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投資家の弟、異世界の兄に課金して無双させる~スマホとスキルの経済チートで世界を買い取る~  作者: かぶんす


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第五十四話:忍び寄る現代の影

3.新事務所の『美魔女サロン』と、忍び寄る現代の影


一方、現代日本の大阪・北区。

エントランスの静脈認証と複数のカードキーで守られた「ミヨシ・ホールディングス日本支部」の新事務所。


「──信じられないわ、先輩。この魔導核から抽出した電磁トポロジー回路、提携先のバッテリー工場で製造した試作品の熱伝導効率が、理論上の限界値を完全に突破しているわ」

丸眼鏡を押し上げながら、名取蓮がマルチディスプレイに表示された三次元の波動干渉グラフを指さした。


「そうや。これで『充電不要の超省エネ魔法陣バッテリーシート』の第一次量産体制は完璧に整った」

駿がコーヒーを片手に不敵に笑う。


事務所の応接室では、主婦同盟おかんたちの人脈を通じて、地元の政財界のトップ層マダムたちが極秘裏に招待され、高位ポーションとナノ美顔器を組み合わせた『美肌サロン(先行体験)』が大繁盛していた。

「駿くん! このサロン、本当にシワが一瞬で消えるわ! 億単位の会員権が、政界のマダムたちの間で奪い合いになってるのよ!」

不破真司の母親が、白く輝くプルプルの頬を撫でながら興奮気味に言った。


だが、地球側でのビジネスが爆発的な巨万の富を生み出し始めたその時──現代の「闇」が、静かに、しかし確実に彼らの足元へと忍び寄っていた。


ピピッ、ピピッ、ピピッ──。


「──ッ!? 先輩、新事務所のメインサーバーに、外部からの執拗な不正アクセス(クラッキング)の形跡を検知しました!」

蓮が、驚愕の表情でキーボードを叩き始めた。


「アクセス元はどこや?」

「世界最大級の、エネルギー利権を持つ謎の多国籍企業、あるいは特定の国家の極秘諜報機関インテリジェンスに属するサーバーを経由しています! 暗号化プロトコルが異常なほど高度です。……先輩、私たちの開発している『未知の超電導体』や『魔法陣データ』が、ネットの通信ログや、サロンの噂経由でマークされ始めていますわ!」


不気味なノイズを立てるマルチディスプレイ。

さらに、主婦同盟の母親たちからも、不穏な報告が寄せられた。


「駿くん……。実はね、昨日から、私たちの家の周りや、子供たちが通っていた学校の周辺に、見慣れない黒いセダンの車がずっと停まっているのよ。カメラを構えているような不審な男の姿も目撃されていて……」

柊鏡花の母親が、少し青ざめた顔で言った。


不破真司の父親、そして水上陽斗の父親は、大阪府警の幹部(上層部)である。

そのため、警察の威光と目を恐れ、表立った「物理的な拉致」や「強盗」といった強硬手段の襲撃は今のところない。しかし、監視や情報収集、あるいはデータを狙う「怪しい影」が、確実に彼らのパーソナルスペースを包囲しつつあったのだ。


「……さすがに、魔法のポーションや超電導のデータなんて地球に存在せんからな。世界中の巨大産業や、特許利権を持つゴロツキどもが、喉から手が出るほど欲しがるのは当然や」

駿は、冷徹な投資家としての目を細め、深く息を吐き出した。


「おばさんたち、それに蓮、玲香ちゃん。……安全対策を、今すぐ講じる必要がある」


4.主婦同盟の暴走と、駿の『タワマン強制避難』


その日の夜、新事務所の会議室。

駿、名取蓮、不破玲香、そして主婦同盟の母親たちが集まり、真剣な表情で机を囲んでいた。


「水上のおじさん(警察幹部)に確認したけど、公安や外事も、うちの新事務所から発せられている特異なエネルギー反応(魔力)を、非公式にマークし始めている可能性があるらしい。表立っては警察が守るが、蓮や玲香ちゃんのような『民間人』の、個人のプライベートな時間まで24時間守り切るのは物理的に不可能や」

