7/9
本当にやりたいこと
「何をやっているんだ、私は。お金が欲しいから教師を辞めたんじゃないぞ。人生が終わるときに後悔しないように、やりたいことをやるためだったはずだ」
自宅で、近藤はそのように口にし、原点に立ち返って、自分が本当にやりたいことは何なのか考えを巡らせました。
「よし、これだ」
そして彼は、大好きな甘いものを食べ歩きました。
「いかん、いかん。そうじゃないだろう」
我に返った近藤は、再び自分が本当は何を望んでいるか考えを巡らせました。
「よし、これだ」
そして彼は、大好きなミュージシャンのコンサートに行き倒しました。
「いかん、いかん。そうじゃないだろう」
また我に返った近藤は、今度こそはと自分が本当は何を欲しているのか考えを巡らせました。
「よし、これだ」
そして彼は、大好きな落語を聴くために連日寄席に通いました。
「あら……」
近藤は財布を逆さまにしました。好きなことに興じまくったせいで、小銭がいくらか落ちてきただけとなり、すっからかんの状態になってしまったのでした。




