手紙
次の日、リデルは熱を出した。
知恵熱だろうことはわかっていた、7歳のリデルの脳に対して情報が与えられすぎてキャパオーバーしたのだろう。
熱に浮かされながら、実家にリデルの属性魔法とその強さが告げられたという報告を受けた。
母は既に行動に出ているだろうことは予測できる。
サファイア公爵家へもリデルのことは報告され、リデルという人物が公爵家として推薦するに相応しいか七つの夏を通して見極めるだろう。
だが、歴代最高の魔力を持ったリデルを聖妃として推薦しないという選択肢は恐らく存在しない。
サファイア公爵家が推薦しなくとも、中央が推薦家を狙うだろう。
リデルがどんな人物で御しやすいのか、どうすれば扱いやすいのか、水面下で調べが進んでいるはずだ。
男爵家出身で後ろ盾が充分ではないリデルは、わかりやすく狙いやすく見えるだろう。
「……誰のものにもなるものか」
ノクスのものになれないのなら、私は誰のものにもなりはしない。
温くなった額の布を握りながらリデルは一人呟く。
「パパラチア男爵令嬢、お手紙が届いております」
「ありがとう、入って」
下女に入室の許可を出すと、告げられた通りトレイには2通の封筒が載っている。
ペーパーカッターで封を切ってもらい、寝転がった体制のまま手紙を開く。
一通は父からの手紙で、もう一通はサファイア公爵家からだった。
父からの手紙の内容は、わかっている。
過去にも同じことがあったから。
中身を確認すると、手紙の中身にやはり大きな違いはなかった。
聖魔法の属性がわかったことで母が出ていきそれを止められなかったこと、リンデルドが動揺しているということ、公爵家や聖妃として城に上がることは喜ばしく、誇ることだということ。
父として出来る限りのサポートをする旨も記載されていた。
ーー止められないのは仕方ない、これがこの国の普通だ。
そんなことより、サファイア公爵家からの手紙だ。
過去、サファイア公爵家はこんなに早く動かなかった。
聖妃の場合は、こんなに早く動くのだろうか。
過去にサファイア公爵家がリデルに接触してきたのは、父であるパパラチア男爵との話が済んでからであったから、こうして話もまとまらないうちに手紙が来るとは思わなかった。
それほどまでに、政治的利用価値があるということか。
開けないわけにはいかない。
たかだか7歳の子供に宛てた手紙だ。
大した意味はないのかもしれない。
勢いよく手紙を開けると、中に書いてあったのは驚くような言葉ではなかった。
「サファイア公爵家は、全面的にリデル・パパラチアの聖妃教育を支援する……」
これを、送ってくる意味は。
私が本当に7歳の子供であったのなら、これを受け取ってどうするだろう。
聖妃という、貴族の女の子なら一度は夢見る存在になれる可能性の高い今の状況を。
公爵家に怪しまれるわけにはいかない。




