第七十六話:囮のステップ:急降下と着地硬直のハメ殺し
2. 初陣の蒼雷:炎ブレスへの完全対応
「──来ますわ! 『スカイ・ワイバーン』四頭、急降下!
初手、直線上の『炎ブレス』を放ってきます!
真司君、最前線でブレスを完全に受け止めてください!」
シェリーの鋭い指示が、コンマ秒単位の隙を突いて飛ぶ。
「グオォォォォン!!」
天空から滑空してきた巨大な翼竜──スカイ・ワイバーンが、その醜悪な蛇のような口を大きく開き、喉の奥に赤黒い紅蓮の炎をたぎらせた。
「『金剛の肉体』最大展開! 俺の後ろには、指一本触れさせねえ!」
不破真司が、日本の最新パワーラックで極限まで鍛え抜かれた下半身を大理石の床へガチリと固定し、魔力をたぎらせて大盾を正面に突き出した。
「真司君、口元の炎を検知しました! 『神速回復』──『火性耐性付与』!」
シェリーが、ベヒモスのブレスをも上回る熱量に備え、真司の盾と肉体に、極限の火属性耐性バフを瞬時に上書きした。
それと同時に、
「ほのか、ミリーナ! 左右に大きく散開し、魔法の詠唱を絶対に維持してください!」
「「──了解!」」
ほのかとミリーナの二人は、お互いの射線を邪魔しないよう、左右の岩陰へと風のように散開。
ミリーナは、敵の炎を中和するための強力な氷魔法のチャージを開始。
ほのかは、空中での敵の機動力を削ぐための、超精密な風魔法の魔力充填を、一気に行う。
「ゴオォォォォッッ!!!」
ワイバーンの一頭から放たれた、極大の直線火炎ブレスが、不破真司の盾を正面から直撃した。
凄まじい熱風と轟音が周囲の芝生を焦がす。だが、シェリーの事前の耐性バフ、そして真司の不壊のスタミナは、その紅蓮の炎を、まるでガラスに当たった水滴のように綺麗に左右へと霧散させてみせた。
「火傷、および炎上反応を僅かに検知!
『神速回復』──『熱傷浄化』!」
シェリーは、僅かな熱風の余波を浴びた真司の皮膚に対し、即座に「火傷・炎上の解除魔法」をピンポイントで発動。真司の肉体は、炎症を完全にゼロの状態(健康な状態)へとリセットされ、スタミナの低下は微塵もなかった。
3. 囮のステップ:急降下と着地硬直のハメ殺し
ブレスを放ち終えたワイバーンは、大きな翼を鋭く畳み、鋭い結晶の爪を突き出して、真司の盾を破壊せんと猛然と急降下してきた。
「──鏡花ちゃん! ヘイト(敵の注意)を取って、敵の軌道を誘導してください!」
「まかせて、シェリーちゃん! 私の独壇場だよ!」
柊鏡花が、日本の高機能ランニングシューズの圧倒的なグリップ力を活かし、一足飛びで前方へと躍り出た。
『疾風のステップ』。
彼女は、まるで重力を無視したかのような超高速のジグザグ走を展開しながら、懐から日本の駿が送ってくれた「チート鋼のスローイング・ナイフ」を複数、ワイバーンの真っ赤に血走った目元へと正確に投擲した。
シュッ、シュッ、シュッ──!
「ギャァッ!?」
目を掠められたワイバーンは、激しい怒りと痛み(ヘイト)を鏡花へと集中させ、その急降下突撃のターゲットを、鏡花へと完全に切り替えた。
「こっちだよ、トカゲ頭! ほら、頑張って追いかけてきなさい!」
鏡花は、ワイバーンを引き付けるようにして、わざと真司の「盾のすぐ近く」へと、美しいサクラ色の軌道を描きながら滑り込んだ。
敵の動きを、最も安全に、かつ前衛が攻撃しやすいポジションへと完璧に誘導する──これぞ、翔から直々に伝授された、遊撃の『誘導戦術』の極みであった。
ドォン!!!
ワイバーンは、鏡花を押し潰そうと、真司の盾の目の前の大理石の床へと激しく着地した。
だが、巨大な翼竜は、急降下着地の凄まじい反動(慣性)により、羽をばたつかせたまま、コンマ数秒の「短い着地硬直」を起こし、完全に動きが止まった。
「──今です! 陽斗、カイル、ジーモ! 着地硬直を叩き潰しなさい!」
「おうよ! 待ってました! 『スタン・ボルト』!」
陽斗の、稲妻をまとった最速の一撃が、ワイバーンの頭部を直撃した。
ビリビリと全身に電流が走り、ワイバーンの硬直時間がさらに引き延ばされる。
「『限界突破』──『真・溜め斬り』!」
カイルが、全身の青白い魔力を大剣の刃へと極限まで収束させ、無防備になったワイバーンの翼の付け根へと、岩をも切り裂く渾身の一撃を叩き込んだ。
噴き出す魔力の血飛沫。
「『剛力無双』!
トカゲ野郎、二度と空を飛べんようにしてやるわぁッ!」
ジーモが、身の丈を超える巨大なハンマーを片手で軽々と振り回し、ベヒモスをも破壊したその超弩級の打撃を、ワイバーンの脳天へと真っ直ぐに叩き落とした。
バキィィィィン!!!
凄まじい破壊音。
鈍器による打撃は、骨格を持つ飛行型モンスター(ワイバーン)に対して「最も効果が高い(特効ダメージ倍率)」特性を持っていた。
ジーモの『剛力無双』による衝撃は、ワイバーンの脳震盪を極限まで引き延ばし、ダウン状態をさらに数秒、強制的に延長させてみせた。




