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第九章 緑の魔手、その終焉

 長い地下通路(ちかつうろ)を進んでいくクロロたち。

 クロエの手に浮かぶ光魔法(ひかりまほう)【シャイン】だけを頼りに、一同は警戒(けいかい)しながら奥へと進んでいた。

 やがて――。

「……!」

 先頭を歩いていたクロエが足を止める。

 通路の先。

 先ほど見つけた微か(かすか)な明かりが、少しずつ強くなっていた。

「もうすぐみたいね」

「ああ」

 クロロが頷(うなず)く。

 そして一同は、その光へ向かってさらに進んでいった。

 ◇

 やがて通路を抜けると――。

「…………」

 クロロたちは思わず足を止めた。

 そこには、想像していたよりも遥(はる)かに巨大な地下空間が広がっていた。

 壁にはいくつものランタンが設置されており、その明かりが地下全体を照らしている。

 中央には――。

 まるで巨大な池のような貯水槽(ちょすいそう)。

 その周囲を囲むように、石造りの通路が伸びていた。

「ここが……地下貯水場(ちかちょすいじょう)……」

 クロエが辺りを見回す。

「かなり広いな……」

 クロロたちも周囲を警戒(けいかい)しながら、ゆっくりと中へ入っていく。

 その時。

「……ん?」

 クロロが池の中央へ目を向けた。

 何か巨大な影がある。

「アルス。あれ……」

「ああ……」

 近づくにつれ、その姿がはっきりしていく。

 それは――。

 巨大な一本の木だった。

 だが。

「…………!」

 アルスとメメリの表情が変わる。

「あれは……」

「デットリーフ……です」

 二人は同時に確信した。

 しかし――。

「でも……」

 メメリが巨大な木を見上げる。

「メメリが知っているデットリーフとは……少し違います」

「あたしが昔見た奴とも違うな」

 通常のデットリーフなら、上部には森の木々のように多くの葉が生い茂っている。

 だが――。

 目の前にある巨大なデットリーフ。

 その上部にあるのは葉ではない。

「花……?」

 クロロが呟(つぶや)く。

 まるで――。

 巨大な花の蕾(つぼみ)。

 そんな形をしていた。

 一同がそれを見上げていた――その時だった。

「とうとうここまで来てしまいましたか」

「――っ!?」

 突然。

 女性の声が地下空間へ響いた。

 一同は一斉に振り返り、武器を構える。

 巨大なデットリーフの根元。

 暗がりの中に――人影が立っていた。

 その人物はゆっくりと歩き出す。

「このまま、追ってこなかったら、そのまま逃がしてあげようと思っていたのに」

 ランタンの明かりが、その姿を照らした。

「…………!」

「あなたは……!」

 特に驚いたのは、メメリとビークルだった。

 その人物は――。

 ウィルハード家に仕えているメイドの一人。

「なぜおまえが此処(ここ)にいる⁉ リーエ‼」

 ビークルが声を上げる。

「リーエさん!」

 メメリも驚きながら呼びかけた。

「そこは危険です! その近くにはデットリーフが――」

「その心配はございません」

「……え?」

 リーエは静かに笑う。

 そして。

「何故(なぜ)なら――」

 巨大なデットリーフへ手を添えるようにして言った。

「この木は私だからです」

「…………?」

 クロロは意味が分からず眉(まゆ)をひそめる。

 しかし。

「……まさか」

 アルスが何かに気づいた。

「そのデットリーフ――突然変異(とつぜんへんい)だろ」

 すると。

 リーエは嬉しそうに笑った。

「そのと~り」

 そして。

「大正解です」

「やっぱりか……」

「でも――」

 リーエは続ける。

「ただの突然変異(とつぜんへんい)ではありませんよ」

 一同が警戒(けいかい)する中、リーエは巨大なデットリーフを見上げる。

「このデットリーフは、遥(はる)か昔に倒されたデットリーフが残した種から生まれたものです」

 その種は水へ落ち。

 長い年月をかけて水の流れに運ばれ――。

 やがて、この地下貯水場(ちかちょすいじょう)へと流れ着いた。

 そして。

 そこで根を張り。

 成長した。

「地上にいる者たちが生み出す負の感情」

 リーエは説明を続ける。

「それを目に見えない形で少しずつ吸収し続け――この木は、ここまで巨大に成長しました」

 アルスが険しい表情を浮かべる。

「デットリーフは、本来なら吸収した負の感情のエネルギーを木の実に溜(た)める。そして、それを他の悪星獣(あくせいじゅう)が喰(く)ってエネルギーにする……」

「その通りでございます」

 だが――。

 この場所には。

 その木の実を食べる悪星獣(あくせいじゅう)がいなかった。

 エネルギーは溜(た)まり続け。

 やがて限界へ近づいていった。

 そして。

「奇跡が起こりました」

