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風のロッカ 星の旅  作者: 大石次郎


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ロングフットの復活 3

火のグランジェムを宿す、原石は少し意外な所にありました。


かつて魔神に滅ぼされ無人になったという紫土(むらさきつち)の島に聳える、この世で最も高い山、レキ山の山頂付近にある火の魔神の遺骸の封じられた廟です。


転送門等は無かったので、丸儲け号で山頂まで来た僕らはかつてはバルタンの神官が管理していたはずですが、今ではすっかり忘れられた遺跡のように荒廃した様子のレキ廟の前に来ていました。


同行者はバルタンのライノンさん、オーシャンピープルのズーレアさん、ケルピー使いで野伏の頭目の娘ユシャの3名でした。


「とんだ回り道だ。古代の魔神の墓を荒らすハメになるとはね」


「ユシャさん、ケルピーは備えておきましょう。わたくしも力を重ねます」


「うん! ウチ、頑張るっ」


ユシャが指輪に集中してケルピー達を召喚すると、ズーレアさんがそこに氷に力を与え、氷の鎧を纏った姿へと変わりました!


「おチビ達も備えな!」


「はいっ」


「しゃ!」


「よ~し」


僕らの防具は氷河シリーズ。武器は僕とオリィは氷の武器を失くしていたのでそれぞれ水の属性の渦潮のブーメランと珊瑚のキャッチグローブ、大海の手槍を装備しています。

マイサはマナ消費は多そうですが、冬のワンドと新たに購入した水属性の泡沫のワンドを二刀流で構えていました。


ジェミニクレストで廟の扉の封印を解き、僕らは中へと入ります。


陰火(いんか)の燈台が奥まで点ってゆきます。あちこち崩れ、荒れた廟は星の神の社と同じでそんなに広くはなく、すぐに奥まで着いてしまいます。

そこには、


「これはマズいですね・・」


「いや起きるだろ・・」


「刺さってるね・・」


巨人のような魔族の上半身の骨が横たわり、胸部に柱状にまでは圧縮された火のジェム原石が突き刺さっていました。


「管理者の我らが不在の2000年の間、こうして封じつつグランジェムの生成をしていたワケか。さすが神、良い合理性だ」


「でも一部、お目覚めになられたようですよっ?」


遺骸から頭部と両腕の骨のみが切り離され、負の炎を纏って宙に浮かび上がりました!


「神ノ下僕共カッ!」


言い放ちつつ、負の炎の火球を連打してくる魔神!


「抑えて!!」


氷のケルピー達をけし掛けて連打を弱めさせる1体に乗ったユシャ。

その隙にオリィとマイサは守備魔法を、僕は飛行手段の無い僕ら3人にエアフットの魔法を掛けます。


ライノンさんは猛然と大鎌で右腕に打ち掛かり、ズーレアさんはバインドの魔法で左腕を捉えましたっ。


僕とオリィも続き、マイサも2本のワンドにマナを溜めます。


「・・ドレ程経ッタ? 一度オ前達ノ世界ハ滅ビテイタナ? モウ再生シタノカ? ホウ、マタ上位種族ヲ復活サセタノカ? かかかかっっ、マタ滅ビルダロウ。ソレハ、オ前達ガ招イタコトダ。イヤ、ソレガオ前達ノ望ミデハナイノカ? 気ニ入ラナイノダロウ、人間ガ。恐レテイルナ? かかかかっっっ」


「魔族の言葉に惑わされるなっ! 付け込まれるぞっ?!」


「わかってらぁっ!」


負の炎の息を大海の手槍で払って、聖水の小瓶を骨の横顔に投げ付けて割り、負の炎をいくらか祓って怯ませるオリィ!


「凍て付いて!」


何度目かのフロストガスの魔法で一時的魔神の頭部を凍結させるマイサ。


それを氷のケルピー達が連続で蹴り付けてゆき、ヒビを入れました。


僕は負の火炎弾を1発食らってしまって出遅れたのもありますが、渦潮のブーメランにマナを溜めていました。


「都合よく丸く収まる何て思ってないよっ!!」


ブーメランが魔神の頭部を両断すると、


「かかかかっっっ、最後ニ呪イヲ遺シテヤッタゾ? 神ヨ! ろんぐふっとハ復活スル!!」


頭部だけでなく、腕も身体の骨も、魔神の遺骸は消滅してゆきました。


「忌々しいヤツだ」


「ケルピー達、後で浄めないと!」


「皆さん大丈夫ですか? ヒールしましょ~」


手当てが済み、僕はジェミニクレストに最後のグランジェムを吸収しました。


神の印は目映く輝きます。


「その印は、神の涙を固めた物とも聞く。おチビ・・いや、使徒ロッカよ。もう復活の是非を問う段でもない。役目を果たすといい。未来のことは、未来のヤツらが勝手するだろうさ」


