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第16話 王都へ行く、



フォルナが俺が起き次第準備をしてすぐに王都へ行くつもりだったと昼頃そう告げた。


「だから、起きたばかりのアルには悪いんだけどすぐに家を出て王都で暮らさなきゃいけない。ほんとは、アルが王都へなんか行きたくないって言ったらすぐにでも取りやめるつもりだったんだ。

実際のところ、僕が本気を出せば国から逃げる事は可能だし、慎ましい生活なら全然二人で森の奥でも生活できた。現に、今国から逃げてないっていうだけでこんな辺鄙なところで二人で暮らせていたしねえ。」


国から逃げるなんてすごい事をフォルナは当たり前のように選択肢に出してくる。フォルナの実力が垣間見えた。


「そうなのか。」


「でもそれは最終手段なんだあ。・・・敵を増やすのは良くない事だって、昔僕の師匠に言われてさあ。その時は刃向かうやつ全員殺せばいいんじゃない?って僕は言ったんだ。だって自惚れとかじゃなく僕にそこまでの力があることは分かってたの。」


いつものようなにこにことした笑顔で物騒な事を言うフォルナに怯える前に、初めて少し話してくれているフォルナの過去の方が気になった。


「でも、今ならわかるなあ。」


準備をしていた手を一旦止めて俺を見て蕩けるような笑顔を見せてくるフォルナに俺は答えが分からず見つめ返すしかなかった。


「もし、絶対そんなことはさせないけど、アルが危ない目にあったら、僕そんな目に合わせた自分を許せないもんねえ。」



赤面するしかなかった俺を責めないでほしい、というか、美形にそんなことを真っ直ぐ言われて無表情で耐えれる人がいるのだろうか。いや、無理だ。



「ま、そういう訳で極力国を敵に回すのは避けたかったんだあ。・・・・・よし、準備完了。アル行くよお、僕に摑まってえ。」


摑まってと言われながらフォルナにおとなしく抱き上げられる。俺はもう12歳になるのに抱き上げられるのは少し恥ずかしいけどまあ、フォルナの魔法で王都へひとっ飛びだろうからしょうがない、と自分に納得させる。


フォルナは背中にバックパッカーみたいな大きなリュックを背負っていて、プラス俺を抱き上げている。重くないのかなとは思うけど全然フラフラする事なく安定感がある。

安心して無意識に頭をフォルナに預けると空いている片方の手で頭から頬までゆっくりと撫でられた。ちょこっとくすぐったくて、でもなんか嬉しくていつもは全然そんな事しないのにフォルナの手に頭をすり寄せた。


最後に俺の頬をもう一度だけ撫でてさあ、行くよと号令がかかる。


フォルナの足元から眩い光が溢れてきてその光が体を侵食するようにどんどん上へと登ってくる。ちょっと怖くなってフォルナのローブを握りしめる手を強くする。フォルナの体が腰までなくなってくると俺の足もどんどん侵食され始めて思わず顔をフォルナの方に押し付けた。フォルナの手が俺の頭をポンポンしているのを感じる。



「アル、着いたよ。」




フォルナの声に顔を上げると、もうそこは鬱蒼とした森に建つ家の中ではなくて、


「いらっしゃい!今日はお肉が安いよ!」

「今日は夜のベルから劇を始めるよ!演目は人気の『王子と魔女』の話だよ!」

「あっちで可愛いお店ができたんですって!行きましょうよ!」


俺がフォルナと出会う前、6年間暮らしていた王都がそこにはあった。





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