「奇跡?」

「はい」

 リーエは笑う。

「この木は――自ら生み出した実を、自ら吸収する術(すべ)を身につけたのです」

 それによって。

 デットリーフは新たな進化を遂(と)げた。

 まず。

 今まで自らの意思では動かせなかった、鋭い牙(きば)を持つ蔓(つる)を自在に動かせるようになった。

 そしてさらに。

 大量のエネルギーを消費することで――。

「新たな生命を生み出す力まで手に入れたのです」

 その言葉を聞いたクロロが、リーエを見る。

「……なるほど」

「?」

「それで生まれたのが――お前ってわけか」

 するとリーエは。

 不気味に笑った。

「その通りでございます」

「…………!」

 一同に衝撃(しょうげき)が走る。

 リーエはデットリーフの周囲を歩きながら話を続ける。

「ですが――私を生み出したことで、この木は大量のエネルギーを失いました」

 デットリーフは弱体化(じゃくたいか)した。

 だからリーエは――。

 屋敷へメイドとして潜り(もぐり)込み。

 密かに負の感情からエネルギーを集め続けていた。

「ですが……あまりにも効率(こうりつ)が悪かった」

 苛立(いらだ)つように、リーエの表情が歪(ゆが)む。

 そこでリーエは――。

 大量の負の感情を生み出す方法を考えた。

 それが。

「まさか……」

 メメリの表情が曇る。

 リーエは笑った。

「あの誘拐(ゆうかい)事件です」

「――っ!」

 かつて。

 エメと娘が誘拐(ゆうかい)された事件。

 それを仕組んだのは――リーエだった。

 リーエは盗賊(とうぞく)たちを雇(やと)い。

 エメと娘を誘拐(ゆうかい)させ。

 二人を殺させるつもりだった。

 妻と娘を一度に失えば。

 夫は絶望(ぜつぼう)し。

 大量の負の感情を生み出す。

 そのはずだった。

 だが。

 嵐によって計画が狂った。

 夫は二人を助けるために命を落とした。

 本来。

 妻と娘を失い、負の感情を生み出すはずだった人物が先に死んでしまった。

 さらに――。

 盗賊(とうぞく)たちはリーエの指示を無視し。

 逃げた娘を殺した。

 リーエはエメまで死んだと思い。

 失敗した盗賊(とうぞく)たちを――後に自ら殺した。

 計画は失敗した。

 そう思っていた。

 しかし数日後。

 エメだけが生きていたことを知った。

 夫。

 そして娘。

 二人を失った悲しみと絶望(ぜつぼう)。

 エメからは――。

 リーエの予想通り。

 大量の負の感情が生み出された。

「これで、この木も間もなく完全に回復する」

 そう思った。

 だが。

 リーエは突然。

 メメリへ恐ろしい視線を向けた。

「――お前が来るまではな」

「…………え?」

「お前がこの屋敷へ来てから――」

 リーエの声に怒りが混じる。

「エメ様は徐々(じょじょ)に元気を取り戻していった」

「…………」

「生み出されていた負の感情も少なくなり――この木の回復は再び遅くなった」

 リーエにとって。

 メメリは――邪魔な存在だった。

 だから。

 昨夜。

 メメリを殺すつもりだった。

 しかし。

 またしても予想外のことが起こった。

「……あたしたちか」

 アルスが言う。

「はい」

 クロロたち三人が屋敷へ来たこと。

 それによってリーエは、簡単に動くことができなくなった。

 だから。

 まずクロロたちを始末し。

 その後でメメリを殺すことにした。

 最初に狙ったのは――。

 クロエとアルス。

 一番厄介(やっかい)そうな二人だった。

「だから……」

 クロエが睨(にら)みつける。

 リーエは。

 クロロが浴場(よくじょう)から出たと。

 わざわざクロエとアルスへ伝えた。

 二人が武器を持たず。

 無防備(むぼうび)になる浴場(よくじょう)へ入るように。

 だが。

「……ちょっと待って」

 クロエが何かに気づいた。

「兄さん」

「ん?」

「兄さんが浴場(よくじょう)から出た直後、誰かと会った?」

「いや……」

 クロロは首を振る。

「誰にも会ってないぞ」

「やっぱり……」

 もし。

 リーエがクロロを見ていないのなら。

 どうして。

 クロロが浴場(よくじょう)を出たことを知っていたのか。

 答えは。

 すでに浴場(よくじょう)へ潜(ひそ)ませていた――蔓(つる)。

「最初から……私たちを狙っていたのね」

「その通りです」

 しかし。

 リーエには二つの誤算(ごさん)があった。

 一つ。

 アルスが十二星具(じゅうにせいぐ)であり。

 人型(ひとがた)でも魔力(まりょく)で武器を作れること。

 もう一つ。

 クロエが脱衣所(だついじょ)へ短剣(たんけん)を用意していたこと。

 戦力差を悟ったリーエは。

 蔓(つる)を退却(たいきゃく)させた。

「そして……」

