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おかしなおかしな教師近藤が教師じゃなくなる?  作者: 柿井優嬉


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6/9

流し

 ギターを弾ける近藤は、生活費を稼ぐために、流しの歌手をやることにしました。

「お願いします」

「そういうのは受けつけてないから」

 しかし、今の時代、流しを受け入れてくれる店は多くありません。しかも、近藤はおっさん丸出しな容姿だというのに、客の中心は若者の、おしゃれなところばかりに足を運んで頼むので、なおのこと冷たくあしらわれ、すべて断られてしまいました。

「ちくしょう」

 近藤は道端で石ころを蹴って、ふてくされました。

 それでも、お金が必要ですし、諦めませんでした。

「お願いします」

「流しがいるような店じゃないことくらいわかるでしょ」

「お願いします」

「そう言われてもねえ」

「お願いします」

「はーあ? ふざけてんの? あんた」

 厳しい現実に、ようやくこの男も妥協し、流しがいそうな渋い印象の店にも行って、頭を下げました。

「お願いします」

「申し訳ないけど」

「お願いします」

「いきなり来られてもねえ」

 とはいえ、やはりそう簡単にうまくは運びません。

「お願いします」

「あらー……じゃあ、どうぞ」

 しかし、やっとこさ、優しそうな女性が営むバーで、そのように温かく言葉をかけられ、店に入れてもらえました。

 中にいた客たちも、昭和の雰囲気があるその店にマッチしたたたずまいで、流しをダサいとか迷惑などとは思わず、近藤を歓迎しました。

「それでは、歌わせていただきます」

 近藤がおじぎをして述べると、彼らはワーッと声を上げて、拍手までしてくれました。

 ところがです。この男はなぜか、持ち歩いていたケースからギターではなくマイクだけ取りだし、高速ラップを歌い始めたのです。

 お客さんたち、それに、招き入れてくれた店の女性も、ぼかーんとなりました。

 実は、なかなか受け入れてもらえない日々が続いていたなかで、近藤は暇を持て余し、ラップに挑戦していたのでした。そして、まったく上手くないのですが、本人的には相当な感触を得たので、そっちをやることにしたのです。

「イエッ! イエッ! ホッ! ホッ! ヘイ、メーン」

 曲の最後には、ヒップアップを意識したポーズを派手にきめました。

「……」

 お金を手に入れられなかったので、その後すぐにやめることにしましたけれども、近藤は満足はしたのでした。


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