国の成り立ち
中はもう既に到着した少女たちで溢れていた。
すでに友達になったのか、はたまたドレスの紋章を見て近寄って行ってるのか。
わいわいと騒ぎ合っている様は、微笑ましいものがある。
過去のリデルは、その輪に入りたくて仕方がなかった。
今まで友達なんていなかったのだ、友達という存在が欲しかった。
けれど、今回は冷静だった。
ーー3ヶ月も共に過ごすのだ。焦っても仕方がない。
それに、今擦り寄ったところで属性や魔力の強さでその後の人生は大きく変わる。
前のリデルがそうであったように。
リデルは荷物を預け、ぽつりと空いていた聖堂の前の方の席へ座った。
ステンドグラスから溢れる光が、眩しく、思わず目を細める。
ステンドグラスには、創世の女神が初代の王に守護石を授けるシーンが描かれている。
その昔、我々人間に魔力はなく、そして宝石も持たなかった。
人々は火を持たず、字を持たず、文化を持つこともなかった。
人々は飢えに苦しみ、病に嘆き、死に怯えていた。
そんな中、人々を束ね世界を豊かにしようとした者がいた、ーー初代ジュエリア国王、その人である。
創世の女神はこの男に守護石を授け、男の子供には祝福として胸に宝石を与えた。
王は創世の女神を祀り、守護石を祀るため5箇所に神殿を、そして、各地に聖堂を立てた。
女神と同じ形をした女の子供のみにその恩恵は集まり、女は様々な魔法を扱えるようになった。
どういうわけか、男の子供には1つの魔法しか扱えず、代わり男の子供には女を守るための強靭な肉体が与えられた。
今現在も、初代の血族にのみ宝石が現れる。
つまり、この国の貴族はほぼ全員が初代の血を受け継いでいるというわけだ。
不思議なものだが、そうしてこの国には二通りの人間が存在している。
公爵家では、使用人も貴族出身者が多く、宝石を持たない使用人はほぼいないが、男爵家では大半使用人は宝石を持たない平民だったから、リデルにとってはどちらの人間も馴染みがある。
宝石を持たない人間は、ある程度目の色髪の色が制限を受けているか、鮮やかな色あいの人は存在しない。
逆に宝石を持つ人間は、瞳の色や髪の色もカラフルだ。
胸の宝石が影響するのか、それとも魔力が影響しているのか。
リデルはわからない。
ちりりん、と手振鈴の音が聞こえる。
それは始まりの合図だ、全員がそうだと知っていたかのようにその音と共にシンと静まり返る。
手振鈴を鳴らした女性は、全体を見渡すとにこりと微笑んだ。
「皆さん揃いましたね。私は、ジュエリア・サントル大聖堂の聖女、エアリエーゼ。皆様が来るのを心待ちにしていました。」
エアリエーゼは中央推薦の元聖妃だ。
ジュエリア・サントル大聖堂の聖女は、中央の聖女と決まっており、守護石を持たない中央の聖女は、聖妃に選ばれた者以外はこうして大聖堂へ身を寄せている。
公爵夫人が時折大講堂でお祈りをするように、中央の聖女はここで他人に見える形で女神への信仰を広め、信仰心を高める役割を果たす。
エアリエーゼ以外も聖女はいるだろうが、前回の人生でもこうして初めに挨拶したのは、エアリエーゼだったような気がする。
「これから3ヶ月間女神が授けてくださったお力を正しく使えるよう、共に過ごしながら訓練をします。自分の属性魔法をうまく扱えるようになるのは、これから生きていく上でとても重要になるでしょう」
ざわざわと、再び騒がしくなる。
自分の属性が気になるのだろう、当たり前だ。
解放の儀式が始まろうとしていた。