 デットリーフの回復もあと僅(わず)か。

 これ以上時間をかけたくなかったリーエは、次の方法を考えていた。

 その時。

 アルスとメメリの会話を偶然聞いてしまった。

 そこで。

 メメリも十二星具(じゅうにせいぐ)であることを知った。

 十二星具(じゅうにせいぐ)が二人。

 まともに戦えば――勝てない可能性がある。

 そこでリーエは。

 作戦を変えた。

「エメ様を直接連れ去ることにしたのです」

 翌朝。

 浴場(よくじょう)を調べていたクロロたちを。

 リーエは密かに見張っていた。

 クロロ。

 クロエ。

 アルスの三人が裏庭へ向かい。

 メメリが。

 エメとビークルへ秘密を明かそうとした時。

 リーエはチャンスだと判断した。

 裏庭の三人を襲(おそ)えば。

 メメリは必ずそちらへ向かう。

 そして。

 エメの周囲から戦える者がいなくなる。

「ところが……」

 リーエの表情が僅(わず)かに引きつる。

「ただの老人だと思っていた者が、まさかあれほど強いとは思いませんでした」

 一同がビークルを見る。

 クロロが訊(き)いた。

「ビークルさんって……なんでそんなに強いんですか?」

「昔、これでも格闘家(かくとうか)の家に生まれた者ですので」

「……それだけ?」

「それだけでございます」

「…………」

 リーエが少し苛立(いらだ)ったように口を挟む。

「話を戻してもよろしいですか?」

「あ……どうぞ」

 クロエが呆(あき)れたようにクロロを見る。

 ビークルに時間を稼がれ。

 さらにクロロとメメリまで駆けつけたことで。

 エメを連れ去るのは難しくなった。

 そこで。

 強引な方法を使い。

 ようやくエメをここまで連れてきた。

「…………」

 すべてを聞き終え。

 クロロたちは――怒りを隠せなかった。

 その中で。

 ビークルが静かに訊(き)く。

「エメ様はどこです」

 その声には。

 普段の穏やかさとは違う。

 強い意志が込められていた。

「ふふっ」

 リーエは笑う。

 そして。

 片手を上げる。

 まるで。

 デットリーフへ命令するように。

 ――ゴゴゴゴ……。

 巨大な蕾(つぼみ)が――。

 ゆっくりと開き始めた。

「…………!」

 花びらが広がる。

 その中心。

 そこにあったのは――。

 赤黒い光を放つ巨大な球体(きゅうたい)。

 ――ドクン。

 ――ドクン。

 脈打つように。

 不気味な光を放っている。

「……!」

 メメリが気づいた。

「エメ様!」

 その球体(きゅうたい)の中心。

 そこに――。

 エメが捕らえられていた。

「エメさん!」

 目を閉じ。

 意識を失っている。

「お前……エメさんに何をした!」

 クロロが怒鳴る。

 リーエは平然と答える。

「負の感情からエネルギーを集めるのが難しいのであれば――」

 そして笑った。

「直接いただけばよいのです」

「…………!」

「そんなことは絶対にさせません!」

 メメリの手に。

 巨大な魔力(まりょく)のハンマーが形成される。

 クロエも長剣(ちょうけん)を抜き。

 ビークルも構えた。

「もう少しなのです」

 リーエの身体が――変化を始める。

「邪魔は許しませんよ」

 両腕。

 そこに。

 浴場(よくじょう)で襲(おそ)ってきた蔓(つる)と同じ。

 鋭い牙(きば)の並ぶ口が現れる。

 その姿は。

 人間の形を残しながらも――植物の怪物。

 そして。

 ――バシャァァァッ!!

 貯水槽(ちょすいそう)の水面から。

 大量の蔓(つる)が飛び出した。

 すべてに。

 鋭い牙(きば)を持つ口がついている。

「アルス!」

「ああ!」

 アルスの身体が光に包まれ。

 巨大なスナイパーライフルへ姿を変える。

 クロロはそれを掴(つか)んだ。

「――サジット・スナイプ‼」

 クロロの髪と瞳(ひとみ)が。

 朱色(しゅいろ)へと変化する。

「行きますよ」

 リーエが笑う。

 そして。

 大量の蔓(つる)が――一斉に襲(おそ)いかかってきた。

「散れ!」

 クロロの声と同時に。

 全員が別方向へ跳ぶ。

 ビークルは襲(おそ)ってきた蔓(つる)を拳(こぶし)で打ち払い。

 蹴(け)りで粉砕(ふんさい)する。

 メメリは巨大な魔力(まりょく)のハンマーを振り回し。

 次々と蔓(つる)を叩き潰(つぶ)す。

 クロエは長剣(ちょうけん)で斬(き)り裂き。

 クロロはサジット・スナイプで援護(えんご)する。

 そんな中――。

 リーエは。

 少し離れた場所から。

 楽しそうに戦いを眺めていた。

「…………!」

 それを見たクロエが。

 苛立(いらだ)ったように歯を食いしばる。

「そこで見てるだけなんて――!」

 地面を蹴(け)る。

「気に入らないわね!」

 一気にリーエへ斬(き)りかかる。

 ――ガキィン!!

