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風のロッカ 星の旅  作者: 大石次郎


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20/25

ワードラゴンの復活 中

シィガさんが案内してくれた『演習相手』は、中間拠点への魔除けの道近くまで進出してきていた2種類の魔物の群れでした。

1つは体長4,5ベル(3メートル)程の襟巻きトカゲ型の下位竜、扇竜トカゲ(ファンドラゴリザード)の赤色種の群れ。もう1つは体長1,5ベル(1メートル)程の火を纏う流動体の魔物赤餅魔(レッドスライム)の群れ。

ファンドラゴリザードは癇癪玉で挑発してレッドスライムは臭い玉で誘導して、シィガさんと御付きの2人が窪地に集めてきました。慣れたもんですね。

2種の魔物は互いに補食対象なのと興奮状態だった為にすぐに乱戦になりました。


「討伐するならこのまま同士討ちさせて、残ったのを始末するだけなんだけどね、それぞれ行けそうな段階で参戦したらいいよ?」


窪地の上の岩場に隠れて気楽に言ってくるシィガさん。僕らは顔を見合せました。


「私は本当に! ワードラゴンの復活の確認ができればいいのでっ、最後で結構ですからっ!」


「では相性から言ったら私はレッドスライムを主に担当しよう」


「・・なら私は、竜か・・・」


「じゃあ僕とオリィは攻撃力の高いファンドラゴリザードの数を優先して減らします。マイサは補助が済んだらスライムの牽制をして」


「任せてっ」


「よっしゃ、やるか!」


訓練は受けているようですが2000年前の戦争中の軍事国家の中将の親類なので、義務でやっていたくらいでしょう。覚束ないドワーフのモモルさん以外の僕らは、窪地の乱戦に突入しましたっ。


「盾よ!」


「竜の鱗!」


オリィは魔法石の欠片を対価にディフェンドを、マイサはレジストを、それぞれ全員に掛けます。


「よっ」


僕は牽制のつもりで竜骨のブーメランを投げてみたのですが、想定を上回る切れ味で3体のファンドラゴリザードを切断してしまい、これだけ綺麗に斬れてしまうと反転して戻ってくる位置がズレるので慌ててしまいました。

対竜効果、凄いっ。


「ととっ?」


どうにかグローブで受けました。

オーシャンピープルのドトォームさんは浮遊しながら水魔法と水の属性の薙刀でレッドスライム達を削り、エルフのユトニッセーさんは特に相性がいい訳でもないので植物魔法でファンドラゴリザードの足を縛って動きを封じて回っていました。


「おっりゃっ!」


遅れて参戦したオリィは竜角の手槍で撃ち掛かりましたが、僕同様、想定外の威力にすっ転んでいました。

ブーメランは第2射を投げたところだったので、オリィに追い打ちしようとした1体に竜爪のナイフを投げて援護しておきます。


「凍えてっ!」


続く乱戦の中、マイサが竜牙のワンドに氷のマナを溜め、フロストガスの魔法をレッドスライム達に炸裂させました! 既にドトォームさんの水の攻撃で視界が少し悪くなるくらい水蒸気が立ち込めていたから効果は抜群!! 一気に数を減らしました。


うん、そろそろだ。これ以上倒すと、ホントに見てただけになっちゃう。


「モモルさん! 終わってしまいますっ」


「うっ・・やりますっ!」


「オリィ! 援護にっ」


「おう」


モモルさんはフガクさんが使っていた物からすると玩具のようですが、砲筒型の武器を持っていました。

オリィに前衛で牽制してもらいつつ、構え、氷属性の砲弾を放ちますっ。相性はバッチリで、手堅く数を減らしてくれました。腰が引けているのと防御が考慮できていませんが、砲撃自体は正確でした。


程なく僕らは2種の魔物群れを壊滅させました。


「はひーっっ」


大汗かいてるモモルさん。


「さすがだね。この調子ならバルタンにも侮れられない。と、いいんたけど」


苦笑するシィガさんでした。



近くの魔除けの野営地で一泊し、翌日、僕らは件の中間拠点に到着しました。

ここは砦のようなザォウ地方の宿営地をそのまま小型にした物でした。天然の岩場を城壁に利用しています。


僕らはその城門の前にいるのですが・・


「あらぁ? ノームはどーしたんだいっ?! 逃げだしたのかい? ハッハッハッ!!」


「違ぇねぇ!」


「他に来たのも間抜けそうだっ」


いずれも屈強そうなバルタン族3人か城門の上で待ち構えていました。何だか海賊的っ。

水晶通信で少し話しましたが、大鎌を持った女性の方がここを占拠したバルタン率いているライノンさんという方です・・

というか、事前に打ち合わせしてるのに当たり強いですねっ。


「あの」


取り敢えず話そうと思ったのですが、


「ライノン! 何度も言ったが、ワードラゴン神殿への同行は各種族の代表で行うっ。お前達バルタンの上がり目を消そうというつもりは無い。そもそも我々オーシャンピープルはお前達にそこまで強い関心を持っていないっ」


