第四話:王国の最重要秘宝を要求!? 反発する天才代表候補たちとの対峙
1.代表候補との対峙
「まさか……『天啓の聖石』のことを言っているのか!?」
代表候補の一人であるミリーナが、避難するように控えていた場所から悲鳴に近い声をあげた。
「天啓の聖石……?」
翔が聞き返すと、魔術師長が青ざめた顔で説明を始めた。
「そ、そうだ……。本来ならば、代表候補たちが闘技会を勝ち抜くため、自らの固有能力を覚醒・進化させるために用意されていた、我が国の最重要秘宝……。一生に一度しか使えず、適合する者にしか効果がない超希少なマジックアイテムだ」
「それ、いただきます。生徒たちの身を守るためにも、まずは彼らの能力を覚醒させる必要がありますからね」
翔が平然と告げると、カイルが正座から勢いよく立ち上がり、腰の剣を引き抜いた。
「ふざけるなッ!!」
カイルの顔は怒りで真っ赤に染まっていた。
「それは俺たちが、この国の代表として中央ダンジョンに挑むために、血の滲むような特訓を経てようやく使用を許可されたものだ! それを、どこの馬の骨とも知れんハズレの一般人に渡せるわけがないだろう! 俺たちが死に物狂いで掴み取った権利だ! 暴力で脅して奪うなど、お前たちそれでも人間か!」
カイルの叫びは、一見正論だった。
翔は聖剣を構えたまま、少し考えるように顎に手を当てた。
「うーん……。一理あるな。俺も教師だから、他人の努力を無下にするような真似は本意じゃない」
『──おいおい兄貴、何甘いこと言っとんねん。そんなん力でねじ伏せて奪えばええんや』
耳元の駿のツッコミを無視し、翔は代表候補たちに向き直った。
「よし、それなら提案だ。本来使うはずだった君たち代表候補と、俺たち。勝った方がその『天啓の聖石』を使うことにしよう。これなら文句はないな?」
カイルは鼻で笑った。
「ハッ! 正気か? お前がどれほど強力な神具を持っていようが、後ろのガキどもはただの素人だろ! 代表戦はチームバトルだ。4対5でやれば、俺たちが圧倒──」
「いや、勘違いしないでくれ」
翔はカイルの言葉を遮り、一歩前に出た。
「戦うのは俺一人だ。お前たち4人、全員まとめて俺が相手をしてやる。俺の生徒たちは武器を持ったこともなければ、戦闘経験もないからな。教師が代わりに相手をするのが当然だ」
「な……舐めるなあああっ!」
カイルが激昂し、大聖堂の床を蹴った。
「神具に頼り切っただけのド素人が、本物の戦闘訓練を受けた俺たちに勝てると思うな!」
カイルの合図とともに、ミリーナ、シェリー、ジーモが一斉に武器を構え、翔を取り囲むようにフォーメーションを展開した。
2.圧倒的な勝利
「水上、橘、柊、不破。危ないから、そこの国王の後ろに避難してろ」
翔は背後の生徒たちに優しく声をかけた。
「せ、先生……本当に大丈夫なの!?」
橘ほのかが心配そうに叫ぶ。
「大丈夫だ。ちょっと、うるさい生徒を静かにさせるだけだからな」
翔は聖剣を構え、深く呼吸を整えた。
瞬間、カイルが音を置いてけぼりにするような超高速の踏み込みで、翔の懐へと滑り込んってきた。
「死ねッ! 『迅雷斬り』!」
稲妻をまとったカイルの剣が, 翔の喉元へ放たれる。
だが──翔の目には、その動きがまるでストップモーションのように遅く見えていた。
『常時発動型・絶対障壁』
カイルの剣が翔の皮膚に触れる直前、またしても青い幾何学模様が展開し、その剣撃を完全に無効化した。
「何っ!?」
「隙だらけだぞ、カイル君」
翔は聖剣の『峰』──いや、この巨大な大剣の腹を使い、カイルの横腹を軽く小突くように払った。
ドゴォォォン!!!
「ぶはっ……!?」
カイルの身体が砲弾のように吹き飛び、大聖堂の頑丈な石柱に叩きつけられて、そのまま白目を剥いて崩れ落ちた。一撃。ただの、神具の質量によるノックバックに過ぎない。
「カイル!?」
ジーモが驚愕し、身の丈ほどもある大槌を振り上げて翔に襲いかかる。
「叩き潰してやる!」
「お前は重心が浮きすぎだ」
翔はバスケットボールで培ったステップワークで、ジーモの攻撃を紙一重でかわすと、すれ違いざまに大槌の柄を聖剣の柄頭で軽く叩いた。
驚異的な衝撃波が走り、大槌は手から弾け飛び、ジーモはそのまま自身の遠心力で床を何回転も転がっていった。
「ミリーナ、魔法を!」
シェリーが叫び、ミリーナが杖を掲げて極大の火球を放つ。
「焼き尽くせ! 『インフェルノ』!」
大聖堂を包み込むほどの業火が翔を襲う。
だが、翔は慌てることなく、聖剣を正面に構えて静かに一振りした。
「──『神殺しの聖剣』、出力1%」
轟!!!
剣の一振りから生じた暴風が、ミリーナの放った業火を文字通り「消火」し、さらにその先のアラバスターの壁まで吹き飛ばした。ミリーナとシェリーの二人は、その余波の風圧だけで数メートル吹き飛ばされ、尻もちをついて完全に戦意を喪失した。
静寂が、大聖堂を支配する。
時間にして、わずか数十秒。
この国が誇る代表候補4人は、傷一つ与えることもできず、ただの一人も立っていられなかった。
「……さて」
翔は聖剣を先を地面に突き立て、未だ正座していた国王と重鎮たちを振り返った。
「特別授業はこれで終わりです。これで、文句はありませんね? 陛下」
アルトリウス王はガタガタと全身を震わせ、ただ何度も首を縦に振ることしかできなかった。
『よ、よくやった、兄貴! 完璧や!』
耳元で駿が、まるで自分の手柄のように大はしゃぎで拍手を送っている。
「……よし、お前たち」
翔は後ろの生徒たちに向き直り、いつもの教師としての優しい、しかし頼もしい笑みを浮かべた。
「約束通り、お前たちの安全と、超ホワイトな異世界生活は確保した。これからは……そうだな、まずはこの世界での『勉強』と、日本に帰るための準備を始めようか」
異世界召喚ファンタジー。
それは、現代の最強の「資本力」を引っ提げた弟と、その金をフルに使って生徒を守り抜く熱血教師の、前代見聞の無双劇。
ここに、堂々の開幕であった。
次の話(第5話)は、このあと17:50に更新。