 だが。

 リーエは。

 その剣を――片手で受け止めた。

「なっ――!」

「ふふっ」

 そして。

 クロエの身体を。

 強引に上へ投げ飛ばした。

「きゃっ!」

 天井へ向かって飛ばされる。

 だが。

「…………っ!」

 クロエは空中で身体を捻(ひね)る。

 両足を天井へつけ――。

 そのまま。

「はぁぁぁっ!」

 強く蹴(け)った。

 今度は。

 リーエへ向かって一直線に急降下する。

「!」

 リーエも地面を蹴(け)り。

 クロエへ飛び上がる。

 ――ドガァァァン!!

 空中で。

 二人が激突(げきとつ)した。

 そして。

 ほぼ同時に地上へ着地。

 直後。

 ――ガキン!

 ――ギィン!

 凄(すさ)まじい近接戦(きんせつせん)が始まった。

 クロエの長剣(ちょうけん)。

 リーエの両腕。

 互いの攻撃が。

 高速でぶつかり合う。

「クロエ!」

 クロロも照準(しょうじゅん)を合わせ。

 ――ズドン!

 リーエへ弾丸(だんがん)を放つ。

 しかし。

「ふふっ」

 リーエは。

 クロエと戦いながら――。

 その弾丸(だんがん)をかわした。

「マジかよ……!」

 クロエとクロロ。

 二人を同時に相手にしてなお――。

 リーエは苦戦する様子すら見せていなかった。

 だが。

「…………」

 そんな中。

 クロエは。

 戦いながらも――。

 少しずつ。

 長剣(ちょうけん)へ魔力(まりょく)を溜(た)め続けていた。

 ――ガキン!!

 リーエの右腕を受け止める。

 反対から左腕。

 それをかわす。

 再び踏み込み――。

「…………今!」

 クロエの目つきが変わった。

 振り下ろされた片腕を剣で受け流し。

 その勢いのまま身体を回転させる。

「はぁっ!」

 ――ガキィィン!!

 まず右腕。

 さらに。

 ――ギィン!!

 左腕。

 リーエの両腕を――大きく弾いた。

「――っ!?」

 身体の前が。

 完全にがら空きになる。

「もらった!」

 クロエの長剣(ちょうけん)を。

 激しい風が包み込む。

「――テンペスト・スラッシュ‼」

 ――ブォォォォォォン!!

 剣から放たれた斬撃(ざんげき)が。

 巨大な竜巻(たつまき)となって。

 リーエへ直撃した。

 ――ズガァァァン!!

「ぐぅぅっ!」

 リーエが後方へ吹き飛ばされる。

 だが。

「メメリ!」

「はいっ!」

 飛ばされた先。

 そこには。

 ハンマーを構えたメメリがいた。

「えぇぇぇぇいっ!!」

 ――ドゴォォォン!!

 リーエの身体を。

 別方向へ叩き飛ばす。

 そして。

 その先には――。

「…………」

 ビークル。

「はっ!」

 ――ドガァッ!!

 強烈な蹴(け)り。

 再びリーエが宙を舞い。

 先ほどまで立っていた辺りへ叩きつけられた。

「ぐ……」

 ふらふらと。

 リーエが立ち上がる。

「お……のれぇ~……!」

 その瞬間。

「――そこだ」

 ――ズドン!!

