新たな舞台
また新たな仕事を始めようかと思った近藤でしたが、やはりプロレスの道を諦めたくないという気持ちがもたげてきました。
そこで、女子プロレスの団体に赴きました。
「お願いします、入門させてください!」
「……」
応対した、その団体の幹部の女性は、呆気に取られました。それはそうでしょう。男だし、おっさん丸出しだし、と。
「……あなたは男性ですよね?」
至極まともな質問を近藤にぶつけました。
「ええ。ですが、魂は女子プロレスラーです」
「どこが?」
「見てて……いえ、聞いていてくださいよ」
近藤はコホンとせきをしました。
「行くぞ、コノヤロ~!」
そう口にすると、「ね?」という表情をしました。
「はあ?」
団体の女性はぽかんとしました。
「いや、わかるでしょ。女子プロレスラーは、男子よりも、試合中に声を出しがちじゃないですか。そのときのです。くらえ、コノヤロ~!」
確かに言い方は女っぽくしています。
「え? なに、馬鹿にしてんの?」
「してません」
「はい、駄目。不採用でーす」
「ちょ、ちょっと待ってください」
近藤は慌てて止めて、言葉を続けました。
「見てください、これを。自分でちゃんと用意してきたんですから」
バッグから出したのは、フリルが付いて可愛らしさもある、女子プロレスラーの衣装でした。
「いや、あんた、自分の容姿わかってる? それ着て出たら、ただの変質者だよ?」
「いやいや、そうはなりませんて。実際に身につけたら意外といけるものですよ」
「嘘だね」
「じゃあ、着ますから、ちょっと待っててください」
近藤は、そこはしっかりと見えないところまで離れていって、数分後に戻ってきました。
「いつデビューいけますかね?」
近藤は、もう決まったテイで尋ねました。
「いやいや、おっさん。あんたやっぱりただの変質者だって」
「嘘ですよ~」
近藤は、「またまたご冗談を」といった調子で言いました。
「はい、駄目ー。不採用でーす」
「ちょ、ちょ、ちょー!」
近藤は、馴れ馴れしい言葉遣いで待ったをかけました。
「でしたら、レフェリーはどうでしょう? 真剣にやりますから」
「え?」
団体の女性は考えました。
「そうねえ……レフェリーはなり手が少ないから、やってくれれば助かるんだけど……」
「でしょう? 私、とにかくプロレスが大好きなので、皆さんを困らせることはしません。どうかお願いします!」
近藤は深く頭を下げました。
「うーん……わかりました。しかし、約束ですよ。本当に真面目にちゃんとやってくださいね?」
「もちろんです! ありがとうございます!」
近藤は、レスラーとしての情熱はどこへやら、稼ぎが欲しくなってのその申し出だったので、ふざけるつもりは毛頭ありませんでした。
ところが——。
「ギブアップ? ヘイ! ヘイ! ギブアップ?」
リングに上がると興奮のあまり動きが異常に激しく、選手の誰よりも目立ってしまうのでした。
「カモン! カモン! ヘイッ!」
そして彼はその団体を解雇になったのでした。




