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第二十七話:異世界の花と主婦同盟のポーション検証会

二十六話、投稿時間午前、午後間違ってました

今後の投稿予約時間見直します

5.両手に花と、弟のからかい


「ふぅ……」

会議を終え、ようやく自分の個室へと戻ってきた翔は、どっと押し寄せた疲労に身を任せるように、ベッドへと仰向けに倒れ込んだ。


剣の戦いよりも、ビジネスの交渉よりも、何より令嬢二人の「恋の視線」と、公爵からの「殺気」の板挟みが、最も精神力を消費した。


翔が寝返りを打つと、ポケットの中でスマートフォンが小さくバイブレーションした。画面を見ると、駿からのチャットメッセージと、リアルタイムで同期されている翔のバイタルデータが表示されている。


『──おーい、兄貴。今、お前のステータス画面経由で、心拍数が平均120%まで跳ね上がっとるのが見えたで』


画面の向こうの駿は、お腹を抱えて笑っているようなアイコンを連打してきた。


『そっちの状況、大体分かったわ。アデライード様とベアトリーチェ様、二人の超絶美少女令嬢に挟まれて、お互いお茶を淹れ合うのを牽制し合っとったらしいな? 完全に「両手に花」やんけ、この熱血教師め。鼻の下、デレデレに伸ばしとんちゃうぞ(笑)』


「……駿、お前、見ていたのか?」

翔は顔を真っ赤にして、スマートフォンに向かって小さく怒鳴った。


『見てへんけど、お前の心音のテンポで全部分かるわ。……まあ、でも気ぃつけや。お前を縦真っ二つに斬る言うとるお義父さん(公爵)の大剣、課金防御でも心までは守れんからな。最後の一線だけは、死守するんやで?』


「うるさい。俺は教師だ。生徒たちの手本となるよう、常に誠実に行動する。それだけだ」

『はいはい、お堅い先生やことで。こっちはおかん(主婦連盟)たちの手伝いのおかげで、魔法陣のデータ化が爆速で進んどるわ。明日は、おかんたちが我が子のために詰め込んだ、大量のお菓子と手紙、それとアデライード様たちが欲しがっとった「日本の最高級コスメ」を送るからな。覚悟しとけよ』


「ああ……。楽しみにしている。みんな、本当にありがとう」


翔は通信を切り、スマートフォンの画面を胸に抱きしめた。

次元を超えて繋がる、温かい日本の家族の存在。そして、これからこの異世界で共に歩む、頼もしく、少しだけ甘酸っぱい仲間たち。


混沌とした世界を札束で殴り倒す彼らの課金無双は、主婦たちの参入と、美しき令嬢たちとの不敵なる「商業同盟」を得て、いよいよ世界を経済から支配する、次なる段階へと突入していくのだった。


6.日本側「主婦同盟」の検証会と、ポーションの奇跡


大阪・梅田のタワーマンション。マルチディスプレイに囲まれた三好駿の広いリビングは、もはや投資家の仕事部屋というよりは、怪しげな「最先端科学研究所」と化していた。

テーブルの上に並べられているのは、異世界から翔の『つながる手』を介して送られてきた、初級〜中級レベルの『赤の魔石』『青の魔石』、そして淡いエメラルドグリーンの光を湛えた『治癒ポーション』だ。


「……じゃあ、お母様方。さっそく、この異世界のポーションとやらの効果を、実際にテストしてみましょうか」

駿の言葉に、エプロン姿の主婦たち──水上、柊、橘、不破の四家族の母親たちが、一斉に身を乗り出した。


「駿くん、本当に傷が治るの? 信じられないわ……」

不破真司の母親が半信半疑で呟く。

「ええ。ですが、実家の皆さんにも納得していただかないと、今後のビジネス展開の相談もできませんからね。……誰か、ちょっとした擦り傷や荒れ性の方はいませんか?」

「あ、それなら私、昨日包丁で人差し指を少し切っちゃって……」

橘ほのかの母親が、絆創膏を貼った指を差し出した。絆創膏を剥がすと、そこには数ミリ程度の、赤く腫れた切り傷が生々しく残っている。


「では、失礼します。これを一滴だけ、その傷口に垂らしてみてください」

駿がスポイトでポーションを吸い上げ、彼女の指先に落とす。


──すうっ。

ポーションの液体が肌に触れた瞬間、淡い光が傷口を包み込んだ。

「きゃっ……! 温かい……?」

橘の母親が驚きの声を上げる。光が消えた次の瞬間、全員が文字通り息を呑んだ。

そこにあったはずの切り傷が、完全に消失していたのだ。痕跡すら残っていない。それどころか、毎日の水仕事でガサガサに荒れていた彼女の手肌が、ポーションを塗った部分だけ、まるで二十代の若い娘のような、驚くほどキメの整ったプルプルの美肌に生まれ変わっていた。


「な、何これ!? 傷が消えただけじゃない……! 私の手、ここだけもの凄くもちもちになってる!」

「ええっ!? 見せて見せて! 本当だわ、橘さん! 皺が消えてる!」

柊鏡花の母親も、水上陽斗の母親も、我が目を疑うようにその指先を触り、大騒ぎし始めた。


「……なるほどな」

駿は腕を組み、ニヤリと笑った。

「ポーションは、細胞の自己治癒力を極限まで活性化させ、傷や病変を『健康な状態ゼロ』に戻す。その過程で、肌質そのもののターンオーバーが超高速で行われ、結果として劇的な『肌質改善(アンチエイジング効果)』が見込めるわけや。これは……地球の美容業界に持ち込んだら、一口数千万円でも富裕層が殺到するで」


さらに、簡易魔道具(部屋を温める小型の石盤)の挙動テストも行った。

『青の魔石』を、石盤の裏にある幾何学模様の窪みに嵌め込むと──。

カチリ、と静かな音がして、魔石が淡く発光し始めた。それと同時に、エアコンもファンヒーターもつけていないリビングの温度が、じんわりと上昇し、心地よい温風が流れ出してくる。


「本当に動いたわ……。ガスも電気も使っていないのに、この板自体が熱を持ってる……」

水上の母親が、恐る恐る石盤に手をかざして呟いた。


「これ、日本の特許庁に持って行ったら大騒ぎになるわね。でも、成分解析や仕組みの解明をまともにやろうとしたら、地球の物理法則と矛盾しすぎて、国や巨大エネルギー企業に目をつけられて、あの子たちの安全が脅かされるかもしれないわ」

柊の母親が、元事務職ならではの鋭い懸念を示す。

「その通りです。だからこそ、この魔道具やポーションは、一般に公表してはいけない。まずは極秘の『闇の会員制医療・美容サロン』や、政財界のトップ層への『極秘の裏コネクション』として流通させるのが最も安全で、かつ莫大な利益を上げる方法です。……お母様方、これらを商売にする具体的な方法、一緒に考えていきましょう」

「任せなさい、駿くん! 私たちのネットワークと、旦那たちの警察・行政の裏コネも上手く使いこなしてみせるわ!」

地球側の「主婦同盟」は、我が子を助けるための軍資金を稼ぐべく、驚異的なモチベーションで「地球側異世界支援ビジネス」の骨子を組み立て始めていた。


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