異世界の兄に課金して無双させる~スマホとスキルの経済チートで世界を買い取る~  作者: かぶんす


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第九十九話:半年の区切りと、繋がる未来

1.若者たちの甘酸っぱい熱と、半年間の濁流


『天空の神殿』最上階、第三十階層の攻略の晩餐会を終え、生徒たちが和解した翌日。


公爵邸の中庭は、昨日までの殺伐とした死闘が嘘のような、穏やかな午後の光に包まれていた。

広場の木陰では、生徒たちが思い思いに休息をとっている。


「ちょっと陽斗! プロテインのシェイカー、ちゃんと洗ってからカバンに入れなさいよ!」

「わかってるって、鏡花! いちいち母親みたいに小うるさいなぁ……あ、でも、さっきのフォーム、鏡花のアドバイス通りにしたらマジで動きやすかったわ。サンキュ」

「ふ、ふん……別に、あんたのために言ったんじゃないんだからね」


ツンと背を向けつつも、どこか嬉しそうに頬を緩める柊鏡花。その横では、水上陽斗が少し照れくさそうに頭を掻いている。

少し離れたベンチでは、不破真司が大きな背中を丸め、橘ほのかが差し出した日本のスポーツドリンクを大人しく受け取っていた。


「真司君、はい。激しい運動の後だから、ちゃんとお塩分も摂らないとダメだよ」

「お、おう……ありがとう、ほのか。……お前が後ろで風魔法を張ってくれてるから、俺、安心して前で盾を構えられるんだ」

「ふふ、お互い様だよ」


さらにその奥では、カイルとシェリー、ジーモとミリーナの四人が、作戦ノートを広げながら何やら楽しげに議論を重ねていた。時折、シェリーがカイルの肩を軽く小突き、ミリーナがジーモの大きな手にそっと自分の手を重ねる姿が見える。


(……やれやれ。あいつら、いつの間にかすっかり良い雰囲気になりやがって)


中庭のテラスの柱に寄りかかり、ハーブティーの入ったマグカップを傾けながら、俺──三好翔は、教え子たちの甘酸っぱい空気を眺めて苦笑した。

数日前までの「日本の親からの仕送り(避妊具)」を巡る大騒ぎや気まずさはすっかり吹き飛び、いまや過酷な死闘を共に乗り越えた『不壊の絆』と、年思頃の甘やかな情愛が、彼らの間に美しく芽生えていた。


と、生徒たちのその睦まじい姿を見ているうちに、俺自身の胸の奥にも、ふっと温かい、そして愛おしい熱がこみ上げてきた。


(……アデライード様。ベアトリーチェ様。そして、アイリスさんか……)


脳裏に浮かぶのは、北部のブルグンド公爵領に残してきた、三人の女性たちの顔だった。

気高くツンとした態度の中に一途な純情を隠したアデライード。おっとりとしたサクラ色の微笑みで静かに情熱を燃やすベアトリーチェ。そして、心優しく、夜の自室で健気に俺を抱きしめ返してくれたアイリス。


俺を『一人の男』として心から愛し、生涯を共にしたいとまっすぐに誓ってくれた三人。

出発の直前、俺は彼女たちに対して「男としての本気の誓い(婚姻の覚悟)」を伝えてきた。思い返せば顔から火が出そうになるが、後悔は微塵もなかった。


(……この世界に召喚されてから、もうすぐ半年になるのか)


俺は青空を見上げ、深く息を吐き出した。

九月の最初、学校の教室から突然の異世界強制召喚。

ハズレとして処分されかけた絶望。弟・駿の奇跡的な『課金システム』の起動と、スキル『つながる手』の覚醒。

王都での脅迫ホワイト契約、ブルグンド公爵領への左遷、そこからの『ミヨシ・トレーディング』立ち上げ、鉛の毒の開示、鉛白粉や毒ワインを巡る王都の暗闘、そして天空の神殿ダンジョンの完全攻略……。


まさに、激流、あるいは濁流に呑み込まれるような、息つく暇もない怒涛の半年間だった。

だが、俺たちは生き抜いた。死に物狂いで泥水をすするような特訓を重ね、日本の最新科学と駿の圧倒的資本力を力に変えて、この異世界に揺るぎない「自分たちの足場」を築き上げたのだ。


2.半年目の節目と、次なるロードマップ


「──先生。お茶、冷めちゃいますよ?」


不意に声をかけられ、俺はハッと我に返った。振り返ると、鏡花が不思議そうにこちらを見上げていた。


「ああ、すまない。少し考え事をしていたんだ」

「ふーん? どうせ、北部のアデライードちゃんたちのことでも思い出して、一人でニヤニヤしてたんでしょ?」

ニヤニヤと悪戯っぽく笑う鏡花。


「コラ、教師をからかうな。……だが、そうだな。今後の『方針』について、少し頭を整理していたんだよ」

俺が少し真面目なトーンに切り替えると、鏡花も表情を引き締め、真剣に耳を傾けた。


「今回、俺たちが『天空の神殿』を三十階層まで完全攻略しただろ? あれのおかげで、王都の二大闘技大会……『深淵の闘技大会』と『天上の闘技大会』が開幕するまで、約半年間の『準備期間』が作れたんだ」


本来ならば、他派閥や他国の代表候補たちがレベル上げや準備に追われ、焦りと混乱の中で闘技大会を迎えるはずだった。しかし、俺たちが前人未踏の神殿を圧倒的なノーダメージで一足早く制覇したことで、大会までの「時間的優位」を完璧に手に入れることができたのだ。


「半年か……。結構まとまった時間があるんだね」

「ああ。この半年間で、他国の代表候補たちの動きや、リペラ共和国のコーリア商会をはじめとする敵対勢力の動向を完全に見定める。そして、陽斗たちの合同チーム、ライネルたちの新生チームの両方を極限まで鍛え上げ、二つの闘技大会で『完全なダブル1位』を確実に獲得する手はずを整える。それが、俺たちが日本へ帰るための『確実な鍵』になるからな」


「うん! 先生がついててくれれば、負ける気なんて全然しないよ!」

鏡花が力強く拳を握りしめる。


「それとな、鏡花。……大会までの準備も大切だが、一度、北部(ブルグンド公爵領)へ戻ろうと思っているんだ」

「北部へ? 公爵様たちのところへ?」


「ああ。コーリア商会との経済戦争は、日本の塩や穀物を一万トン転送して無事に解決したが……。アデライード様たちとの『婚姻の誓い』の件も含めて、俺が一人の男として、ブルグンド公爵閣下とカノーヴァ伯爵閣下へ、面と向かってしっかりと『筋』を通しておかなければならないからな」


男として、彼女たちの父親に正式な挨拶と決意を表明する。それは、この異世界で生きる上での俺の義務だった。


「それと……もう一つ。召喚されて半年という、この節目だ」

俺は胸のポケットの中にあるスマートフォンをそっと撫でた。


「駿と相談して……俺たちの『日本の両親』へ、今の現状をちゃんと伝えるべきだと思っているんだ」


「先生たちの……親御さんに?」

「ああ。陽斗たち家族はすでにリアルタイムで直接話せたが、俺と駿の両親には、まだ何も伝えられていなかったからな。俺が生きて異世界で元気にやっていて、教え子たちを守り、さらにはこちらの世界の女性と将来を誓うまでになったこと……。親父やお袋に、逃げずに伝えるべき時が来たんだと思う」

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