 クロロの放った弾丸(だんがん)が。

 リーエの心臓辺りを――貫(つらぬ)いた。

「――――っ」

 身体に穴が開く。

 そして。

 ――ドサッ。

 リーエは前のめりに倒れた。

「…………」

 誰も。

 すぐには構えを解かなかった。

 だが。

 どれだけ待っても。

 リーエは動かない。

「……終わった、のか?」

『……みてぇだな』

 クロエも。

「少なくとも……もう動く様子はなさそうね」

 一同は。

 ひとまず戦いが終わったのだと思った。

 次は。

 この巨大なデットリーフ。

 そして。

 エメをどう助けるか。

「下手に攻撃したら、エメさんまで巻き込む可能性があるわ」

『そうだな。あの赤黒い球が何なのかも分かんねぇ』

「なら……どうすれば……」

 その時だった。

「――ふふっ」

「…………?」

 微か(かすか)な笑い声。

「ふふふふ……」

「――っ!?」

 全員が一気に警戒(けいかい)する。

「そんな簡単に――」

 地下空間へ。

 リーエの声が響く。

「私を倒せると思っていたのですか?」

「なに!?」

 倒れていたリーエの身体が。

 ――ドロッ。

 溶け始める。

 腕。

 脚。

 胴体。

 すべてが。

 ドロドロの液体となり――。

 やがて。

 跡形もなく消えた。

「どういうことだ……?」

 すると。

 ――ミシッ。

 巨大なデットリーフの根元が蠢(うごめ)く。

「……!」

 そこから。

 人影が現れる。

 一人。

 また一人。

 さらに。

 また一人。

「……嘘だろ」

 クロロが呟(つぶや)く。

 そこに現れたのは――。

 何人ものリーエ。

 その中の一体が笑った。

「言ったはずですよ」

「…………」

「この木は私ですよ――と」

 クロエが悔しそうに長剣(ちょうけん)を握り締める。

「つまり……」

 巨大なデットリーフを睨(にら)みつける。

「あの木を倒さないと、あなたも倒せないのね」

 リーエは。

 ニヤリと笑った。

 その時。

 ――ドクンッ。

 デットリーフの花にある。

 赤黒い球体(きゅうたい)の光が――僅(わず)かに強くなる。

「エメ様……!」

 リーエが嬉しそうに言う。

「あともう少しです」

「……っ!」

 一同に緊張と焦りが走る。

「アルス!」

『なんだ!』

「デットリーフに弱点はないのか!?」

『ある!』

 アルスが答える。

『デットリーフの木の内部――中心に、コアみてぇなものがある!』

「コア?」

『ああ! それを壊せれば、デットリーフを倒せるはずだ!』

「だったら――!」

 クロロはサジット・スナイプを構える。

「先手必勝(せんてひっしょう)だ!」

 巨大なデットリーフの中心へ照準(しょうじゅん)を合わせ。

 魔力(まりょく)を集中させる。

「――ペネトレイト・インフェルノ・バレット‼」

 ――ズドォォォォォン!!

 弾丸(だんがん)が。

 デットリーフへ直撃。

 だが。

「…………え?」

 煙が晴れる。

 そこには。

 ほとんど傷ついていないデットリーフ。

『なっ……!?』

 弾丸(だんがん)で削れたのは。

 表面の僅(わず)かな部分だけ。

 しかも。

 ――ズズズ……。

「再生……した……」

 進化したデットリーフの表面は。

 異常なほど硬くなっていた。

 クロロの必殺技ですら。

 表面を僅(わず)かに削るだけ。

 そして。

 その傷すら――。

 すぐに再生してしまった。

「ふふふふ……」

 リーエたちが笑う。

「あなたたちでは――ここまで進化した私は倒せません」

「…………」

「つまり――ここで終わりです」

 リーエが巨大なデットリーフを見る。

「残念です。私の完全復活を見ていただけないなんて」

 そして。

「申し訳ありませんが――終わらせていただきます」

 次の瞬間。

 何人ものリーエが――一斉に襲(おそ)いかかってきた。

「来るぞ!」

 クロロたちは反撃する。

 だが。

 一体を倒しても。

 その後ろから。

 二体。

 三体。

 さらに。

 次々と現れる。

「多すぎる……!」

 圧倒的(あっとうてき)な数。

 そして。

 一体一体が。

 先ほどまで戦っていたリーエと同等の力を持っている。

「ぐっ――!」

 ――ドガッ!!

 クロロが吹き飛ばされる。

「兄さん!」

 クロエも。

「きゃあっ!」

 地面へ倒される。

 ビークルも。

 次々と襲(おそ)ってくるリーエを捌(さば)ききれず。

 その場へ倒れ込んだ。

「…………っ!」

 それでも。

 一人。

「まだ……です……!」

 メメリだけが。

 ふらつきながら立ち上がった。

「メメリ……!」

「まだ……エメ様を……助けていません……!」

 ハンマーを握り締め。

 再び立ち向かう。

 だが。

「無駄ですよ」

 ――ドガァッ!!

「きゃあぁっ!」

 メメリの身体が。

 クロロたちの前へ飛ばされる。

「メメリ……!」

 倒れたクロロが名前を呼ぶ。

 メメリは。

 なんとか膝(ひざ)をつく。

 そんな彼女へ。

 リーエは嘲笑(あざわら)うように言った。

「お前が自分で言っていたように――」

「…………」

「お前がここへ来なければ、こんなことにはならなかったかもしれませんね」

「――っ」

 メメリの動きが止まる。

(…………確かに)

 自分が来なければ。

 エメは。

 負の感情を生み出し続けていたかもしれない。

 リーエも。

 こんな行動には出なかったかもしれない。

(メメリが……ここに来なければ……)

