ノルティーネとの出会い
気がつくと、眩く光る魔法陣の上にいた。
さほど時間は経ってないように思えたが、ざわざわと騒ぐ声が聞こえる。
もう判定は終わっているだろうに、聖女はリデルに声をかけてこなかった。
「あの、」
「……歴代最高の、聖魔法の持ち主です」
驚いた顔で、聖女はリデルにそう告げる。
人の声が大きくなる、どうやらざわざわと騒がしいのは、部屋から漏れた光に反応して人が覗きに来ていたせいだった。
2回分の魂が混じったリデルの魔力は、2倍に膨れ上がったのだろう。
元々男爵家から公爵家へ上がれるほどの魔力が倍になった訳だ、歴代最高だといわれてもリデルは納得する。
そして、安心した。
歴代最高の聖女だ。それは政治的な意味合いからサファイア家よりも王家に嫁ぐ確率が上がるということであり、ノルティーネが起こした事件が起こらなくなることを意味している。
騒ぎ立てる周りは無視して、聖女に礼を言いリデルは部屋を出る。
聖女のための部屋は、一番奥だ。
中では既にノルティーネが待っていて、入ってきたリデルに対して彼女は微笑んだ。
前回と同じく、今年度の聖魔法の持ち主はノルティーネとリデルのみ。
大聖堂の教室で一番狭い部屋ではあるが、その調度品や部屋の位置は一番良いものだ。
聖女の教育には妃教育も含まれる、聖女は聖妃ひいては王妃になる可能性があるからだ。
ノルティーネは、入ってきたリデルにお茶を勧める。
「聖魔法の持ち主は、私達だけのようね。私はノルティーネ・サファイア。貴方は?」
「リデル・パパラチアです。よろしくおねがいします」
「まあ、同じサファイア家門なのね。嬉しいわ、仲良くしましょうね、リデル様。私のことはノルティーネと呼んで」
ノルティーネの印象は、出会った頃から変わらない。
リデルは過去、ノルティーネの口調や態度を真似ていた。
華やかで自信があって、下のものにも分け隔てなく優しく、ただし意見を言う場面ではきちんとものが言える。
王妃として国を導いていくのに、ノルティーネより相応しい人間などいないと思ったものだった。
同い年ではあるが、ノルティーネはリデルにとって淑女としての目標だった。
そんな彼女が、何故。
リデルにとっては、たった数日前の出来事だ。
変わらずに微笑む彼女の悲しい結末を、リデルは知っている。
思い出してぎこちなく笑っているであろうリデルを、ノルティーネは咎めたりはしなかった。
緊張してると、勘違いしてくれたならありがたい。
お茶を飲みながら他愛もない話に花を咲かせていると、エアリエーゼが荷物を持って入ってくる。
「おそろいですね。ノルティーネ嬢、リデル嬢。」
下女にカップを下げてもらい、リデルとノルティーネは勉強用の机へ移動する。
エアリエーゼは教卓の隣の机に荷物を置いて、リデルとノルティーネが机に着くのを待ち、二人が座ったのを確認して話し始めた。




