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投資家の弟、異世界の兄に課金して無双させる~スマホとスキルの経済チートで世界を買い取る~  作者: かぶんす


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第百三話:異彩を放つ母

三好翔がアデライードたち三人の令嬢との婚約を取り付けた、翌日。


大阪・北区のタワーマンション。三好駿の自宅である広々としたリビングは、足の踏み場もないほどの熱気と人集かりでごった返していた。


そこに集まっていたのは、不破真司、水上陽斗、橘ほのか、柊鏡花の四家族の両親たち──通称「主婦同盟」および父親たち。そして名取蓮と不破玲香の二人だ。


だが、その人混みの中で、ひときわ異彩を放つ一人の女性がいた。


「不破さん……本当に申し訳ありませんでした。うちの駿が、ご迷惑をおかけして……」


深々と頭を下げているのは、薄茶色の艶やかな髪を肩まで伸ばし、透き通るようなヘーゼル色の瞳を持った美貌の女性だった。

誰が見ても一目で「翔と駿の親」だと分かる印象的な顔立ち。だが、彼女の醸し出す佇まいは、およそ二十三歳の双子の息子を持つ母親のそれには見えなかった。


透き通るような白い肌、ピンと伸びた美しい背筋。四十過ぎと聞いているはずなのに、どう見ても二十代半ばの若々しい女性にしか見えない。


「蓮ちゃんも、本当にごめんなさいね。……帰ったら、駿にはきっちり責任を取らせますから」


彼女の名は、三好エレノア。翔と駿の実の母親だ。十九歳で双子を出産したという彼女は、その若々しい外見と相まって、集まった大人たちを大いに気押させていた。


「あ、いえ……! 三好さん、頭を上げてください!」


頭を下げられた不破真司の母親が、慌てて手を振った。


「駿君が二人を唆したというのなら問題ですが……玲香から詳しく話を聞きましたの。駿君が無理強いしたわけではなく、玲香と蓮ちゃんの二人で、半ば強引に駿君に迫ったと聞いております。……普段は真面目一辺倒で、男気のない玲香がそこまで本気で惚れ込んでしまったのですもの。駿君も、玲香を泣かせないようにと、彼なりに真剣に責任を考えてくれたのだと思いますわ」


「そう言っていただけると……少しは、駿へのお説教の手加減をしてあげないといけませんね」


エレノアはサクラ色の唇を和らげ、ふっと優しく微笑んだ。


「皆様も、私のことはどうぞエレノアとお呼びくださいな。年齢も同世代のようですし、これから長いお付き合いになりますから」


「まあ! エレノアさんって仰るのね! 本当にお若い……一体どんなスキンケアをなさったら、そんなお肌になれるの!?」


「本当ですよ! 私たちのサロンのポーションを使っても、エレノアさんのその元々の透明感には勝てそうにありませんわ!」


エレノアの気さくな態度に、主婦同盟の母親たちは一気に警戒を解き、玲香や蓮も交えて、まるで女子会のような賑やかさで質問責めにし始めた。


2.男たちの覚悟と、厳父の許し


女性陣が華やかな会話に花を咲かせる一方、リビングの反対側では、全く異なる重苦しい緊張感が漂っていた。


ソファーと椅子に座った不破父をはじめとする男性陣4人の前に、二人の男が立っていた。 一人は駿。そしてもう一人は、翔と駿の父親である、三好明あきらだった。


駿はいつになく真剣な、一切の不遜さを捨て去った眼差しで、不破父の正面へと膝を突いた。


「不破さん。……玲香さん、そして蓮の二人同時にプロポーズをするという形になってしまい、男として、人として不誠実だと思われるのは重々承知しています。……ですが、俺の気持ちに一切の嘘はありません。二人とも心から愛していますし、絶対に玲香さんや蓮を泣かせるような真似はいたしません。……ですので、今後のお付き合いと、二人を俺の妻として迎えることを、どうか認めてください」


ドシンと、駿は床に深く頭を擦り付けた。


静寂がリビングを支配する。不破父は、警察幹部としての鋭い眼光で、深く頭を下げる駿を見つめ続けた。


「……正直に言おう。一人の父親として、認めたくはない」


不破父の低い声が響く。


「自分の娘が、二番手や一夫多妻のような形で嫁ぐなど、現代の日本の親として手放しで喜べるはずがない。……だが」


不破父は深くため息をつき、膝の上の拳を握りしめた。


「玲香が、軽薄でバカな男を好きになるような人間に育てたつもりもない。……あの娘が、命懸けで自分を救ってくれた君を本気で愛し、蓮さんと張り合ってでも君を求めたという『事実』。それだけを重く受け止めて……今回のことは、認めようと思う」


「不破さん……!」


その瞬間、隣に立っていた三好明が、駿の頭をさらに手で押し下げるようにして、自らも深く頭を下げた。


「不破さん、本当に申し訳ありません。そして……ありがとうございます。息子が二人のお嬢さんを悲しませるようなことがあれば、父親である私が責任を持ってこいつを叩きのめします。不甲斐ない息子ですが、どうかよろしくお願いいたします」


「三好さん、頭を上げてください。……駿君、娘を頼むぞ」


不破父が力強く頷くと、駿は胸の奥から込み上げる熱い感情とともに、「はい……! ありがとうございます!」と深く頭を下げ直した。


3.親子の応酬と、通信の開始


男たちのケジメがついた、まさにその時だった。


「──駿。ここにきて正座しなさい」


凛とした、しかし絶対の威厳を秘めたエレノアの声がリビングに響いた。


駿は、主婦同盟のおかんたちや、顔を真っ赤にして見守る玲香と蓮の視線を浴びながら、「あちゃー……」という顔でトボトボと近づき、畳まれたラグの上に正座した。


「駿、なんて顔をしてるの。もっとしっかりしないと、二人のお嬢さんを預かるなんてできないわよ?」


今度は、エレノアを中心に、主婦同盟の母親たち、そして玲香と蓮という「女性陣連合」にグルりと囲まれる形になった駿。


「おかん……俺の気持ちは変わらへんで。日本で認められへんのやったら、兄貴がおる異世界にでも行って、三人で暮らすわ」


駿がふてぶてしく、しかし揺るぎない覚悟を口にすると、エレノアはあきれたように微笑んだ。


「ふふ、その意気込みだけは認めてあげるわ。……まあ、翔も向こうで大変なことになっているみたいだし、三好家の男は二人揃って本当に手が掛かるわね」


その時──駿のポケットの中で、スマートフォンが震えた。


『──駿、そっちの準備はできたか? そろそろ繋ぐぞ』


脳内に直接響く、異世界の兄・翔からの念話だった。


「おかん、みんな。翔から連絡が来たで。そろそろ始めよか」


駿が言うと、リビングの空気が一瞬で切り替わった。


大型ディスプレイの前の床に駿が座り、その背後に両親や不破家をはじめとする四家族が、ソファーや椅子を整然と並べて座り込んだ。


駿が手元のスマホをミラーリング操作すると、壁一面の巨大ディスプレイが青く発光し、ノイズの後に鮮明な映像が映し出された。



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