「――そんなことない」

「……!」

 メメリが振り返る。

 クロロが。

 サジット・スナイプを支えに。

 ゆっくりと立ち上がっていた。

「そんなことない」

 もう一度。

 強く否定する。

「メメリが来たから――エメさんは元気を取り戻したんだ」

「…………!」

「それに――」

 あの夜。

 中庭で話したことを思い出す。

「メメリは、誰にでも元気を与えられる――花畑みたいな存在なんだ」

「――――っ」

「そんな子が――」

 クロロは。

 まっすぐにメメリを見る。

「来ちゃいけない場所なんて、あるわけないだろ」

「クロロ……様……」

 クロロは。

 メメリのそばへ歩み寄る。

 そして。

 その肩へ手を置いた。

「出会ってからの時間は短くても、メメリが優しい奴だってことくらい、俺は知ってる」

「…………」

「メメリがエメさんをどれだけ大事に思ってるのかも知ってる」

 そして。

「だからこそ――」

「メメリの大事なものは、俺も一緒に助けてあげたいんだ」

「…………!」

「くだらない」

 リーエが吐き捨てる。

 クロロは。

 そんなリーエへ視線を向ける。

「お前にとっては、くだらないのかもしれない」

「…………」

「でも――」

「俺たちにとっては、とても大事なものなんだよ」

「…………」

 メメリが。

 ゆっくりと立ち上がる。

「クロロ……様……」

 クロロは。

 何も言わず。

 ただ――笑顔を返した。

 その様子を見ながら。

 クロエも。

 ビークルも。

 再び立ち上がる。

 二人は。

 そんなクロロとメメリを見て――。

 静かに微笑んだ。

 そして。

 クロロとメメリは。

 リーエを見据える。

「絶対に――」

「はい!」

「エメさんを助ける!」

「エメ様を必ず助けます!」

「その願いが――叶うことはありませんがね」

 リーエたちが。

 再び襲(おそ)いかかる。

 戦闘(せんとう)が再開された。

 だが。

 今度のクロロは――。

 先ほどまでとは違った。

 戦いながら。

 何度も。

 デットリーフの花。

 そして。

 エメを閉じ込めた赤黒い球体(きゅうたい)を見ていた。

「アルス」

『なんだ?』

「……一つ、試したいことがある」

『作戦か?』

「ああ」

 クロロは弾丸(だんがん)を放ちながら言う。

「デットリーフは今、エメさんから直接エネルギーを吸収してる」

『ああ』

「だったら――」

「あの球体(きゅうたい)は、デットリーフの内部にあるコアへ直接つながってるんじゃないか?」

『…………!』

 アルスが息を呑(の)む。

『あり得る……』

 だが。

『でもクロロ。あの球を狙うにしても――』

「分かってる」

『あたしの力じゃ、たとえ真上から撃ったとしても――エメごと貫(つらぬ)いちまうかもしれねぇ』

「だから撃たない」

『なに?』

「あの球体(きゅうたい)は、メメリと一緒に破壊(はかい)する」

『メメリと?』

「ああ」

 そして。

「エメさんを救出する」

 クロロの目つきが変わる。

「そのあと――」

「アルス。真上からデットリーフを撃ち抜け」

『…………』

 一瞬。

 アルスは黙る。

 そして。

『……分かった』

「アルス……」

『クロロ。あたしはお前を信じる』

「ありがとう、アルス」

 その瞬間。

 クロロの顔つきが――変わった。

「…………!」

 それを見た。

 クロエとビークル。

 二人には。

 クロロが何を考えているのかは分からない。

 だが。

 何か作戦がある。

 それだけは――分かった。

「ビークルさん!」

「はい!」

 二人は同時に動く。

「はぁぁぁっ!」

 クロエが長剣(ちょうけん)を大きく振るい。

 クロロの前にいたリーエたちを薙(な)ぎ払う。

 さらに。

 ビークルも。

 拳(こぶし)と蹴(け)りで。

 別方向のリーエを吹き飛ばしていく。

 クロロの前に。

 一本道ができる。

「クロエ! ビークルさん! ありがとう!」

 礼を言いながら。

 クロロは――真っ直ぐ駆け出した。

 目指す先は。

 巨大なデットリーフ。

 その花にある。

 赤黒い球体(きゅうたい)。

「行かせません!」

 リーエたちが追おうとする。

「行かせるのはこっちよ!」

 クロエが立ちはだかる。

「ここはお任せください」

 ビークルも続く。

 クロロは。

 振り返らない。

 デットリーフのすぐ近くまで走り。

 地面を――強く蹴(け)った。

 ――ドンッ!!

「はぁっ!」

 一気に。

 空中へ跳び上がる。

 赤黒い球体(きゅうたい)へ。

 さらに近づく。

「アルス!」

『ああ!』

 その瞬間。

 クロロは。

 アルスとの星具(せいぐ)状態を解除(かいじょ)した。

 サジット・スナイプが光に包まれ。

 消える。

 そして。

 クロロは空中で身体を捻(ひね)り。

 地上へ顔を向けた。

「――メメリ!」

「!」

 呼ばれたメメリは。

 空中のクロロを見上げる。

「クロロ様……?」

「…………」

 クロロは。

 笑った。

 そして。

 手を伸ばす。

「一緒に助けよう!」

「――――!」

 メメリの瞳(ひとみ)が。

 大きく開く。

 助ける。

 誰を。

 そんなことは――聞く必要などない。

「…………はい!」

 そして。

「はいっ! クロロ様!」

 メメリの身体から。

 強い光が溢(あふ)れ出す。

 胸元へ手を当て。

 クロロを見つめる。

「我! 十二星具(じゅうにせいぐ)が一人! メメリ・エアリーズ‼」

 その声が。

 地下空間へ響き渡る。

「星の導きにより――あなたを主人と認め、契約(けいやく)をします‼」

 ――パァァァァァァァッ!!