「・・私達エルフも、放置もできないだけだね・・・」


「あっ、設備の! 設備の補修や補完は考慮してますかっ? 今のバルタン族では難しいのでは?」


「何?」


違う角度からきたモモルさんに顔色を変えるライノンさんっ。


「いえっ、ですから! 分業が必要ですよ? それにこの環境だと私達の機械蟲よりノームのゴーレムの方が維持し易いですっ。もう、私達に! 世界を好きに造り変える力はありませんからっ!」


「・・ふっ」


バルタンの方達は城門から降りてきました。騾馬が驚くので宥めます。オリィがマイサの前に騾馬を進めました。


「些末なことは小人達に任すっ。人魚とエルフも邪魔をしないのであれば好きにしたらいいさ」


「偉そうに!」


「ドトォームさん」


やんわりドトォームさんを制するシィガさん。


「ふんっ。使徒よ、あたしはライノン・ヒートスター。愚かなトカゲどもの復活、見届けてやるよ」


「ロッカ・グラスクラウンです」


「オリィ・サンダーロック」


「マイサ・ルナポートだよ」


オリィが手槍の石突きの辺りで僕の驢馬をちょい、と押したのでライノンさんの目の前に出されてしまい、代表して騾馬から降りる形になりました。オリィめっ。


「よろしく」


「よろしくな、おチビ」


僕はグローブを取って、鍛え過ぎて岩みたいな手のライノンさんと握手をしました。



夜、僕らは温泉はいくらでもあるということで施設内の温泉にじっくり入り、大気の結界内でも暑いので扇子を手に平服で内部を散策することにしました。


占拠していたバルタンは十数名でそう多くもなかったです。元々ここに詰めていた野伏数名や雇われていた作業員数名はそのまま居ました。


たぶん気まずい夕食会まで少し時間があります。

今回は人数が多かったり少々込み入っているので、身軽に進められる感じじゃないですね。


まずは中庭に行ってみました。砦的な構造でもう数百年は建て替えつつ野伏達が運用しているようだから『中庭』があるんです。

これでも野営地としてザォウ地方の形式的な領主には伝えているらしいですけどね。


エルフのユトニッセーさんが光源か足りないのでライトボールの灯りを頼りに、申し訳程度の植木や植え込みや芝生の様子を見ていました。


「こんばんは」


「ああ・・」


少し横顔をこちらに向けただけです。エルフ的っ。


「この地域は植物が貴重ですね」


「・・手間と人手の確保の問題もある。緑地があっても大体菜園か果樹だね・・・」


エルフとしては農産物と自然の緑地は大きく隔たる物であるようでした。


ドワーフのモモルさんは拠点の昇降機の改修をしていました。


「ホントは地熱発電くらい教えてあげたいんだけど、進み過ぎ、って意見もあるから。昇降機くらいは使い易くね・・」


「機械イジり好きなんだな」


「どうだろ? 技師だし。パン屋が毎日『パン好きだな』って思って仕事してるかな? まぁ2000年経っちゃったから仕事したいだけかもしれないけど」


オリィに案外淡々と答えるモモルさんでした。


オーシャンピープルのドトォームさんは見掛けないのでどこにいるのかな? と思っていたら、シィガさん達が支度してる厨房近く小部屋に置かれた水と氷と海藻を入れた桶の中に、魚の姿になって入って寛いでいました。


「内陸の中でもここは酷い環境だ。別に本当はどうでもいいんだが、面倒はいつも陸からやってくる。億劫なことだ」


「・・・調理されちゃいそう賞」


場所的に僕らも思ったけど、マイサはボソッと口に出しちゃってます。


一通り見て回ったので、僕らは魔除けの城壁の上の通路に来ていました。

拠点の裏側の方に回ると見下ろせる道の先に真っ赤な溶岩の流れる火山が見えます。

あの麓にワードラゴン神殿はあるといいます。

またそちらを見れる物見台にはライノンさんの後ろ姿も見えましたが、とても硬い気配がしていて呼び掛けるのはよしておきました。


「頭オカシイとこに神殿造ってんな」


「溶岩、対流してるんでしょ?」


「明日は気を引き締めよう。守護の魔物は特に手強いみたいだし、ワードラゴンは交渉が必要になる種族かもしれないし・・」


夕食会まで、僕らは煮え立つ火山を見詰めていました。

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