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風のロッカ 星の旅  作者: 大石次郎


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ワードラゴンの復活 後

対応した装備がないとどうしようもない高熱とガス濃度の神殿内をマイサが操るブリキの鳥が先導してゆきます。


僕らはさすがに赤毛種の騾馬では無理なのでモモルさんが腕輪の中から呼びだした耐熱型の機械蟲に2人1組で乗って移動していました。

この機体は連射はできませんが冷凍光線も撃てるので戦闘力も申し分ありませんっ。

翼が嵩張るバルタンの方達は居心地悪そうでしたが。

ライノンさんは御付きに仲間を3人連れていました。シィガさんの御付きの2人は神殿近くの野営地で騾馬と一緒に待機です。


「道が明らかなら飛んだ方が早い。地ベタをドワーフの機械に乗ってチンタラ進んでるとムズムズするよ」


ボヤくライノンさん。


「全員で動く必要がある、偵察もあった方がいいだろう?」


宥めるシィガさん。この神殿は時期は日によって通れる道が変わるので現状と地図を見比べて、神経を使ってるようでもありました。


「あ、もうダメだ」


不意にマイサが呟くと、ブリキの鳥は宙で崩れて通路の一部に流れ込んでいた溶岩に墜ちて溶けてしまいました。


「熱でここまでだったぁ。鳥ちゃん、最後まで努力賞だったよ」


熱気避け眼鏡の向こうで涙ぐむマイサ。僕らは一旦進行を止めました。


「嘘? この自体の道具はすぐ壊れるんだ。どうしよ、待って」


シィガさんと同じ機体に乗っていたモモルさんは機械の詳細操作盤を引っ張り出して何か操作を始めました。


「これでよし!」


モモルさん達の機体から皿? を2枚重ねたような器機が露出して何やら動作し始めます。


「冷凍光線用の動力を探知装置に回した。攻撃できなくなったけど、魔法で探知するよりいいよね? 疲れるだろうし」


元々モモルさんは遠距離攻撃ができますし、僕らは特に異論はなかったです。


すぐ再出発しましたが、陽動はできなくなったのであちこち超高温の熱源があるので、探知機の結果を表示する板が見辛いみたいで、モモルさんは判読に四苦八苦していました。


それでも暫くは無事進めたのですが、


「あれ?」


モモルさんが異変を感じた直後っ、


「ウォーンッッ!!!」


通路側面の排出溝に流れ落ちていた溶岩の滝から、燃える犬の群れが飛び出してきました!


火犬(ヘルハウンド)だ!」


水の薙刀を構えるドトォームさん。


「・・溶岩を泳いで来た??」


困惑するユトニッセーさん。


「ハッ、退屈してたとこだっ!」


ライノンさん達は翼を拡げて飛び掛かってゆきますっ。


「待てっ! 数が多いっ、場所も悪い! ヤツらは神殿の守護に配置された魔物じゃない、野生だ! 縄張りがあるっ、牽制して振り切ろうっ」


「ああん?!」


数体、軽々倒していたこともあって興醒めの様子のライノンさん達でしたが、溶岩の滝から後から後からキリ無く飛び出してくるヘルハウンド達にたじろぎ、こちらに取って返してきました。


僕らはモモル機以外の機体に冷凍光線を撃たせ、僕とオリィは回収を諦めて砂漠で買った氷属性の武器を全力で投擲し、どうにかヘルハウンドの大群を振り切り、離脱に成功したのです。



機体の探知に限界を感じた僕らは、機械蟲の脚部に負担が掛かっても高速機動させて、一気に神殿深部に近いザォウ地方の野伏達が維持している魔除けの安全地帯まで滑り込むことにしました。


「うわわわっ??」


「だははっ、面白ぇ!」


「無理無理無理っっっ」


揺れが酷いですっ!