 眩(まばゆ)い光が。

 メメリを包み込む。

 クロロは。

 その光へ向かって手を伸ばす。

 そして。

 名前を叫んだ。

「――スレッジ・ホーン‼」

 メメリを包んでいた光が。

 クロロの手へ集まる。

 同時に。

 クロロの姿が変化する。

 髪が。

 瞳(ひとみ)が。

 メメリとの契約(けいやく)に呼応(こおう)するように。

 その色を変えていく。

 そして。

 その手には――。

 とてつもなく巨大なハンマー。

 おひつじ座の十二星具(じゅうにせいぐ)。

 メメリ・エアリーズの真の姿。

【スレッジ・ホーン】

「…………!」

 クロロは。

 両手で巨大なハンマーを握り締める。

『クロロ様!』

「ああ!」

 クロロは。

 スレッジ・ホーンを――高く振り上げた。

「うぉぉぉぉぉぉっ!!」

 ありったけの魔力(まりょく)を。

 巨大なハンマーへ流し込んでいく。

 ――ゴゴゴゴゴゴ……!

『クロロ様!』

「絶対に――助ける!」

 そして。

 赤黒い球体(きゅうたい)へ向かって。

 一気に突撃する。

「――グランド・メテオ・クラッシュ‼」

 ――ドゴォォォォォォォォン‼

 スレッジ・ホーンが。

 赤黒い球体(きゅうたい)へ直撃。

 だが。

 ――ギギギギギ……!

