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投資家の弟、異世界の兄に課金して無双させる~スマホとスキルの経済チートで世界を買い取る~  作者: かぶんす


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第五十話:親子の涙、重責の吐露

3.世界間通信網の開通と、親子の涙


数日間に及ぶ寝食を忘れた検証とシステム解析の結果、駿と蓮はある「絶対的な物理制限」を解明した。


「先輩、分かりましたわ。この通信、『先輩が左手でシステムスマートフォンを持っている場合だけ』、次元のゲートが通信アンテナとして中継機能を発揮する仕組みになっています。先輩の左手が、電波と魔力を繋ぐ物理的な『ハブ(中継器)』として機能しているんです」

「なるほどな。俺がスマホを左手から離したら、通信が切れるわけか。……まあ、俺が左手でスマホを握り続けてるだけなら、いくらでも協力したるわ」


駿はすぐに、異世界の翔へとビデオ通話をかけた。


プルルル、プルルル──。


異世界、王都のブルグンド公爵邸の個室。

翔は、ポケットの中で突如として震えだしたスマートフォンを取り出し、その画面に表示された「駿からの発信」のビデオマークを見て、心臓が跳ね上がるほどの衝撃を受けた。


「し、駿……!? お前、顔が映っているぞ! 直接、今、リアルタイムで喋れているのか!?」

『おう、兄貴。バッチリ繋がっとるで。お前のレベルが上がったおかげで、通信機能が勝手にアップデートされたらしいわ。……でな、兄貴。今すぐ生徒4人を集めてくれ。日本の親御さんたちと直接、電話で喋らせたるわ』


「本当にできるのか……!? すぐにみんなを集める!」


数分後、翔の個室に集まった水上陽斗、不破真司、橘ほのか、柊鏡花の4人は、翔の差し出したスマートフォンの画面の向こうに、自分たちの「日本の実家のリビング」がリアルタイムで映し出されているのを見て、完全に硬直した。


『陽斗!? 陽斗、お母さんよ! 聞こえる!?』

画面の向こうで、水上陽斗の母親が、大粒の涙を流しながら叫んでいた。


「お、お母さん……!? 本当にお母さんなの!? 声が……今、ちゃんと聞こえてる……!」

陽斗はスマートフォンの画面を奪い取るようにして抱え込み、崩れ落ちるようにして泣き叫んだ。


「お父さん! 私だよ、鏡花だよ! 元気だよ、本当に元気だから!」

「真司! 筋トレちゃんとしてる!? 納豆食べられてる!?」

「ほのか! お風呂は魔法でちゃんと入ってるのね!?」


地球側の駿のタワーマンション(または柊家のリビング)に集められた親たちと、異世界の公爵邸にいる子供たち。

これまでは「ビデオレター」という、数時間のラグがある一方通行のメッセージだった。だが今、耳元に響くのは、大好きな両親の「今」の息遣いであり、自分の言葉に一瞬で返ってくる、本物の「声」だった。


「お母さん、私、絶対帰るから! 先生がすっごく守ってくれてるから、お母さんもお父さんも病気しないで待ってて!」

「真司、玲香姉ちゃんが駿さんのところでなんかバチバチやってるけど、あんたは気にせず鍛えなさいよ!」

「え!? 姉ちゃん、駿さんのところにいるの!?」


涙と、時折混ざる懐かしい家族の日常の会話。

個室の中は、十代の子供たちと親たちの、切なくもこの上なく温かい「愛の対話」で満たされていた。


翔は、その光景を少し離れた壁際で見つめながら、静かに涙を拭っていた。

実は、翔の心の中には、ずっと小さな「つっかえ」があった。

自分だけが『つながる手』の念話を通じて毎日、双子の弟である駿と話をすることができ、地球の様子を知ることができていた。そのことに、教師として、教え子たちに対してどこか申し訳なさと、不公平さという「引っかかり」を覚えていたのだ。

