第六十二話:天空の神殿:崩壊する代表候補と、華麗なる新生合同無双
3. 天空の神殿:崩壊する代表候補と、華麗なる新生合同無双
一方、異世界──王都近郊、『天空の神殿』ダンジョンの第20階層。
「ぐ、がはっ……!? う、嘘だろ……。私の『祝福』が、全く通用しない……!?」
去年の代表候補パーティーのリーダーであるライネルは、全身の鎧をカオス・グリフォンの結晶の爪で引き裂かれ、大理石の床へ血を吐いて這いつくばっていた。
カオス・グリフォンが放つ、見る者の五感を完全に狂わせる『カオス・ブレス(精神混乱の霧)』。
役割分担も、カバーし合う陣形も存在しないライネルたちのパーティーは、精神混乱に陥って後衛のクロエとユリウスがお互いに同士討ちの魔法を暴走させ、前衛のアルベルトの盾はすでに砕け散っていた。
「キキィィィィッ!」
グリフォンが漆黒の翼を広げ、無防備になったライネルの喉元を喰い破らんと、鋭い嘴を振り下ろした。死の刃が、彼の首筋へと迫る──。
「──そこまでだ」
静かだが、迷宮の狂気を一瞬で吹き飛ばすような、圧倒的な威厳に満ちた声が響き渡った。
次の瞬間、ライネルの目の前に滑り込んだのは、カイルと水上陽斗の二人だった。
「『金剛の肉体』最大展開! どけぇッ!」
不破真司が、鉄壁の盾となってグリフォンの爪の一撃を真っ向から受け止める。
ズドォォォォン!!! という凄まじい衝撃音が響き、大理石の床が陥没したが、真司は一歩も引かなかった。
「シェリー! 指示を!」
陽斗が叫ぶ。
戦列の最後方、最も視野が広く取れる位置から、シェリーの冷静な指揮がドームに響き渡った。
「──全衛、展開! 陽斗、カイル、敵の左翼の関節部に魔力の乱れがあります、そこを同時に突いて!
真司、ジーモ、二人の背後をカバーする 30 度のシールドアングルをキープ!
ほのか、ミリーナ、前衛の頭上へ、火と風の合体魔法の照準をセットしてください!」
「「──了解!!!」」
8人の動きは、まさに一つの精密な機械回路のようだった。
「『限界突破』──『迅雷斬り』!」
カイルが全身に青白い魔力の奔流をたぎらせ、音速を超える踏み込みでグリフォンの左翼の関節を切り裂く。
「『迅雷の刃』!」
陽斗が、翔から直々に伝授されたバスケットボールのステップワークを応用した、ミリ単位の超高速の切り返しで、カイルの切り裂いた傷口へ、さらに精密な追撃を叩き込んだ。
「グガァァァッ!?」
グリフォンが巨体を大きくよろめかせた。
「今よ! 撃ちなさい!」
「『多重詠唱』──『トリプル・エクスプロージョン』!」
「『大魔導』──『烈風の嵐』!」
ミリーナの多重詠唱による火球と、ほのかの魔力回復ブーストによる大嵐が空中ではっきりと重なり合い、超高火力の火炎旋風となってグリフォンの巨体を呑み込んだ。
「グオォォォォン!!」
混沌の魔獣は、自身の必殺の精神攻撃を繰り出す暇すら実質的に与えられず、その完璧な「戦術のハメ殺し」の前に、一瞬にして光の粒子となって消滅したのだった。
ボス討伐、ノーダメージ、完全なる圧倒的無双。
「……あ、あり得ん……。これが、あのカイルたちのパーティーなのか……? 傷一つ、負っていない……」
床に倒れ込んでいたライネルは、そのあまりにも華麗で、完璧な連携を目の当たりにして、驚愕のあまり言葉を失っていた。
カイルはゆっくりとライネルに近づき、そっと手を差し伸べた。
「ライネル。怪我はないか?」
「カ、カイル……。お前、なぜこれほどの力を……。あの『天啓の魔石』のスキルだけではない、その身のこなし、およびあの少女の完璧な指揮は、一体……」
「俺たちは、泥水をすすって、己の傲慢さを嫌というほど知った。そして……あそこに立つ、三好翔先生から、本物の『強さ』と『連携』を叩き込まれたんだ」
カイルがシェリーを指さした。
最後方で黄金の聖剣を肩に担ぎ、穏やかに微笑んでいる翔の姿。翔は日本へ身体を転送できない分、異世界に残り、この訓練の監視と指導に全力を注いでいたのだ。
ライネルは、震える手でカイルの手を握りしめて立ち上がると、少し離れた。
そして──。
ライネル、アルベルト、クロエ、ユリウスの四人の先行代表候補たちは、深く頭を下げた。
「──カイルとジーモ、そしてパーティーの方々には、私たちの、あまりの愚かさと傲慢さで迷惑をかけた……心からお詫び申し上げます!」
ライネルの声が、涙で激しく震えていた。
「私たちは、神の祝福にあぐらをかき、個人の力だけで戦う、ただの調子に乗った代表候補パーティだった。お前たちのあの完璧な連携、そしてあの人の教え……。
ダンジョンを出たら、あの人に頼んでくれないか、今一度自分たちの未熟な部分を鍛えなおしたいと。」
四人の先行代表候補たちが、涙ながらに翔の教えを請いたいと志願した。
「こいつら、本当に改心したみたいだね」
陽斗がニヤリと笑い、カイルも深く頷いた。
「──すごいな、そのプライドを捨てて頭を下げた。俺たちにはすぐにできたかったことだ。歓迎するよ、ライネル君。ダンジョンを出たら一緒に先生のところに行こう。
明日からは、地獄の日本のトレーニング、そしてプロテインをたっぷり摂取して頑張ろう。覚悟はいるけどね」
「お、おう。簡単にできるようになるとは思ってないぞ……!」
先行代表候補パーティーの加入により、ミヨシ・クラスは、闘技会を前にして、文字通り「王国最強の軍隊」へと成長を遂げようとしていた。
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