光る石
「作れなかったの?」
少し意地悪な聞き方になってしまった。
案の定、彼は少し口を尖らせて困ったような顔をしている。そんな仕草が可愛らしくて、きゅっと抱きしめて頭を撫でてあげた
――。
後ろの姉妹が、ものすごい顔をして睨んでいたっけ。
離れた者同士がやり取りできる仕掛けなんて、本当に作れるとは思っていなかった。もしできたら、それこそ「革新的」な大発明だもの。
◇
「これを姫に」
差し出されたのは、ひとつの透明な石だった。
それを包み込む彼の掌は、もう、かつてのちっちゃな手ではない。
出陣式を終えた彼のそばへ、私は偶然を装って近づいた。
いえ、偶然。出陣式のたびにここへは来ていたけど、偶然。
、、、ずいぶん、待たされたわ。
声をかけると、彼は小走りに駆け寄ってきて、私の前でひざまずこうとしてやめた。そう、それでよいの。出陣式を終えたのだから、たとえ相手が王族でも騎士がひざまずく必要はないの。覚えておきなさい、ね。
◇
「近くにいると光るん……いや、光ります」
途中で無理に言葉遣いを改める彼。相変わらず、お話は苦手なのね。
うっすらと曇った半透明の石が、淡い光を放っている。
――聖国の姉様からの手紙に書いてあったものと同じだわ。
手紙の末尾にさらっと書いてあったのを見た時、胸がザワザワした。姉様に先に渡したのね。
仕方ないわ、あなたは聖国との国境にいたんだもの。でも、あなたは我が国の騎士よ。聖女候補から労いを受けたからって、わざわざあちらへ出向くことはないの。そういうのはもっと偉い騎士団長とかがやればよいの。
なにより、これを思いついたのも、作ってと伝えたのも私。それなのに姉様の後だなんて、なんだか少し気に入らない。
「どれくらい近くにいるかもわかるのかしら」
私が訊くと、彼はまた困った顔をした。
彼の頭に触れて髪を撫でてあげたくなった。
まだ手を伸ばせば届くかしら。
少し下がって立っている姉妹が2人同時に目を見開いて睨んできた。
妹は噛み付きたそうに歯をガチガチさせ、姉の視線はさらに鋭い。「とっととどっかいって」そう言いたげに。
あの街でもこんな風に睨まれた。私は姫なのに。
、、、いいな、二人はずっと、彼と一緒に過ごしているんだ。




