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「賢者様は魔王クーネリア・クーネンベルクに神聖魔法が効かないという話はご存知ですか?」
レーンの切り返しは予想通りだった。
それはこのあとのジェームス王との謁見でも話題にされる内容だからだ。
「ええ。もちろん聞き及んでいます。近頃即位した現魔王には完全な神聖魔法耐性があり、なおかつ配下の魔族にも恩賜という形でその力を分け与えている、と」
実際、一周目での俺の経験から言えばクーネリアの神聖魔法耐性は本物だ。
本来魔族に対しては絶大な威力を誇る神聖魔法だが、ことクーネリアにとってはまったく無意味なものでしかなかった。
しかも魔王というのは自身の能力を一定条件で分け与える力、恩賜を持っている。
つまりクーネリアという魔王が存在する限り魔族全体の神聖魔法耐性が上昇するのだ。
これはつまりそれまでの魔族と人間とのパワーバランスの崩壊を意味した。
クーネリアの登場で今回の戦いは始まったのだ。
「もちろんソードワースの血の力も知っていますよ。でも俺が聞いているのはそのことでもありません。退魔の力はあなたに義務を課したでしょうが、けれどそれもまたあなた自身の意志ではない」
「意志、ですか?」
「ええ。意志です。あなたは魔王を倒してどうしたいんです。個人的な恨みでもありますか?」
「いえ。それは……」
無いだろう。
そんなことは俺はすでに百も承知だし、レーンが責任感と高潔さから魔王討伐の任務に付いたことも分かっている。
何故ならソードワースの家系には魔力を無効化する退魔の力があり、神聖魔法耐性を得た魔族に対抗し得る最大の武器となるからだ。
そしていま現在、退魔の力を有するソードワースはレーンただ一人。
それが彼女が勇者に選ばれた理由である。
「もちろん戦禍の犠牲を増やしたくない。そういう気持ちもあるでしょう。ですが他に何かあるんじゃないですか。戦いを終わらせたあとにやりたいことが?」
――ねぇ。ゼノ。一つお願いがあるんだ。いつか魔王を倒したらボクの国に来てくれないかな。ゼノに手伝って欲しいことがあるんだ。
そう。
一周目の旅の途中、俺はレーンにそうおねだりされた。
そしてそれは最後の最後で仲間割れをも辞さないという態度でレーンを突き動かしていた。
結局あれはなんだったのか。
それが分かれば今後の方針も変わってくるのだが。
「そ、それは……」
無い、というわけでもなさそうだが初対面では話しづらいことなのだろうか。
レーンは言いよどんでしまって話してくれそうにない。
一周目では最後まではぐらかされていたので逆に今のタイミングならあるいは、と思ったのだが存外あてが外れた。
もっともこの会話自体がついでのようなものだし、あんまり強引に聞き出すのも得策ではないだろう。
雰囲気が悪くなる前に別の話題に切り替えるべきか。
俺が次の話題をどうするか考えていると部屋のドアが小さくノックされた。
ふむ。
どうやらお喋りはここまでのようだ。




