神のいたずら
お金がなくなった近藤は、街をさまよい歩きました。
「ううっ」
腹が減り、強く吹いている風を受けてふらつき、道端で倒れてしまいました。
「くそう」
完全な、これ以上ないというくらいの、自業自得です。しかし、さすがにその姿は哀れでした。
「わっ」
路上で横になった近藤の顔面を目掛けて、何かが飛んできました。
彼が手で取って、見ると、それは競馬新聞でした。
「ちきしょ……」
遠くへ放り投げようとしましたが、ふと何かに気づき、彼は体を起こしました。
その新聞は数日後に開催されるもので、メインレースのところに、誰かが予想したのでしょう、赤のペンで二頭に大きく丸がしてありました。
「これは、もしや……」
近藤は、彼をかわいそうに思った神様が、お金を与えようとしてくれているのでは? と直感が働いたのです。
すると、どこにそんな力が残っていたのか、勢いよく立ち上がり、善は急げとばかりに、その印がついた馬券を買いにむかったのでした。
「ううう~。頼むぞ~」
近藤は、わずかに残金があった己の銀行口座から、なけなしの一万円を下ろし、購入した馬券を両手で拝むように持ってつぶやきました。
丸がついていたのは三番と八番。その二頭の一点買いで、当たれば百万円以上になります。
いよいよ時間を迎えて、レースがスタートしました。
「行けっ!」
近藤は叫びました。
「行けっ、行けっ!」
しかし、しばらくすると口を閉ざして沈黙してしまいました。馬券の馬が駄目だからではありません。その反対で、なんと三番と八番の二馬が他を大きく引き離して、勝ちが確実な展開となり、自分が目にしているのは夢ではないのか? といった心境になったためでした。
彼は茫然とした表情から、徐々に笑顔になっていきました。
神様、ありがとうごぜえやす! ワイ、これからは心を入れ替えて、めっさ働いて、人の役に立ちますんで、見ておくんなまし!
そう心の中でしゃべりました。
ところがです。どうしたことか、三番の馬が急に暴れだし、騎手を振り落として、あらぬ方向へ走っていってしまったのです。
「……」
近藤は呆気に取られ、思いきり開いた口がふさがりませんでした。
そして、その状態で銅像のように固まってしまったのでした。
神は、ふざけたことばかりしているこの男を救うはずはなく、もてあそんだのでした。




