悲しみ
小説
また空をご覧になっているのか、大きく開け放たれた窓の前に佇んでおられる
あれから十日が過ぎた
遠くに小さいが強烈な光が一瞬瞬き消えた
その二日後、息も絶え絶えの使者が勝報を伝えに現れた
使者は、我が国の誇る天翔けるの一人、敵の首魁を倒したことを報告した
その後も続報、いずれも勝利を伝える使者か戻った
首魁が倒れても統制を保っていた敵軍を敗走させたこと
敗走中の敵軍を追撃していること
敵軍の一部の籠った城砦を包囲していること
決戦に臨む味方の勝利を願っていた人々は大いに湧き立った
彼が戻らないことに顔を曇らせたものもいたが、やがて勝利の歓喜に置き換わっていった
彼以外も、多くの味方が失われたのだ
彼もそうしたものたちの一人に過ぎなかった
城が勝報一色に包まれていく中でも、あのお方は、表情の冴えない方々の一人だった
「姫。そろそろ身支度を整えていただきたいのですが、みなさま大広間へお集まりになっておられます。」
抑制の効いた声音で要件を淡々と伝える
よかった、こういうときはお付きの1人に過ぎなくて。
私にはあんなに淡々と伝えられない
窓辺の影が動き、こちらへ顔を向けられた
まだ幼さを残しながらも、将来は北邦一といわれる第一王女を上回ると噂される整った顔立ち
用意をすると答える声も鈴の音のようだ
いつも通り静かな微笑みを浮かべているが目に深い悲しみが漂っている




