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第三十話:動き出す敗者と冷や汗のお茶会

4.王都の闇、そしてカイルたちの去路


一方、王都の薄暗い下町──。

かつて「国の代表候補」として栄光の未来を約束されていた、カイル、ミリーナ、シェリー、ジーモの4人は、薄汚れた冒険者ギルドの片隅にいた。


「おい、カイル。今日の依頼、ゴブリン退治の分け前、これだけだぜ……」

大槌を抱えたジーモが、数枚のちっぽけな銅貨をテーブルに放り投げた。

かつては王城で最上級の部屋と豪華な食事を与えられていた彼らだが、翔に完膚なきまでに叩きのめされ、代表を剥奪された今、その生活は奈落の底へと転落していた。

毎日、泥水をすするような過酷な依頼をこなし、わずかな日銭を稼ぐ日々。


「くそっ……! なぜ俺たちが、こんなところでゴブリンなんかと……!」

カイルは悔しさに歯を食いしばり、テーブルを拳で叩いた。

「カイル、もうやめましょう……。あの教師は、私たちの想像を絶する化け物よ。あの『絶対障壁』も、あの『聖剣』も……勝てるわけがないわ」

ミリーナが、力なく首を振る。


「諦めてたまるか……!」

カイルの瞳に、執念の灯がぎらぎらと燃え上がった。

「俺たちは、国から見捨てられた。だが……あの闘技会には、まだ『冒険者枠』での出場ルートが残されているはずだ。

泥水をすすってでも、レベルを上げて、這い上がってやる。

そして、いつか必ず……あの教師と、あのハズレの生徒たちを見返して、俺たちが本物の代表だと、神の前に証明してやるんだ!」


傷つき、ボロボロになりながらも、敗者たちは暗闇の中で、静かにリベンジの牙を研ぎ澄ましていた。


5.お茶会の牽制と、弟のからかい


その日の夜、嵐のような一日を終えた翔が自分の個室に戻ると、部屋のドアが控えめにノックされた。

開けると、そこには、日本の解毒サプリを飲み、さっそく日本の最高級スキンケアを試して、いつもより一層、肌が白くプルプルに輝いているアデライードとベアトリーチェが立っていた。

二人は、それぞれ美しいティーセットを手に持っている。


「……あの、翔様。今日のお礼に、お茶を淹れて差し上げようと思って」

アデライードが、ほんのり頬を染めながら、もじもじと茶器を差し出す。

「あら、アデライード。翔様にお茶を淹れるなら、カノーヴァ特産の最高級の茶葉を持ってきた私の方が、相応しいはずですわよ?」

ベアトリーチェが、おっとりとした笑みを浮かべつつも、その瞳の奥にはバチバチとしたライバル心を燃やして、アデライードを牽制する。


「な、何言ってるのよ、ベアトリーチェ! ここは我がブルグンド公爵城よ! 私が翔様をおもてなしするのが当然でしょう!」

「おもてなしの心に、場所など関係ありませんわ。……さあ、翔様。どちらのお茶を召し上がりますか?」


二人の超絶美少女令嬢に左右から挟まれ、お互いがお茶を淹れるのを牽制し合う甘酸っぱくも恐ろしい空間に、翔は冷や汗を流しながら、完全に硬直していた。

(た、助けてくれ……。これ、公爵にバレたら、今度こそ大剣で縦真っ二つに斬られるぞ……)


その時、翔のポケットの中で、スマートフォンが小さくバイブレーションした。

画面を見ると、リアルタイムで同期されている翔のバイタルデータが表示されており、駿からのチャットが届いていた。


『──おーい、兄貴。今、お前のステータス画面経由で、心拍数が平均130%まで跳ね上がっとるのが見えたで。

状況はバッチリ把握しとる。アデライード様とベアトリーチェ様、二人の美少女に挟まれて、完全に「両手に花」やんけ。

この熱血教師め、鼻の下デレデレに伸ばしとんちゃうぞ(笑)。

あ、お義父さん(公爵)の大剣に、くれぐれも気ぃつけや? 最後の一線だけは、死守するんやで?』


「……駿、お前、本当に余計なこと言うな……!」

翔は真っ赤になりながら、心の中で弟に向けて叫び、お茶を差し出す二人の令嬢に向けて、精いっぱいの引きつった笑顔を浮かべるのだった。


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