どうにか目的の安全地帯に着く頃にはシィガさん、オリィ、ライノンさん以外は全員ぐったりしていました・・


「速く移動するだけなら飛べばよかったな」


流れで大人しく機体に乗ってしまったライノンさん達。


「ふぅ~、いや参ったね。というか、通常様子を見ながら何日も掛けてここまで来る物だが、2時間足らずで来てしまうとは、そっちにも参ったよ」


「うっぷっ、使える足回りとマナ動力を集めて動かせるのを何体か、うっぷっっ、造、りたいけど、誰かヒール掛けて・・死ぬ」


それから休憩して立て直した僕らはモモルさんが使える機体を造る間に、深部の様子を行ける範囲で探って、野伏の資料との擦り合わせをしたりしました。


「深部の様子は野伏の資料通りだな。どこも暑くて敵わないが」


「・・私の耐熱種のハングツリーで押し通せる」


「俺達3人も先行する」


「祭壇前の広間の扉まで着いたらあんた達は脱出の鏡でここまで戻んな。この環境でも短距離なら問題無い」


凄い古風な装飾ですが転送離脱用の高価な魔法道具をバルタンの方々は持っていました。


「機械蟲は3体できたよ。少しは高性能化させてあるけど、誰が乗ろうか?」


6人ですか・・


「モモルさんとシィガさん、ユトニッセーさんとドトォームさん、あとはマイサと」


「おチビはあたしが抱えてやろうかい? ふふっ」


「ええ?」


結局僕ら3人はフェザーフットで軽いから1機に纏めて乗ることになりました。

ここまではオリィは1人で1機に乗っていたから「狭ぇよっ、押すなよ? オラオラっ」とか言って僕らを押してきたのでちょっと面倒臭かったです・・



攻勢っ!!! ハングツリーの8割方を失い、ライノンさんの御付き方々も本人も装備もボロボロになっていましたが、どうにか祭壇の間の前の広間への扉の前まで到達できました。


「撤収しなっ」


「姐さんも御気を付けて!」


姐さんなんだ。ライノンさんの御付きの方達は脱出の鏡を使って、安全地帯まで転送されてゆきました。

しかし深部の火の魔物と下位竜族の群れはまだまだ来ますっ。この神殿、管理されても環境からくる火のマナと竜族その物の強さで難度高いです!


ユトニッセーさんはハングツリーで囲わせて壁を造りました。


「・・持たない、早く」


「はい!」


僕はジェミニクレストで扉を開け、僕らは中に飛び込み、即、扉を閉ざしました。


「こっから本番だぜ?」


「狙うよっ、百発百中!!」


周囲の溝が溶岩で満たされた広間に巨大な竜の骨が横たわっていましたが、炎を纏って起き上がりました。


火の上位屍竜(パイロスカルドレイク)! 伝承通りだねっ」


「不足無い」


ライノンさんは大鎌を手に構えましたが、


「初手は私が! ここまでさほど活躍していないのは、敢えてだっ。温存していたっ!」


誰も言っていないのに言い訳しつつ、水のマナを高めるドトォームさんっ。


大海戦斧魔法(ネプトアクス)!!!」


巨大な海水の斧を作り出してパイロスカルドレイクを斬り付けますっ。

燃える身体の前面が水蒸気爆発してオリィとマイサとユトニッセーさんが慌てて防御系魔法を掛けますっ。


「段取りを踏め!」


ライノンさんに怒鳴られるドトォームさんでしたが、


「はぁ~・・後は回復を、手伝、う・・」


今のですっかりバテてしまっています。持久力っ!


何にしてもパイロスカルドレイクは胸骨と翼を失い、大きく損耗していましたっ。


ここからユトニッセーさんは炎を吸収する火炎樹(かえんじゅ)の苗をパイロスカルドレイクに植え込んでさらに弱体化させ、

モモルさんは凍結弾で巨大な尻尾を牽制、シィガさんはパイロスカルドレイクの周囲に多数の鬼火を発生させる攻撃を、竜族対策の刀から氷属性の刀に持ち替えて防いでいました。


「しぶといヤツさ!」


ライノンさんは竜巻を起こしてパイロスカルドレイクの口を打ち据え、猛烈な火の息を防ぎますっ。


僕とオリィはマイサのフロストガスで尻尾が砕け、モモルさんの援護が本体に回せるようになると連携して間合いを詰め始めました。


合わせてユトニッセーさんが火炎樹の根で上半身の動きを制限させますっ。細かくヒールを使ってくれるドトォームさんっ。ライノンさんもオリィに同調!


「らぁっ!」


「そらよっっ」


オリィは右腕を、ライノンさんは左腕を破壊!


