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投資家の弟、異世界の兄に課金して無双させる~スマホとスキルの経済チートで世界を買い取る~  作者: かぶんす


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第七十八話:深夜の独白と、背負うべき愛の質量

1. 深夜の倉庫と、魂の抜けた天才投資家


大阪港、潮風が容赦なく吹き付ける、深夜の巨大な臨海保冷倉庫。

外の見張りや警備は、不破真司の父親が手配した信頼できる警察の裏ルートによって完璧に固められていた。


キィィィィン……。


静まり返った倉庫の最深部で、認識改変の魔道具『虚空の幻影腕輪』を腕に嵌め、仕立ての良いスーツを泥で汚しながら、三好駿は黙々と作業を続けていた。

彼の前には、フォークリフトによって次々と運ばれてくる、日本の最高品質の食塩、大麦、小麦の山。そして、不破玲香が日本のドラッグストアから「我が子のために!」と狂ったように調達してきた、プロテインや各種アミノ酸の段ボール箱がうず高く積まれていた。


駿は、その一つひとつのパレットや箱にスッと右手をかざし、そのまま『左手』へと持ち替える。


──すっ。


一瞬の静かな空間の歪みとともに、数トンのウエイトを持つ物資のパレットが、光の粒子すら残さず、一瞬で次元の彼方へと消失していく。

駿の身体能力は、異世界の金貨二百万枚の重課金リバース・シンクによって限界突破しているため、これだけの重量の物資を連続して転送しても、肉体的な疲労はほとんど感じなかった。


だが、彼の「精神面」は、完全に魂が抜け落ちたかのようにボロボロだった。


「……はぁ。まさか、あんなことになるとはな」


駿は、思わず独り言を呟き、額を片手で押さえて深くため息をついた。

その時、耳元のインカム、すなわち『つながる手』の念話の回線を通じて、異世界のブルグンド公爵領の地下集積庫にいる兄・翔の、安堵に満ちた頼もしい声が響いてきた。


『──駿! 聞こえるか。今、こっちの地下倉庫に、日本の高品質な塩と小麦の山、そしてプロテインの箱が続々と届いているぞ。

キース様が「これだけの量があれば、コーリア商会の経済封鎖など一瞬で無意味になる!」と、狂喜乱舞して配給の手配を指示している。

本当に、お前と蓮ちゃん、玲香ちゃんの超速の調達のおかげだ。心から感謝するよ』


「……。ああ、兄貴か。無事に届いてるなら、何よりや」


受話器の向こうから聞こえる駿の、いつになく力なく、完全にエネルギーの枯渇した「疲れ切ったトーン」に、翔はすぐに違和感を覚えた。

キックボードの転送の時、あまりの重さに「左手が引きちぎれる!」と悲鳴を上げたのは翔の方だ。頑強な肉体を持つ駿が、これほど精神的に擦り切れている理由が分からなかった。


『……駿? どうしたんだ、その元気のない声は。

まさか、日本側で再び工作員の襲撃でもあったのか!? もしそうなら、今すぐ俺がショップから更なる防御スキルを──』


「ちゃうわ、兄貴。物理的な敵なら、俺の絶対障壁と蒼雷で一瞬でチリにできるから、何一つ怖くないわ」


駿は、倉庫のコンクリートの床にペタンと座り込み、自嘲気味に首筋を掻きむしった。


「金曜日の夜に名古屋へキックボードを買いに行ってな……。土曜日の夜、俺は、大阪のタワマンに帰るのが日をまたぐから、途中でひつまぶしを食べてから帰ろうとしたんや。

そしたら……あの二人、蓮と玲香ちゃんに、完全に退路を断たれたサクラ色の包囲網を敷かれてな。

『もう大阪には帰りません、今夜はスイートルームで、私たちの覚悟を受け入れてもらいます』って……偽名で予約された最高級ホテルのセーフハウス(密室)に連行されて、今朝まで、完全に二人から『絞り取られて』きたんや……」


『──ぶっ!?』


念話の向こうで、翔が紅茶か何かを盛大に吹き出したような、凄まじい咳き込みの音が響いた。


『しょ、絞り取られた、だと……!? 駿、お前、まさか……あの二人に、本当に最後の一線を越えさせられたのか!?』


「最後の一線どころか、外壁まで完璧に突破されたわ。

二人はあらかじめ話し合っていたらしくてな。

『このまま曖昧でずるずるとした共同生活が続くと、いつか私たちの関係が壊れてしまう。だから、まずは私たちの覚悟を受け入れて』って、涙目で、でも絶対に引き下がらない目で迫られて……。

俺の超高周波の蒼雷も、絶対障壁も、愛する女の子たちのあの本気の涙と覚悟の前には、ただの紙屑同然やった。

……気がついたら、俺はベッドの上で、左右から二人にぴったりと密着されて、朝が来るまで、生涯で最も甘くて恐ろしい『ご褒美おもてなし』を、徹底的に叩き込まれとったんや……」


2. 教育者の沈黙と、愕然とする年齢の壁


異世界──ブルグンド公爵城の地下倉庫。

翔は、日本の最新プロテインの箱を床に降ろしたまま、顔面を火が出るほど真っ赤に染め、完全に石化していた。


現役の高校教師として、自分の双子の弟が、二人の女子大生(および名取蓮)に完全に包囲され、最後の一線を突破されたという極限の体験談を聞かされ、どのような言葉を返していいのか、完全に脳の処理が追いつかなかった。


「……。駿、お前……。

俺は、俺は一人の教育者として、担任として、お前に何と言っていいのか、言葉が見つからないよ。

お前たちはまだ二十三歳、社会的には立派な大人だが……。それにしても、二人の女性と同時に最後の一線を越えるなんて、人道的に、そして倫理的に……」


「そんなお堅いお説教、今は無用や、兄貴」


念話の向こうで、駿がぐったりとした様子で声を遮った。


「俺だって、ゲスな男になりたかったわけやない。

蓮のプログラマーとしての才能と、大学時代からずっと俺を隣で支え続けてくれたあの不器用な愛。

玲香ちゃんの、命を救われたあの瞬間から『駿さんのために生きる』って決めて、毎日お弁当を作って、お風呂上がりに健気にマッサージをしてくれる、あの献身的な愛。

……どっちの愛も本物で、どっちも絶対に傷つけたくないし、失いたくない。

男として、一人だけを選んで片方を奈落の底へ突き落とすなんて、俺には到底できんかった。

……。だけどな、兄貴。お前、そうやって俺を『ゲスな男や』って責めるけどな。

お前自身はどうなんや?


最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!


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