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風のロッカ 星の旅  作者: 大石次郎


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19/25

ワードラゴンの復活 前

転送の光が止むと、熱気っ、硫黄の臭い! ノーム達の気配っ!


「ん?」


またノーム?


「来たか」


後付けのマナ灯の点いた遺跡の中の転送門の前に、ノーム3人が卓と椅子を持ち込んで何かのカードゲームをしていたようですが、即、中断して立ち上がりました。


「何だ何だ?」


「エルフ神殿以降っ、我らノームへの扱いの悪さ! 抗議するっっ」


「ドワーフ達の陰謀だ!!」


「我々が先んじて野伏以外のフェザーフットと交渉を進めているのは、事態を円滑円満に進める為でありっ」


そこから20分余り、猛烈に抗議されました・・


「あ~、初っ端から疲れ過ぎ賞・・・」


案内まではしてくれないまでも、僕らは何だかんだで用意はしてくれていた熱気やガスに強い赤毛種の騾馬に乗って街道、ではないですね、元々あったらしい細道を最近になって無理に魔除けで補強したらしい所を地図を片手に進んでいました。


奇岩の目立つ岩場ばかりの荒涼とした景色の中、水蒸気の噴出孔もちらほらあります。風向きによっては硫黄臭も。


他のガスが出ることもあるそうなので、僕らはこれもノームが用意してくれた防毒マスクを付けていました。

熱気避け眼鏡ももらいましたが、これはまだ付ける程ではなかったので首から提げていました。


ここは白土(しろつち)大陸の火山帯、ザォウ地方です。ワードラゴン族の最後の王達の眠る神殿があります。


「この格好は暑ぃな。エルフ神殿の時の装備着るかぁ? 蛇のヤツ」


「着替えるのはちょっと面倒臭いよ」


あの服、身体に張り付く感じで着脱には難がありました。場所によって湿度はあっても砂漠の装備でもいい気もしましたが、アレは日差し特化だったような?


「取り敢えず銀鷹の上着は脱ごっ!」


マスクが暑苦しいこともあって、バテてきた僕らは防寒効果の上着を脱いで肌着と、銀鷹の帽子に下穿きに靴だけになりました。防御力はスカスカになりましたが、暑さはちょっとはマシです。

今回気付きましたが僕らはわりと涼しく風の通りのいいテウガー地方出身なので、装備の効果が無いと暑さや湿度が籠った環境が苦手みたいですね・・



赤毛種の騾馬の歩みが速かったこともあって、程無くザォウ地方の野伏の宿営地に着きました。


そこはイルフルル地方の浮遊島よりさらに無骨な造りで砦その物でした。魔除けだけでなく、ガス対策の簡易な大気の結界と竜族専用の魔除けの重ねて施されています。

維持費だけでも相当でしょうがザォウ地方は世界でも有数の竜狩りの本場でもあります。宿営地を構えるとなるとこれくらい頑強になるんでしょう。


ですが、それよりも・・


「え? 何で??」


「これは・・」


「何か集まってんぞっ?」


宿営地にはフェザーフットの野伏だけでなく、ドワーフ、オーシャンピープル、エルフが多数集まっていました! 転送門には居たノームは見掛けませんが。


「使徒だな? ズーレア様から聞いている」


褐色の肌のオーシャンピープルの方が浮遊してきました。


「我らも中将殿から腕前を!」


「・・メリワリカからの報告は端的過ぎてわかり難かったけどね・・・」


ドワーフとエルフの方達もわらわら集まってきてしまいましたっ。


「ええと、皆さんは??」


「同行にしちゃ多くねーか?」


「私は早く着替えたいんだけどっ」


「バルタンどもに攻略拠点から追い出されたのだ!」


んん~??


「ヤツらは懲りてないっ」


「・・やはり、勢力が戻る前に叩くべきよね・・・」


どうやらバルタン族と一悶着あったようです。まぁ以前もフガクさんがノームの方達を追っ払ってしまったことがあったようですが・・


「はいはい、一旦預かります」


3種族の方を掻き分けて、黒い肌の野伏の方が御付きらしい2人と現れました。頭目の方でしょう。


「私はザォウ地方の野伏の頭目、シィガ・カッパーチャリオットだ。詳しい話は私の家でしよう」


僕らはこの場を退散し、シィガさん石造りの家に向かいました。


「家と言っても、集会所と応接間を兼ねているんだ。代々頭目が引き継いでる。これまでは年に20日もいなかったんだけどね・・」


少し困惑の表情を見せるシィガさんに出された茶は苦い薬湯で僕らはギョッとしました。


「あの、状況は?」


「バルタンが速攻暴れてんのか? 神様の前では殊勝だったのに、しょーがねーヤツらだなっ」


「まぁ彼らにも事情はあってね・・」


シィガさんの話では、まずバルタン族は2000年前、ワードラゴン族に完敗していました。

ワードラゴン族にはロングフット族以外のどの種族も歯が立たなかったけど、相性の問題でバルタン族はワードラゴン以外には優勢だったようで、唯一勝てなかったワードラゴンはバルタンからするとかなり屈折した思いがある、とか。


