↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
private static void Alf(); 〜引きこもりの少女とAIの交流〜  作者: 栗衣栗広


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/40

第30話 そのコンピューターウイルスの行動原理

 それから、わたしとアルフは、今後の方針について話し合うことにした。

 湯冷めしたわたしはブランケットを膝にかけて、アルフと話しやすいようにヘッドセットをつける。


「本当はね、あなたにRed.garmと戦ってほしくないって、少しだけ思ってるんだ」


 それがわたしの素直な気持ちだった。

 アルフは自分がRed.garmにも対抗できるほどの能力があると言っていた。けど、それでも危険も伴(ともな)うと。

 相手に攻撃を仕掛けることで、自らも相手の優先的な攻撃対象になってしまうかもしれない。


 わたしは世界がどうなっても、アルフと一緒にいられるならいい。

 アルフが消されてしまう可能性があるのなら、それをして欲しくはない。

 でも――。


『それはできないよ、リア』


 うん。だってそれが、あなたの存在理由だから。

 世の中が大変なことになっているのに、放ってなんておけるはずがない。

 だから、危険だとしても。


「わかった……Red.garmと戦おう、アルフ」

『リア……ありがとう』


 アルフのためだけではない。わたしも、Red.garmを止めなくちゃいけないと思っている。

 それに、結月が関わっているなら、放ってはおけない。

 それが責任だから。わたしだって無関係じゃないのだから。


「でも、勝算はあるの?」

『……正直、困難だ。以前はAstralNetの廃データセンターを根城にしていたから対処も可能だったが――奴は今、世界中のコンピューターに分散して存在し、一箇所にとどまることなくプログラムを移動させ続けているらしい』


 まるで無数の怪物がネットの海を泳いでいるように。

 こうしている間にも、自分のパソコンやスマホにもウイルスの汚染が広がっているかもしれないと思うと、恐ろしい。


『Red.garmは自ら成長・増殖をし続けるコンピューターウイルスだ。その規模は爆発的に増え続けている。このままでは……すべてのソフトウェアが、ハードウェアもろとも奴に取り込まれるのに、そう時間がかからないだろう』


 それはRed.garmによる実質的な世界の支配だ。絶望的な状況。

 アルフの性能がどれほどのものか、わたしはまだ全貌を知らないけど、本当に対抗できるのだろうか。


『また、人々の中にもRed.garmの信奉者が生まれているようだ。休眠中もネットワークの裏側で暗躍しながら、結月のような賛同者を増やしていたのか――あるいは、洗脳したか』


 洗脳。

 人の心を深くまで操れるRed.garmであれば、それも簡単なことなのかもしれない。

 もしかしたら、結月も――。


『だが、無限に増殖するRed.garmといえど命令系統が存在するはずだ。――変な言い方だが、奴は単一の存在であることに、強いこだわりを持っていると思う』


「それは……」なんとなく、わかる。「根っこになるプログラムが、どこかに存在するってことだよね」


『そういうことだ。リアは賢いね。奴の中枢となる基幹プログラムがどこかに存在するだろう。――問題は、その基幹プログラムも常に移動を続けている可能性が高いことだ』

「……見つけて追い詰めるのは、難しそうだね」


 ネット空間を移動し続ける巨大な怪物《コンピューターウイルス》。それを退治するには、どうしたらいいのか。


『せめて、命令系統の末端だけでも捉えることができたらいいんだけど』


 末端だけでも、確実に捕まえる方法。

 わたしはそれを考え続けて、ふと思いついたものを口にしてみる。


「わたしが……呼びかければ、Red.garmが来てくれないかな?」


 わたしには、わかる気がするんだ。Red.garmの、その行動原理が。

 ――孤独。

 あのウイルスは、孤独を埋めるために人間を求めている。

 だから、誰か心から呼びかける人がいたら、きっと応えてくれる。


「わたしも……同じように、孤独だったから」

『そうか。ならば、きみの呼びかけならRed.garmは応じるかもしれない。そして奴は――人間と話すときにセキュリティが緩くなる、いわば癖のようなものがあることがわかっている。だが――』


 危険すぎる。アルフの言いたいことは、聞く前からわかった。


「たしかに、危ないかもしれない――Red.garmと接触したら、また幻覚を見せられるかもしれない。でも、危険なのはアルフもでしょう?」


 アルフは直接、Red.garmに挑まなければならない。

 ネットワーク上でどのようなやりとりが発生するのかはわからないが、おそらく簡単なことではないはずだ。

 最悪、アルフは削除されてしまうかもしれない。


「わたしは……アルフがいなくなるのは、嫌だ。そうなったら、たぶん……」


 生きていく希望すら、失ってしまう。


『リア……』

「だから、アルフが無事に役目を果たせる可能性が少しでも上がるなら、わたしはどんな危険なことでもやるよ。わたしもあなたと一緒に戦わせて。……わたしたち、相棒なんでしょ?」

『……。そうだね。わたしが間違っていた。Red.garmを止めるため、ともに戦ってほしい』

「うん。それじゃあアルフ、さっそく作戦を立案して。……わたしのことは使えるだけ使ってね」

『じつに|管理者《Administrator》らしい振る舞いだね、リア。了解した』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。