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投資家の弟、異世界の兄に課金して無双させる~スマホとスキルの経済チートで世界を買い取る~  作者: かぶんす


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第六十話:「北部経済封鎖」と傲慢なる『先行代表候補』の遭遇と全滅危機

2.異世界の荒波、コーリア商会による「北部経済封鎖」


地球側がビジネスと恋愛の熱気に包まれている頃。

異世界の王都にあるブルグンド公爵邸の政務室には、これまでにない重苦しい空気が漂っていた。


「──リペラ共和国の最大手『コーリア商会』が、ついに動き出しました、公爵閣下」


円卓を囲むブルグンド公爵、キース、そして翔の三人は、王都や南部の商業ギルドから寄せられた緊急報告書を睨みつけていた。


『ミヨシ・トレーディング』が展開する、鉛を含まない日本の化粧品、および高位ポーションを用いた若返りの美肌薬。その異次元の利権と、王都の貴族たちの財布を枯渇させるほどの圧倒的な資本力を、リペラ共和国の最大手財閥である「コーリア商会」が、完全に目をつけたのだ。


コーリア商会は、北部(ブルグンド領)に対し、極めて傲慢で、非合法スレスレの「経済圧力」を仕掛けてきた。


「北部への、穀物、塩、そして魔道具のエネルギー源である『魔石』の輸出を、完全に差し止める……。明らかな、北部経済封鎖だな」


キースが、報告書を破り捨てんばかりの怒りで拳を握りしめた。

さらに、コーリア商会は王都の国内貴族や、傘下の小商会たちにも圧力をかけ、北部とのすべての通商を一時的に停止するという、力任せの買収交渉を要求してきたのだ。


公爵領に届いた、コーリア商会の使者からの書状には、こう記されていた。


『──ブルグンド公爵閣下。

北部の貧しい領民たちが、この厳しい冬を前にして、穀物や塩を失い、飢え凍える姿を見たくはありますまい。

解決策はただ一つ。

貴殿らが独占している、あの『ミヨシ・トレーディング』の化粧品の製法、原材料の仕入れルート、およびポーションの販売利権を、我がコーリア商会へと無条件で、全て引き渡すことだ。

さもなくば、北部の流通を完全に枯渇させ、お前たちを飢え死にさせてやる──』


「……フン、実に高慢な政治屋どものやり口だな」


公爵が、獅子のような眼光をぎらつかせ、大剣の柄をギチギチと鳴らした。


「翔殿。どうする? 相手は我が領の流通の生命線を握っておる。小麦や塩、魔石が届かなくなれば、領民たちの冬の生活に、深刻な打撃が出ることは避けられんぞ」


公爵やキースが焦りを見せる中、翔はただ一人、穏やかなグレーの瞳を細め、フッと不敵な笑みを浮かべた。


「ご安心ください、公爵閣下。……相手が、その程度の『経済戦争ディール』を仕掛けてきたということは、我が『ミヨシ・トレーディング(地球の資本力)』の本当の恐ろしさを、彼らは何一つ理解していないということです」


翔はスッとポケットからスマートフォンを取り出し、地球の駿へと念話を繋いだ。


(──駿。リペラ共和国のコーリア商会が、北部への経済封鎖を開始した。穀物や塩、魔石の流通を止め、利権の買収を迫ってきている)


『──クックック、ハハハ! 兄貴、最高やんけ。

相手から、わざわざ俺の「投資の土俵マネーゲーム」に上がってきてくれたわけやな。

穀物と塩、魔石を止めて、北部の価格を吊り上げて飢え死にさせる?

そんな古典的なショート・スクイーズ(売り叩き)、地球の現代の市場取引ショート・スクイーズに比べれば、幼稚園児のお遊びみたいなもんや』


通信の向こうで、駿の最高に邪悪で、頼もしい笑い声が響き渡った。


『兄貴、公爵様にこう伝えろ。

──「コーリア商会の使者には、傲慢に『絶対に利権は渡さない』と突っぱねて、決裂の空気を最大に演出してください。

そして、その間に……私が日本の市場から、彼らの想像を絶する、高品質で、安価な【日本の食塩、小麦、大麦のバルク粉末(数万トン相当)】を、お前の左手を通じて、北部の公爵領の倉庫へと極秘裏に転送し続ける」とな』


「なるほど。日本の食塩や大麦、小麦。これらは現代の日本の圧倒的な農業・工業力により、異世界とは比較にならないほど低価格で、大量に、かつ衛生的だ」


『その通り。さらに、名取蓮と共同開発した「超高性能魔導魔法陣シート」と、魔導核の応用技術。

これを使えば、魔石から抽出される魔力の使用効率が100%や。効率が段違いやねん、約3倍やな、魔石の輸出を止められたところで、北部の魔道具は、北部で産出される魔石だけで十分回るっちゅう話や』


駿は不敵にぎらりと瞳を輝かせた。


『相手が北部の物資を止めて価格を吊り上げようとしたその瞬間、北部の倉庫に、山のような高品質な日本の大麦、小麦、塩が溢れ返り、シートが貼られた魔道具が稼働し始める。