「はい」


こうして、灰土の地へ向かう準備は整いました。



のですが・・


僕らは緑土大陸のこの世界で最大の宗教都市で国際外交の場になることも多い、聖都リーラビアラに来ていました。


豪奢な控え室で、世界中の野伏達が素材を集めて造ってくれた伝説級の防具、獅子鷹(ししたか)シリーズを身に纏った僕らは、居心地の悪いので端の方に置いた長椅子に3人で並んで座っていました。


「何で俺らが演説しなきゃならないんだよっ」


「うーん、当事者だから?」


「船に戻りたい賞・・」


そう、ノーム達が積極的にフェザーフット社会と交渉した結果、

ドワーフ達が小出しに工学文明を広めた結果、

オーシャンピープルやバルタンが身を隠すことに関心が薄かった結果、

ワードラゴン達が復活早々に自分達の遺跡付近まで進出してしまっていた領主達の私兵団を片っ端から撃退した結果、


古代種族達の復活の噂は広まり、各国の中枢にはもう筒抜けとなってしまったのです!


エルフだけは人前に出て来な過ぎて未確認状態のようですが・・


と、扉がノックされました。気配は2つ、2人ともタダ者じゃないです。


「お、獅子鷹の装束! 似合ってるじゃないか。こういうのはハッタリが大事だ。使徒は特別と思わせたら勝ちさ」


懐かしいタクミさんです。ロングフット神殿へも同行予定で、黒い冥馬(ナイトメア)シリーズの防具を身に纏っています。


「嫌過ぎですけど・・」


「この街、御飯にお肉も魚も無いんですよっ? 乳製品も!」


「ダリぃよっ、タクミさ~ん」


「まぁ何とかなるさ! それより紹介するぜ? おい・・この子達が使徒の3人だ。あんまり脅すなよ?」


「人を輩のように言うな」


タクミさんに促されてヌッと入って来たのは大柄な、ワードラゴン族の戦士でした。


「ゼオ・カリッジドラムだ。穢れし灰土の地へ同行する。小人の寄り合い等はさっさと済ませるといい、時間の無駄だ」


「・・・」


身も蓋も無い方ですね。


というワケで僕ら3人はリーラビアラの大聖堂に併設されて議場の演壇に立っていました。


卓には拡声結晶(かくせいけっしょう)を先端に付けた棒状の器機が取り付けられています。

議場席には各国の首脳達がズラリ! ほぼ全員不満顔ですっ。


「ちょっと、試験試験」


拡声結晶の具合を確認します。問題は無さそう。


「え~、こんにちは。ロッカ・グラスクラウンです」


「マイサ・ルナポートです」


「お、オリィ・しゃんだ・・サンダーロックっ」


「僕らはレイミーアズス神様の使徒です。古代の7大種族を復活させて回っていて、残るはロングフット族のみです」


落ち着いて話せたのはここまででした。


「自分達が何をしているのかわかっているのか?!」


「世界を滅ぼした者達だぞっ!」


「早速各地で影響が出ているではないかっ」


「神は我々フェザーフットだけではこの世界は治めきれないとっ?」


「穢らわしい!!」


「狂言ではあるまいなっ」


「古代種族達の思惑は何だ??」


「我らを再び奴隷にするのではないか?!」


・・収拾がつかないです。


僕は力を高めたジェミニクレストを掲げました。


閃光! 地水火風マナが溢れ、議場の木材は蘇って生い茂り、窓からそよいだ風がつむじ風に変わり、水差しの水から水の精霊(ウンディーネ)が、パイプ煙草の灰から火の精霊(サラマンダー)が飛び出し、ぶつかり合い出し議場は大混乱になりました。


「ロッカ! ヤバいってっ」


「御破算賞・・」


「大丈夫。皆さん! 世界は神より賜ったマナに満ちています。僕らフェザーフットだけでは、その秘密の全てを解き明かせません。進んで奴隷に戻るつもりはありません。しかし、ノームの知恵が、オーシャンピープルの祝福が、ドワーフの技が、エルフの祈りが、バルタンの勇猛が、ワードラゴンの力強さが、僕らに新たな道を示してくれるはずです。呪われたロングフットでさえ、役割はあるはずです!」


「そ、そーだ! 完全同意するぜっ、海路も浮遊島も柱の森も、そろそろ管理利かなかったろ?」


「ゴーレム、巨人、機械、飛行船、火山に竜達! 専門家は必要だよっ」


「まずは彼らや彼女達の生きてゆける領分を認めるべきではないでしょうか? 僕らは借り物で暮らしてたところがあったはずです。それに、殺るか殺られるかになっては相手も必死でしょう」


ここからは大変な議論になりましたが、声が枯れる頃には各国首脳達をうんざりさせて、一先ず保留にまで持ち込むことはできました。

これで精一杯!!


今までで一番手強かったですね・・

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