「ぐっ……!」

 壊れない。

 さすがに。

 球体(きゅうたい)も頑丈(がんじょう)だった。

「その程度で!」

 リーエが笑う。

「壊れるわけがありません!」

「…………っ!」

 それでも。

 クロロは。

 ハンマーを離さない。

「メメリ!」

『はいっ!』

「もっとだ!」

『はいっ!!』

 二人は。

 さらに力を込める。

「うぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

『はぁぁぁぁぁぁぁっ!!』

 ――ギギギギギギ……。

 そして。

 ――ピシッ。

「…………?」

 小さな亀裂(きれつ)。

「なっ……!?」

 リーエが目を見開く。

 ――ピシ。

 ――ピシピシッ。

 亀裂(きれつ)が。

 次々と広がっていく。

「そんな……!」

「まだだぁぁぁぁぁっ!!」

『クロロ様ぁぁぁぁぁっ!!』

 最後の力を振り絞る。

 そして。

「これで――!」

『終わりですっ!!』

 ――バキィィィィィン‼

 ついに。

 赤黒い球体(きゅうたい)が砕け散った。

「――――っ!?」

 中から。

 力を失ったエメの身体が投げ出される。

「エメさん!」

 クロロは。

 すぐにスレッジ・ホーンとの星具(せいぐ)状態を解除(かいじょ)する。

 そして。

 その身体を――抱きかかえた。

「……っ!」

 エメを守りながら。

 すぐにその場から離れる。

「エメ様!」

 ビークルの表情に。

 安堵(あんど)が浮かぶ。

「ですが!」

 リーエが叫ぶ。

「それだけでは――私を倒すことは――」

 そこまで言って。

 リーエの言葉が止まった。

「…………?」

 ゆっくり。

 上を見る。

「な……」

 そして。

 顔色が変わる。

 巨大なデットリーフの――真上。

 そこには。

 魔力(まりょく)で形成したスナイパーライフルを構える――。

 アルス。

「――アルス!?」

 アルスは。

 すでに照準(しょうじゅん)を合わせていた。

 先ほどまで。

 赤黒い球体(きゅうたい)があった場所。

 その真下。

 木の内部。

 そこに――。

 ――ドクン。

 ――ドクン。

 赤く光る。

 デットリーフのコア。

 クロロの予想通り。

 球体(きゅうたい)は。

 コアへ直接つながっていた。

 そして。

 エメも。

 球体(きゅうたい)も。

 もうない。

「へっ……」

 アルスが笑う。

「やっぱり直接エネルギーを流してるだけあって――真上はガラ空きだな」

「――っ!」

 リーエの顔から。

 余裕が消える。

「待て……!」

 アルスが。

 照準(しょうじゅん)を微調整(びちょうせい)する。

「やめろ!」

 銃口(じゅうこう)の先。

 赤く輝くコア。

「アルス・サジタリアス!」

「遅ぇよ」

「やめろぉぉぉぉぉぉっ!!」

 アルスは。

 不敵(ふてき)に笑った。

「――チェックメイト」

 ――ズドォォォォォォン‼

 弾丸(だんがん)が。

 一直線に。

 デットリーフのコアを撃ち抜いた。

「――――っ!?」

 リーエの身体が。

 大きく震える。

「そん……な……」

 身体の端から。

 光の粒となって崩れ始める。

「いや……」

「…………」

「私は……!」

 それでも。

 消滅(しょうめつ)は止まらない。

「私はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 絶叫と共に――。

 リーエの身体は。

 完全に消滅(しょうめつ)した。

 同時に。

 周囲にいたリーエたちも。

 次々と。

 光の粒となって消えていく。

 一体。

 また一体。

 そして。

 ついには。

 一人もいなくなった。

 その時。

 ――ミシ……。

 巨大なデットリーフから。

 音が響く。

 先ほどまで。

 あれほど禍々(まがまが)しい力を放っていた巨大な木。

 その幹(みき)が。

 急速に干からび。

 巨大な花がしおれ。

 枝も。

 根も。

 次々と枯れていく。

 そして。

 まるで。

 長い年月を一瞬で迎えたかのように。

 巨大なデットリーフは。

 枯れるように――。

 ゆっくりと消滅(しょうめつ)していった。

 ◇

「…………」

 静寂(せいじゃく)。

 先ほどまでの戦いが。

 嘘だったかのように。

 地下空間が静まり返る。

「……終わった」

 クロエが呟(つぶや)く。

「…………ああ」

 エメを抱えたクロロも。

 大きく息を吐いた。

 ようやく――。

 すべてが終わったのだ。

「クロロ!」

 アルスが駆け寄る。

「アルス!」

「うまくいったな!」

「ああ!」

 そして。

 星具(せいぐ)状態を解除(かいじょ)したメメリも。

 急いで駆け寄った。

「エメ様!」

 クロロ。

 アルス。

 メメリ。

 三人は。

 クロエとビークルのもとへ合流する。

「エメ様……!」

 メメリとビークルが。

 すぐにエメの安否(あんぴ)を確認する。

「エメ様」

「…………」

「エメ様……?」

 その時。

「…………ん」

「!」

 僅(わず)かに。

 エメの瞼(まぶた)が動いた。

 そして。

 ゆっくりと。

 目を開ける。

「…………」

 まだ意識がはっきりしないのか。

 ぼんやりと周囲を見る。

 そして。

「……メメリ……?」

「――っ!」

「ビークル……?」

「はい。エメ様」

 二人の姿を見て。

 エメは。

 ゆっくりと上体を起こした。

「ここは……」

「エメ様ぁ……!」

「え――」

 次の瞬間。

 メメリが。

 エメへ抱きついた。

「よかった……!」

 涙が。

 次々と溢(あふ)れる。

「本当に……よかったです……!」

「メメリ……」

「よかった……よかったです……!」

 何度も。

 何度も。

 その言葉を繰り返す。

「…………」

 エメは。

 泣きながら自分へ抱きつくメメリ。

 そばにいるビークル。

 そして。

 少し離れたところにいる。

 クロロ。

 クロエ。

 アルス。

 それを見て。

 今の状況を察した。

 そして。

 優しく微笑む。

 メメリの頭へ手を置き。

 そっと撫(な)でた。

「心配をかけてしまったみたいね」

「エメ様ぁ……!」

「ごめんなさい。みんなに心配をかけたわね」

 ビークルは。

 静かに頭を下げる。

「何より――」

 穏やかな声。

 だが。

 その表情には。

 確かな安堵(あんど)が浮かんでいた。

「ご無事で何よりでございます、エメ様」

「……ありがとう、ビークル」

「いえ」

 その様子を。

 クロロ。

 クロエ。

 アルスは。

 少し離れたところから――。

 静かに微笑みながら見守っていた。

 やがて。

 エメは。

 泣き続けるメメリの頭を撫(な)でながら。

 穏やかに口を開いた。

「それじゃあ――」

「……?」

「お屋敷に帰りましょうか」

「…………!」

 メメリは。

 涙で濡(ぬ)れた顔を上げる。

「…………はい」

 涙を拭(ぬぐ)いながら。

 最後には――。

 笑顔で。

「はいっ! エメ様!」

 そう答えるのであった。

激しい戦いの末、ついにデットリーフとリーエを打ち破ったクロロたち。

すべてが終わったその先で、エメとメメリはそれぞれの“帰る場所”と向き合っていく――。

次回、第十章「帰る場所、旅立つ場所」。別れと新たな旅立ちの時が訪れる。


第九章まで読んでいただき、本当にありがとうございます!

ウィルハード邸で続いていた異変も、ついに大きな決着を迎えました。

クロロ、クロエ、メメリたちの戦い。

リーエの変異。

そしてデットリーフと、囚われていたエメ――。

今回はかなり大きく物語が動く章となりました。

戦闘についてでも、キャラクターについてでも、

「ここが印象に残った」

「この展開には驚いた」

「このキャラの気持ちが気になる」

など、感じたことがあればぜひ感想で聞かせてください!

皆さんがどの場面を一番印象に残ったと感じたのか、とても気になっています。

そして次回、第十章では戦いの後に残されたものと、それぞれが選ぶ道を描いていきます。

最後まで見届けていただけると嬉しいです!

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