僕は機械蟲達の冷凍光線の援護を受けながら、エアフットの魔法を操って位置を調整し、噛み付こうとしてきたパイロスカルドレイクの燃える骨の大口に目掛け、竜骨のブーメランを投げ付けましたっ。


ガガガガガッッッッ!!!!


喉元を越え、背骨を両断してパイロスカルドレイクを2つに割り力を失わせると、火炎樹が残りの火の生命力を吸い付くし、塵と消えてゆきます。


「あれ? トドメ撃ち損なっちゃった」


マナを溜めてたマイサ。


「私の、初手が聞いたな、くくっ・・」


手柄は譲らないドトォームさんは置いておくとして、パイロスカルドレイク、撃破できました! よしっ。



気温と空気の清浄さの保たれた祭壇の間で、僕はジェミニクレストでオーブの中の3人のワードラゴンの王達を目覚めさせめした。


資料通り人型の竜で、他の王達と同じ古風な装束を着ています。


「・・子供? いや、フェザーフットか」


「バルタンがいるが、ロングフットが来てないだけマシではある」


「ノームがいない。まぁ取るには足らない」


ここまでは想定内くらいの剣呑さです。


「ワードラゴンの最後の王達よ」


マイサにレイミーアズス神様が宿りました。


「強壮な貴方達はかつて争いが過ぎました。竜族支配の真理と、生命進化の真理、その多くを没収しました」


「・・勝手だな」


「世界の崩壊を突け込み、やがては己に匹敵する我らを完封できてよかったな」


「好機と見ていたんだろう?」


また独特な返しですねっ。たぶんそんなに口達者ではないレイミーアズス神様もすぐには反論しないので、どうした物か? と思っていたのですが、


「図に乗るなっ!!」


ライノンさんがいきなり王の1人に大鎌で打ち掛かって、僕らは驚かされましたっ。


ですが、王の1人は平然と鎌の峰の辺りを掴んで止め、握力で刀身にヒビを入れながら長い尾をライノンさんの首に巻き付けて絞め上げます!


「ぐぅっっ」


「お前の方だろう? 鳥よ」


ドトォームさん、ユトニッセーさん、モモルさんまで、殺気立つのがわかりました。実は昨夜、僕ら3人はシィガさんに忠告されていたのです。


「同行の4種族は場合によってワードラゴンの王達を暗殺して、種の復活を阻止するつもりかもしれない。ノームは巻き込まれるを嫌った風でもあった」


僕は皆より一手速くブーメランを投げ付け、大鎌の柄を切断して虚を突いて、ライノンさんを脱出させました。

勢いが付き過ぎて祭壇の間の壁にブーメランが突き刺さってしまってます。


「また同じことを繰り返すつもりですか? 僕らは敢えて貴方達を復活させに来たんですよ?」


「そうだ、いい加減にしとけよ?」


マイサに降りたレイミーアズス神様も進み出ました。


「・・限界を感じ、今日ここに至ることを選らんだのでしょう? 最後の王達よ」


ワードラゴンの王達は沈黙し、少し火の出る溜め息をついて、レイミーアズス神様に膝をつきました。


「今は恭順しよう、星の聖霊(せいれい)よ」


納められましたか。今までで一番、冷や汗をかかされましたね。



僕らは宿営地の少し先にある来た時とは別の転送門の前に来ていました。最初に抗議したノームの方達が調整してくれています。


「ズーレア様に聞いた以上に手練れで木訥だったな。良いことだ」


「祭壇の間では、よくやったよ・・・」


「またね!」


「取り敢えず、ワードラゴン達とは気長に交渉してみるよ」


皆、見送りに来てくれていました。


「おチビ」


ライノンさんが僕の方に屈み、


「っ?!」


頬に口付けしてきました!


「礼だ。ふふっ」


「オイオイ~っっ」


「チューした賞!!」


「じゃあっ、その」


僕は調整が済んだようなので慌てて転送門に飛び乗りました。オリィとマイサも続きます。


「皆さん! 行って来ますっ」


「ロングフットはタチの悪さはワードラゴンの比ではない、気を付けるんだね」


「はい」


僕らは7番目の、最後の種族、ロングフット族の復活の為、次の目的地へと転送されてゆくのでした。

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