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第二十話:挨拶代わりの本気魔法突撃! 鉄腕の公爵が驚愕した『絶対障壁』の現実

3.英雄の帰還と、鉄腕の公爵


夕暮れにはまだ早い、空が黄金色に染まり始めた頃。

ついに一行は、ブルグンド公爵領の領都へと到着した。


巨大な石造りの城門をくぐり、街の中へと入る。王族仕様の立派な馬車と、それを護衛するグスタフとカノーヴァの騎士たち、そして冒険者の一行は、否応なしに目立っていた。

城へと続く大通りには、またたく間に大勢の領民が集まり、人だかりが形成されていく。彼らは馬車の窓から見える姿を確認すると、口々に歓声を上げ始めた。


「アデライード様だ! アデライード様がご無事でお戻りになられたぞ!」


「王都での婚約の話はどうなったんだ?」


「そんなことはどうでもいい! 我らが姫様が無事なら、それでいいさ!」


領民たちの温かい声が、波のように馬車を包み込む。

翔はその光景を見て、感慨深そうにアデライードを見つめた。


「アデライード様。領民の皆様から、本当に愛されているのですね」


「……当然よ。私はお父様と共に、この領地を、領民たちを愛しているもの。彼らを守るのが、私の誇りよ」


そう言ったアデライードは、この旅の道中では一度も見せたことのないような、心からの、そして息をのむほどに美しい「笑顔」を翔に向けた。

ツンツンとした鎧が完全に剥がれ落ちた、十七歳の少女としての、純粋で誇り高き笑顔。翔はその一瞬、彼女の美しさに目を奪われそうになるのを必死に堪えた。


馬車は止まることなく進み、やがて白く輝く、公爵城の巨大な門を潜り抜けた。

本館正面の大きなドアの前で馬車が止まり、ステップが下ろされる。

ドアが開いた瞬間、アデライードは我慢できなくなったように馬車から飛び出し、ドレスの裾を翻して駆け出した。


「お父様!」


その視線の先──城の玄関前に立っていたのは、一人の男だった。

翔よりも少し背は低いものの、まるでいわおのように鍛え上げられた、分厚く強靭な肉体。その身体を覆うのは、簡素ではあるが、最高品質の生地で仕立てられた上質な服。白髪が混ざりつつも、獅子のような鋭い眼光を放つその男こそが、北部を統べる覇者、ブルグンド公爵その人であった。


「おお、アデライード! よくぞ無事に戻った!」


公爵は駆け寄ってきた愛娘を、その太い腕で力強く抱きとめた。

続いて馬車から降りたベアトリーチェ、翔、そして生徒たち一同が、公爵の前に整列して一礼する。


「ブルグンド公爵閣下。私は、お嬢様方と同行させていただきました、三好翔と申します。こちらにいるのは、私の大切な生徒たちです」


翔が洗練された礼儀正しさで挨拶を述べると、公爵はアデライードをそっと離し、鋭い眼光を翔へと向けた。その瞳の奥には、値踏みするような、そして格闘家特有のギラギラとした闘志が宿っていた。


「うむ。話は聞いておる。我が娘と、ベアトリーチェをここまで守り抜いてくれたこと、感謝する。長旅で疲れているところ悪いが……まずは我が城の『中庭』へ案内しよう」


「中庭、ですか?」


翔が怪訝に思う間もなく、一行は城の美しい中庭へと連れて行かれた。

そこは、騎士たちの訓練場としても使われているようで、地面は踏み固められた土になっており、周囲には武器ラックが並んでいる。

そこに、一人の大柄な男が進み出てきた。公爵領の「騎士団長」だった。


「三好翔殿。我が主君の命により、貴殿の実力、この目で確かめさせていただく!」


どうやら、挨拶代わりに手合わせを求められたらしい。アデライードが「ちょっと、お父様! 到着したばかりなのに、何を……!」と抗議するが、公爵は腕を組んで「良いから見ておれ」と不敵に笑うだけだった。


「……分かりました。手合わせ、お受けいたします」


翔は苦笑しつつ、駿の課金によって限界突破しているステータスを一時的に『騎士団長と同等、やや上』程度に調整し、用意された木剣を手に取った。


「いくぞ!」


騎士団長が猛然と突進し、木剣を振り下ろす。

キィィン! という甲高い音が中庭に響き渡った。

数合、十数合と、お互いの木剣が火花を散らすように激しく交錯する。騎士団長の実力は確かであり、流れるような剣筋で翔を追い詰めようとする。しかし、翔は一歩も引かず、むしろ彼のすべての攻撃を見切っているかのように、最小限の動きで受け流し続けた。


そして、十七合目。

「はぁッ!」

翔が鋭く一歩踏み込み、騎士団長の剣を斜め下からすくい上げるように打った。

強烈な衝撃に、騎士団長の手から木剣が跳ね飛ばされ、中庭の芝生の上をごろごろと転がった。

次の瞬間には、翔の木剣の先端が、騎士団長の喉元から数センチの位置で、ぴたりと静止していた。


「……そこまで」


静かながらも、威厳に満ちた声。

勝負は決した。


「見事だ……。私の負けだ、三好殿。王都の噂に、いささかの誇張もなかったな」


騎士団長が悔しそうに、しかし清々しい笑みを浮かべて一礼した。

翔は木剣を収め、生徒たちの元へ戻ろうとした。不破や陽斗が「すげえ……!」と目を輝かせている。


「待て、翔殿」


だが、その場を遮るように、ブルグンド公爵が自ら一歩前に歩み出てきた。その手には、既に一本の木剣が握られている。


「騎士団長をこうも容易くあしらうとはな。だが……お主、今の手合わせ、まだ余力を残しているだろう。底が見えん。……今度は、私が相手をしよう。今度は『魔法あり』だ。全力で来い!」


「お、お父様!? やめて!」

アデライードの制止の声も、戦闘狂と化した公爵の耳には届かない。


「……手加減は、無用ということですね。分かりました、公爵閣下」


翔の瞳に、すっと冷徹な戦士の光が宿った。


焦げ跡一つなし。これが地球の資本力(課金)の防御力です。

次の話(第21話)は、明日朝7:40に更新。ついに親たちの荷物が届きます!


お読みいただき、本当にありがとうございました!


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また別の物語でお会いできることを楽しみにしています。本当にありがとうございました!

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