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ものがたり  作者: kaitemita


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7/7

思い出す

歓声


目が覚めてしまった

あのまま眠ってしまった

夢を見ていたのに

目覚めたくなどなかったのに


歓声が聞こえる

窓を開けたままだった

まるで誰かが入ってくるのを待っていたように

あれはいつだったか

窓のそばのカーテンが膨らんでいた

驚かせようとして隠れているのか

よくみると靴がみえていた


歓声がさらに大きくなる

祝福の歌も

また、知らせが来たのだろう

私は聞きたくない


固く閉じた扉が強く叩かれた

知らない

聞こえない

私の名前、扉を開けることを伝える侍女頭の声

「開けないで!」

私は扉の方を向いて叫んだ


気がついた

目の端に淡い、けれど暖かな光の存在に

弱い光

優しい光

私は扉へ向かって走り、扉を開いた


走る、裸足だ、ベッドの上にいたんだから当たり前

後ろの方から侍女たちが名前を呼ぶのが聞こえる

「姫、お待ちください」

待たない

胸に抱えた淡い光は先ほどより強い

大広間の入り口が見える

人々の喜びのざわめきが聞こえてくる

裸足の足が痛む

何度も転びそうになる

息があがってしまった

髪も寝起きのまま整えずに来てしまったことに今気づいた

でも、止まれない

止まらない


◇


「作れなかったの?」

少し意地悪な聞き方になってしまった

困ったような顔をしている

離れたもの同士がやり取りできる仕掛け

そんなものが作れるとは思っていない

できたら、かくしんてき、とかいうものになる


◇


「これを姫に」

手渡された透明な石

「近くにいると光るん、、、いや、光ます」

姉様から聞いていたものと同じ

姉様に渡したものと同じ

あの頃、私と話していて思いついたものなのに、姉様のあとに渡すなんて、なんか気に入らない

「どれぐらい近くにいるかわかるのかしら」

困ったような顔をさせてしまった

手作りのマントはもう着ていなかった

剣もあの時の小さなものではない


◇

今日の宴は楽しみにしていた

明日は出陣式

我が国の誇る天翔ける騎士

父に若い、騎士になりたてのものが進言したことで、父、王がきめたときく

軍の再配置

天翔ける騎士を各地の救援にばかり使うのは消耗が激しくなりやがてすりつぶしてしまうと

それから各地の再編がなされて、天翔ける騎士は団ごとに城塞都市や重要な砦にまとめられた

彼らの抜けた後は、狩人や冒険者に集団としての訓練を行うことで補うことにした

大軍同士の戦いでは彼らはすぐ壊滅してしまうから

いくつかの砦、天翔ける騎士の詰めていたところは放棄された


進言した若い騎士曰く、戦力をまとめ直し、数を確保し、迫る敵軍に決戦を挑むのではなく、短く素早い一撃を何度も加えるべき

敵の中枢、胴体ではなく伸びた手足を狙うべき

聞くところでは王の質問に詰まると、騎士の傍にいるものが小声で教えていたらしい

そ、あの子はそんなにしっかりしていない

おおかた姉妹の姉が考えたのだろう


◇


昨夜の宴は退屈だった

隣国や周辺の領主たちから、何人かを紹介された

つまらない

歳の離れた者も、歳の近い者も

少し話をしたがつまらない

魅力を感じない

仕方ない、これも役目

やがてはどこかに嫁ぐのだから

そう考えた時に、こちらを見る視線に気がついた

そこにいたのね

胸がなぜかどきどきした

でも、急がない

むしろもっとゆっくり

優雅に

気づいたみたい

私が向かってくることに

話しかけてきている相手がとまどってるわよ

その人あなたのところの団長でしょ

生返事はだめ

、、、私から逃げるのも、もっとダメ


◇


何度目の出陣式だったか

次は兄様の近衛も出てしまうかもしれない

苦戦しているのだ

敵は圧倒的だった

再編してからは各地で小さな勝利を重ねてきていたが、相手の動きを鈍らせたものの、じわりじわりと押し込まれている


私があの子と過ごした街とも連絡は途絶えているそうだ

小さな勝利ではどれほど積み上げても、届かない

我が国、いや、北方の国々のすべてが燃えあがろうとしていた


◇


「姫?」

驚かせてしまった

夜に私がこんなところを訪れるのは、姫だからだめなのかしら、いや、だめよね

彼の脇にいる姉妹たちの視線が刺さる

「、、、眠れなくて歩いていたところです」

私は微笑みを浮かべてそう答えた

嘘だけど

姉妹たちの目が先ほどより大きく開き、視線が鋭くなる

嘘つき、妹の口の動きがそう読めた

「武運を。我が国の最高の騎士に。」

騎士に、よりあなたに、がよかっただろうか。

「最高?」

答えてからしまった、という表情になる

そう、私は姫。本来あなたは私の前ではひざまづかないとならないのよ。

それと言葉遣いも、それはダメ

二人で、二人きりではなかったけど、本を読んだことを思い出す

あの頃よりはきびきびと話すのね

「これなんて字?」

そう聞かれるたびに教えてあげた

時々覚えているかを試して、正解のときは優しく頭を撫でてあげた

姉妹、妹の方が噛みつきそうな顔をしていた


◇

あの頃の面影を残す顔立ちを思い出す。

先日、父から二つ名を賜ったときく

固辞したとも

あの子らしい

王の剣は我が国の最高の騎士の呼び名の一つ

でも、彼、あの子は受けないだろう

それは彼を可愛がり、多くのことを教えたかの老将のものなのだから


彼は、第二騎士団の一人として参加し、壊滅しかけた味方を鼓舞し、まとめ直し

攻囲を打ち破り、敵の将軍、中でも数多くの騎士たちの血を染み込ませた大剣を持つ敵将をも討ち取り、さらには敵の大軍に痛撃を加えて敗走させた

もっとも敗走する敵を単騎でさらに追おうとして、味方、多分あの姉妹だろう、に捕まったそうだが。


この話は身内を何人も失い、瞳を曇らせていた侍女頭が瞳を輝かせて教えてくれた

それは物語でしか聞いたことのない技、魔法を彼が使ったことを

光の槍を使うものはいる

少なくとも我が国の騎士には何人も

彼が使ったのはそれとは異なる

「、、、戦場は静まり返ったそうです。空から無数の光の槍が降り注ぎ、、、」


違うわ

槍ではないの

それは矢、物語の英雄譚で呼ばれている

降り注ぐ光の矢

その全てがあらゆるものを貫く

硬い鎧も

槍の重い一撃も逸らす盾でも

練られた魔法で作られた障壁も

まるで存在しないように

その矢を放つ技、魔法はいろいろな名前で呼ばれていた

調べたんだもの

私のお気に入りは、光弓、天を覆う矢を放つ



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