だが、今日、彼らが自分のスマホを通じて直接、親たちの声をリアルタイムで聞き、言葉を交わすことができた。

その奇跡を目の当たりにして、翔の胸の奥にあった重いつっかえは、綺麗に消え去っていった気がした。


「……駿。本当に、ありがとう。お前はやっぱり、世界一の弟だ」

画面の端で、中継器として左手でスマホを握り締め続けている駿に向けて、翔は心からの感謝を、念話越しに伝えた。


『ふっ、水臭いこと言うな、兄貴。……ほな、親子水入らずの通話、時間制限なしで繋ぎっぱなしにしたるから、ゆっくり喋りや』


数時間にも及ぶ、奇跡の「世界間リアルタイム通話」は、涙と笑顔の中で、大成功のうちに幕を閉じたのだった。


4.双子の晩酌と、重責の吐露


その日の深夜、生徒たちがそれぞれの個室に戻り、王都の公爵邸が静寂に包まれた頃。

翔は自分のベッドに腰掛け、日本の駿へと再び念話を繋いでいた。


「──駿。まだ、起きてるか?」

『おう、兄貴。通信の中継を終えて、今、新事務所のソファで一人で缶ビール開けてるところや。……お前も、本当にお疲れさん。生徒たちのあの嬉しそうな顔、こっちのモニターでも見えてたで』


「ああ。本当に、お前のおかげだ。……駿、お前さえ良ければ、久しぶりに二人で『酒』を飲まないか? そっちのビールを送ってくれるか?」

『お、珍しいな。兄貴から酒飲もうなんて。よし、そっちの左手、意識しとけよ』


──すっ。

静かな空間の歪みとともに、翔の左手の上に、冷えた日本のプレミアムモルツの缶ビールが出現した。

翔はプルタブをパキリと開け、缶を掲げた。


「──乾杯だ、駿」

『乾杯や、兄貴。異世界と地球の、世界最長距離の晩酌やな』


カチン、と互いのスマホの画面越しに、見えない乾杯を交わす。


「ぷはぁ……。冷たくて美味いな。……駿、実はな。最近、自分でも気づかないうちに、結構、精神的に張り詰めていたみたいなんだ」

翔はベッドのヘッドボードに背中を預け、自嘲気味に微笑んだ。


「教師として、担任として、あの4人の命を絶対に守って日本に帰さなきゃいけない。カイルたち特別生徒の未来も、俺の背中にかかっている。ブルグンド公爵やカノーヴァ伯爵との政治的な交渉、商会ビジネスの立ち上げ……。毎日毎日、頭が休まる暇がなかった。……でも、今日、生徒たちが親御さんと喋っている姿を見て……なんだか、本当に救われた気がしたんだ」


『……兄貴。お前、真面目すぎるんや』

念話の向こうの駿の声は、この上なく優しかった。


『お前はたった23歳の、まだ新人の英語教師やぞ? なんで異世界の国家や、生徒たちの人生のすべてを一人で背負い込もうとしとんねん。お前が倒れたら、元も子もないやろ。もっと俺を頼れ。金のことも、ビジネスのことも、全部俺が裏で完璧にコントロールしたるから。お前はただ、そっちで「いつもの熱血教師」として、ガキどもの頭撫でてればええんや』


「……はは、そうだな。お前は本当に、頼もしい弟だよ。……ありがとう、駿」


昔の、双子でバカな悪戯をして親に怒られた話。大学時代の思い出。そして、いま翔の細い肩に乗っかっている「重責」への小さな愚痴。

世界で唯一、心からすべてを許して愚痴を言える相手である「双子の弟」が相手の晩酌。

翔は次第に、心地よい酔いの中に沈み込んでいった。


元々、翔はお酒がそれほど強い方ではない。どちらかと言えば、グラス半分で顔が赤くなるほどの「下戸げこ」の部類だった。

冷たい缶ビールが一本空き、二本目の缶チューハイを飲み干した頃には、翔の脳内は完全にぽかぽかとしたアルコールの霧に包まれていた。


「あー、なんか……身体が、熱いな……。ジャージ、脱ぐぞ……」

『おいおい、兄貴。もう完全に酔っ払っとるな。そっちはもう深夜やろ、早く寝えや』


「寝る……寝るぞ、駿……おやすみ……」


翔は念話を切ると、熱くなった身体から、アディダスのジャージの上着を乱暴に剥ぎ取り、ズボンも蹴り飛ばすようにして脱ぎ散らかした。

結果として、身長百九十センチの鍛え抜かれた鋼のような肉体は、日本の機能的なグレーのTシャツ一枚と、黒いボクサーパンツ一枚という、ほぼ全裸に近い極めて無防備な姿となった。


「ふぅ……気持ちいい……」


翔はそのまま、ベッドへと大の字に倒れ込み、落ちるように深い眠りへと沈み込んでいったのだった。


お読みいただき、本当にありがとうございました!


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