駿が説明すると、玲香はシュンと肩を落とし、蓮も不安そうに丸眼鏡を触った。


「じゃあ、駿くん。……一番安全な場所は、どこなの?」

橘ほのかの母親が尋ねる。


「僕の住んでいる、あの梅田のタワーマンションですね。あそこは、僕が個人で億単位のセキュリティ(静脈認証、トリプルカードキー、専用エレベーター)を導入して要塞化していますし、警察のパトロールルートのド真ん中に入っています。あそこの中にいる限り、いかなる工作員も物理的な侵入は不可能です」


駿がそう答えた、まさにその瞬間だった。

主婦同盟の母親たちの目が、キラリと、恐ろしいほどの鋭さと「お節介」の光を湛えて輝いた。


「──だったら、決まりじゃない!」

柊の母親が、ポンと勢いよく手を叩いた。

「玲香ちゃんも、蓮ちゃんも、今すぐ荷物をまとめて、駿くんのあのタワマンに【一緒に住めば】いいのよ!」


「「──え!?」」

蓮と玲香の二人が、同時に顔を真っ赤にして立ち上がった。

「お、お母さん!? 何を言っているのよ! 男の人の家に、女子二人が一緒に暮らすなんて、そんなの──」

玲香がパタパタと手を振る。

「そ、そうです! 先輩のプライベートな空間を不当に侵害するのは、私のポリシーに反します……。でも、その、安全のためなら……仕方のない合理的な判断、なのかしら……」

蓮は、顔を真っ赤にしながらも、指先をもじもじと動かして上目遣いで駿を見つめた。


「ちょっと待て、おばさんたち!」

駿は、コーヒーを吹き出しそうになりながら大慌てで手を振った。

「一人暮らしの男の部屋に、若い女の子二人を同居させるなんて、世間体が悪すぎるやろ! そもそも、俺の部屋の安息が──」


「アホ言っとんじゃないわよ、駿くん!」

水上陽斗の母親が、頼もしく腕まくりをして駿に詰め寄った。

「あの子たちの命がかかってるのよ!? 世間体なんて言ってる場合じゃないわ! それにねぇ……」

母親たちは、お互いに顔を見合わせ、この上なくニヤニヤとした、邪悪で楽しげな笑みを浮かべた。


「駿くん。蓮ちゃんも、うちの玲香ちゃんも、これほど可愛くて、駿くんのことを一途に想ってくれている素晴らしい女の子じゃない。おばさんたち、駿くんのことは大好きなのよ?

──だったら、この機会に、二人まとめて付き合っちゃいなさいよ! 駿くんなら、将来二人同時に養うくらいの甲斐性、いくらでもあるでしょう?」


「「「な、何ですってェェェッ!?!?」」」


会議室に、駿、蓮、玲香の三人の絶叫がハモって響き渡った。


「おばさん、何言っとんねん! 重婚罪やぞ、日本は!」

駿が額に青筋を浮かべて叫ぶが、

「あら、日本の法律がダメなら、翔先生がいる異世界にみんなで移住して、あっちで二人の奥さんを娶ればいいじゃない! 公爵領なら一夫多妻なんて普通でしょう?」

と、柊の母親が能天気にのたまう。


「お、お母様! 私は、先輩の『最高の共同開発者』として、知的なパートナーシップを望んでいるだけで──でも、玲香さんだけに先輩のパーソナルスペースを独占されるのは、絶対に、万に一つも許せません!」

蓮がキッと玲香を睨みつける。


「私だって、蓮さんには負けません! 駿さんの健康管理と、プライベートのサポートは、私の役目です! 駿さん、私、毎日駿さんのために、お部屋をお掃除して、美味しいご飯を作って、毎日肩を揉んであげます!」

玲香も、一歩も引かずにツンと胸を張って駿の隣へぴったりと寄り添った。


バチ、バチ、バチ、バチ──!!!


会議室のド真ん中で、異世界の令嬢たちに負けず劣らずの、凄まじい「恋の火花」と「正妻戦争」の稲妻が吹き荒れる。

主婦同盟の母親たちは「あらあら、若いって本当にいいわねぇ」「駿くん、頑張りなさいよ!」と、我が子の心配を完全にどこかへ放り投げ、面白そうに目を輝かせて拍手を送っていた。


(……はぁ。兄貴を裏から救うための資金を稼いでるはずやのに、なんで俺のプライベートが、このおかんたちによって完全にハーレム化のどん底に叩き落とされとんねん……。もう逃げ場ゼロやないか……)


駿は首筋を掻きながら、天を仰いで深くため息をつくのだった。


お読みいただき、本当にありがとうございました!


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