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こんこん、と小さくドアをノックする音が聞こえる。

手紙を封筒に戻して、誰が来たのかを窺う。


「リデル様、入ってもいいかしら」

「ノルティーネ様?ええ、どうぞ、かまいません」


ノックをした人物はノルティーネだった。

心配してきてくれたのだろう、リデルはノルティーネに椅子に座るのよう促す。

ノルティーネはお礼を言って、ベッドサイドの椅子に腰をおろした。


「体調はどう?熱があると聞いたけれど」

「はい、昨日に引き続き授業を中止してしまい、申し訳ありません」

「気にしないで。むしろこうしてのんびりできて感謝してるくらいよ。実家から連絡があったの、今回の聖妃はリデル様を推薦する予定だと」


ノルティーネに連絡がいくのも、当然だろう。

本来であれば、公爵令嬢という地位と聖魔力の多さから聖妃に選ばれるのはノルティーネのはずだったのだから。

別の人間を推薦するのであれば、その報告は必ずノルティーネにもいくはずだ。


「そう、みたいですね。公爵家から私を支援すると、連絡がありました」

「嬉しくないの?」

「私みたいな男爵家の娘にとってとてもありがたい事なのだとわかっています。けれど、出来れば他の属性で実家の役に立ちたかったな、と思うのです。次代のパパラチアを継げるのは私しかいません。昨日までは当たり前に、パパラチアを継ぐのだと思っていました。」


そう、過去のリデルがそうだったように。

パパラチアの領地が好きで、そこに住まう民を、小さな弟を、優しい父を愛していて。

母のことも決して嫌いではなかった。

穏やかな日常が続くと、いつも私は信じていた。

7歳の私であれば、答えていたであろう答えをノルティーネへ告げる。


「わかるわ。私も、サファイア公爵家が好き。父母、兄も、尊敬できる人ばかりで、早く役に立ちたいと思っているの。こうして聖魔法の属性になったからには、聖妃になってサファイア家に尽くすのだと、はじめは思ったわ。けれど、違った。聖妃にはリデル様がなる。私はサファイアの傍系にでも嫁ぐのでしょう。でも変わらないのよ、サファイア家の役に立つということは。気持ちと行動が私の理念と変わらないのなら、例えどの属性であっても立場であってもサファイア家を支えられる。私はそう信じてるわ」

「変わらない……」

「ええ。そう信じる」


ならどうして貴女は死んでしまったの。

眩しいくらいに、サファイア公爵家を誇っている貴女が。

それすらも公爵家の為だったのかそれとも私と同じように騙されていたのか、別の思惑があったのか。

あの事件の真相はなにもわからないし、わからなくてもいい、何故ならあの事件はもう二度と起きはしないのだから。


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