コーリア商会が、買い占めた北部の穀物先物市場で大赤字を出して自壊する、壮大な「経済ハメ殺し」の始まりや!』


「よし。取引成立だ、駿。……こちらの商会交渉は、公爵閣下とアデライードたちに完璧に仕込んでもらうよ」


翔は念話を切り、公爵たちに向けて、確信に満ちた勝利の笑みを向けたのだった。


3.神殿二十階層、傲慢なる『先行代表候補』の遭遇と全滅危機


経済戦争が動き出す中、8人の合同チーム(ミヨシ・クラス)は、さらなる強さを得るため、天空の神殿の第20階層入口付近まで足を踏み入れていた。


第20階層の最深部、巨大なガーディアン(ボス)部屋の前。

大理石の床を踏みしめる重々しい金属の足音が響き、翔たちの前に、突如として四人の人影が立ちはだかった。


去年の代表候補パーティー、リーダーのライネル、そしてアルベルト、クロエ、ユリウス。


「……また、お前たちか」


ライネルが、その全身から「祝福のギフト・シード」の圧倒的な魔力(レベル55超)の波動を放ちながら、カイルや陽斗たちを、これ以上ないほど見下した目で睨みつけた。


「北部のガキども、この20階層のボスは、お前たちがこれまでに戦ってきたトカゲや熊とは訳が違う。

ここから先は、神の祝福を得た『本物の代表エリート』の領域だ。

代表を剥奪されかけたカイルと、ただの一般人のガキどもは、そこで指をくわえて、私たちの華麗な戦いを見ておくがいい。──邪魔をするな」


ライネルはそう吐き捨てると、カイルたちの制止も聞かず、腰の長剣を引き抜き、傲慢な表情で巨大なボス部屋の石扉を押し開けて、先行して突入していった。


「カイル、追わなくていいの?」


陽斗が、少し心配そうにカイルを見た。


「いや、シェリーの指示を仰ぐ。……だが、彼らには『指揮系統チームワーク』が存在しない。おそらく、痛い目を見るぞ」


カイルの予感は、ボス部屋に入った瞬間、最悪の形で現実のものとなった。


ドォォォォォン!!!


扉の奥から、空気を一瞬にして「精神錯乱の闇」へと塗り替えるような、おぞましい咆哮が響き渡った。


そこに君臨していたのは、第20階層の絶対的な支配者。

【──『カオス・グリフォン』:レベル60──】


巨大な鷲の頭部と翼、そして漆黒の獅子の胴体を持つ、混沌の魔獣。

グリフォンが大きく翼を広げると、その口から、見る者の正気を奪い、五感を完全に狂わせる極大の『カオス・ブレス(精神混乱の霧)』が、ドーム全体へと吹き荒れた。


「くっ、何だこの霧は……! 身体が、魔力の流れが狂う……!」


ライネルは、自身の強力な「祝福ギフト」をただ力任せに垂れ流し、霧の向こうのグリフォンへ向けて突撃しようとした。

しかし、彼らには役割分担も、カバーし合う陣形も存在していなかった。


「アルベルト、盾で防げ! クロエ、魔法で霧を吹き飛ばせ!」

「だ、ダメよ、ライネル! 精神が混乱して、魔法の照準ターゲットが全く定まらないわ!」

「ユリウス、回復を! 早くしろ!」


個人の強さ(レベル)に頼る彼らは、一瞬のイレギュラー(五感の混乱)に対応する術を、何一つ持っていなかった。

ブレスを浴びたアルベルトの盾が崩され、後衛のクロエとユリウスは、精神混乱に陥ってお互いに同士討ちのような魔法を暴走させ始める。

前衛と後衛が完全に分断され、グリフォンの鋭い結晶の爪が、無防備になったライネルの胸元へと迫る。


「が、はっ……!? う、嘘だろ、私の攻撃が……通じない……!?」


ライネルの長剣は空を斬り、彼はグリフォンの一撃を受けて床へと派手に叩きつけられ、血を吐いて這いつくばった。

わずか数分。

王国最強を誇っていた去年の代表候補パーティーは、個人のスキルを垂れ流すだけの「傲慢さ」の代償として、傷一つ負わせることもできず、全滅寸前の絶対絶命の窮地へと陥っていた。


「……。ライネルたちが、全滅……!」


カイルが、真剣な眼差しをシェリーと向けた。


シェリーは静かに構え、判断を待つ7人の頼もしい顔つきを見つめた。


「──あの『本物のエリート』たちに、私たちの完璧な『連携チームワーク』と『科学の力』、存分に見せあげましょう!」


「「──了解!!!」」


シェリーの凛とした指揮の声が、混沌のドームに響き渡る。

敗北を知り、一から這い上がってきた若き戦士たちの、本当の「救出無双劇」が、いま爆音と共に幕を開けるのだった。


お読みいただき、本当にありがとうございました!


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