「相性かぁ」


「とにかくバルタン達はワードラゴンに拘ってる。そして、もう1つの事情は彼らの現状による所が大きい」


それはドワーフの船員の方達やメリワリカさんが話していた遺跡の状態の悪さや、浮遊島の占有権の揺らぎからくるバルタンの方達の立つ瀬の無さで、

復活早々に窮した形になったバルタン達はワードラゴンの仲介役兼監視役として当面身を立てることに思い至ったようでした。


「あまり長くは務まりそうにないですね・・」


「それって野伏でもできるんじゃねぇか?」


「いや、伝承通りならフェザーフットじゃどうにもならない。強壮なんだ、ワードラゴンは。元々、複数種族で当たるつもりだった。協議は」


「ちょっといいですか?!」


黙っていたマイサが不意に切り出してきました。


「装備を買い換えたいんですけど?! 暑いっ」


「うん、あー、そうだね。先に買い換えてもらおう。揃えてはある」


シィガさんは御付きの方達に僕ら用の装備を用意させました。



暑気対策ではなく完全に炎熱対策の防具、氷河シリーズの帽子と服と靴。

武器はいずれも竜の遺骸から生成された竜族に大きな損傷を与えられる、竜骨(りゅうこつ)のブーメランとドラゴンキャッチグローブ、竜角(りゅうかく)の手槍、竜牙(りゅうが)のワンド、全員に竜爪(りゅうそう)のナイフを購入しました。


「涼しい・・」


御満悦のマイサ。


「この環境だから、竜以外にも火の属性の魔物が多いから。それらに対しては砂漠で獲得した氷の武器を使うといいよ」


それから打ち合わせも済み、僕らとしてはバルタンが占拠しているというワードラゴン神殿への中間拠点にすぐ出発しても良かったのですが、シィガさん達と他の3種族との協議や、

この3種族とも揉めて宿営地を出てしまったらしいノーム族や中間拠点のバルタン達と水晶通信で協議をしなければならなくなり、僕らの出発は明日に延期になりました。


夜、手持ち無沙汰になった僕らはシィガさんの家の書庫に居ました。巻物も多かったですが、綴じ本も多く、中々充実していました。


「何か久し振りに頭を使って、脳ミソが元気になってきた気がするよぉ」


マイサは興味深そうに読み込んでいました。


「脳ミソ元気賞?」


「それ!」


「何か、最初の頃は試験してたよな?」


もう懐かしい。アミールさん、真面目な人だったな・・


「今はもう復活の是非を問う段階でもなくなったしね」


間違いなく、世界は変わってゆきます。僕は少し興奮していました。ずっと、僕らの星は眠っていたのかもしれませんね。


・・・・ワードラゴン族。200年の寿命を持つ単為生殖種族。人型の竜で、身長は345ドシコベル(230センチメートル)程、極めて高い戦闘性持ち全ての竜族との高い感応力と進化し続ける身体を持つ。

彼らが宿敵であるロングフット族に宣戦布告をしたことが、2000年前の世界の崩壊の切っ掛けでした。



翌日、結局3種族の代表1名ずつとシィガさんと御付きの方2人と共に僕らは全員赤毛種の騾馬に乗って宿営地を出発することになりました。


「・・騾馬は小さいね」


僕らからすると背が高く騾馬の扱いに戸惑ってるエルフの女性の方は、ユトニッセーさん。


「それより暑過ぎるっ。護りを色々付けても敵わん。こんな所を好んだワードラゴンどもとは折り合いがつくことは無いだろう」


人型の下半身に変化して、早くも具合悪そうな褐色の肌のオーシャンピープルの方はドトォームさん。


「設備改修に来ただけなのに、私が選ばれるなんてっ」


ドワーフの代表の女性モモルさんはドワーフ方達が誰が同行するか余りに揉めたので、フガクさんの遠縁でドワーフ内の派閥と無関係だった為に選出されてしまったようです。相当嫌だったみたいで、大弱り!


「ロッカ君達も装備やこの地域の魔物や竜達に不慣れだろうし、同行組も訓練は必要だろう、中間拠点までに戦闘する機会を作っておこう。バルタン族に見くびられると今後、色々面倒そうだしね」


「わかりました」


「いつものことだぜ!」


「見せますよ? 百発百中賞!」


僕らは腕試ししつつ、中間拠点を目指すことになりそうです。

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