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風のロッカ 星の旅  作者: 大石次郎


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18/25

バルタンの復活 後

隠し港、というか船渠は樹木に侵食された発着場を改造した物で、ドワーフ達の宿営地にもなっていました。20人はいます!


いやそれよりも・・飛行船!!


装甲で補強された楕円形の気球の下に船体が付けられ、予備の推進力に風車のような器機も取り付けられています! 船体後部からは煙を出す機関も備わっていて、火と土のマナを感じました。

あれはファイアジェムを造るのに使われる石炭の装置ではないでしょうか?


「すっげぇ! うおーっ!」


「カッコイイ!!」


「前より仕上がってるね~」


「力を制限されてもこんな物が造れるんだ・・」


僕らが機械蟲に乗ったまま見とれていると、


「ほうっ? これが使徒! フェザーフットだけに子供にしか見えんっ。ガハハッ」


「中将殿の話では手練れらしいぞっ?」


「見ろこの船!『2000年生き残って丸儲け号』と名付けた!!」


「こんな辺鄙な所でコソコソしなけりゃならんのが惜しいがなっ」


フガクさんや王達とはまた違って、気さくな調子の作業員ドワーフの皆さんです。


「あれ?」


マイサがふと気付いて、船に積み込む木箱の方を見ました。


「うおっ?」


「え?」


エルフです。若く見えるエルフの男性が半身だけ木箱の陰から出してこちらを伺っています!


「ああ、午前中にいきなり来やがったんだよ、あのエルフ。どうもこの島に柱の樹の若木が生えちまってるみたいでな。弱体化してもそれを利用して移動するぐらいはできるみたいだ」


「ロクに喋らねーし、挙動不審だし、扱い辛くてしょーがねーよっ」


そうだったんだ・・


「こんにちは、えっとロッカです。あの、同行されますか?」


「・・・に・・ろう」


「ええ?」


声、小っちゃっ。と、おもむろにエルフの男性は木箱の陰から出てズンズン歩み寄ってきました。


「用も無いのにドワーフだらけの所に来ない。王に偵察と援護を命じられた。メリワリカ・モスブリッジだ。私は私で勝手にする」


「そう、ですか・・」


言うだけ言うと作業中のドワーフや機械蟲達を押し退けるように、メリワリカさんは勝手に船に乗り込むのでした。


「つか、出港するの明日だろ?」


「エルフの耳って、ピョコピョコしてるよね?」


「個性的でいいじゃ~ん!」


とにかく今回行くべき人々は揃ったようですね。



日が明けて、準備を終え、飛行船、略して丸儲け号は樹海の浮遊島から出港しました! 数名のドワーフと作業や警備用の機械蟲達、隠し港まで連れてきたヒポグリフ達の世話する野伏の方、それからいつの間にかもう2人来ていたほとんど喋らない男女のエルフの方達は見送りです。

エルフの2人は無言無表情で立つ船を見ているだけでしたが・・


僕らは艦橋に集まっていました。空を滑るように船は飛び、蛇行気味に上昇を始めます! 僕ら3人とヨーニさんは、わー、わー、騒いでしまいますっ。


「騒ぎ過ぎだっ、舌噛むぞ? 気圧調整が甘いから急には上がれないからな」


「補助動力に石炭使ってるような骨董仕様だ。懐古主義的!!」


丸儲け号は高度をどんどん上げてゆきました。

その高速からドワーフが言った以上に早く、難所に差し掛かります!


「風の狩り場に入るっ、固定具を使え!」


全員は備え付けの座席や柱に固定具で自分を固定しますっ。


風の狩り場はバルタン神殿を超高高度に固定した結果発生する、魔法で歪められた風の逃げ場です。乱気流が永遠に逆巻く空域なのです!


ゴゥウウウッッッ!!!!


船が軋み、当たり前のように船体が旋回しますっ。僕らはもう大騒ぎ!!


「フェザーフット達っ、うるさいっっ、ホントに子供じゃないんだろうな??」


「・・おぇ~っっ」


「っ?! おいっエルフ! 艦橋で吐くなっ、何しに付いてきた!!」


混乱を極めましたが、丸儲け号は最大出力に風の魔力障壁を重ね、風の狩り場を抜けました。

その先はやはり魔法で固定された雲海。中は豪雨、雹、雷鳴、風の障壁に喰い付こうとして吹っ飛ばされる高高度亜種のワイバーンの群れ!!


雲海を抜けると・・


「土台が凍ってる!」


大気の結界の無い土と岩盤の下部があまりの高度の低温に凍り付いた、地表はほぼ遺跡で覆われた浮遊島が雲海の上に浮いていました。

バルタン神殿の島です。



ドワーフが調べた資料頼りで向かった発着場は氷に覆われていたので船の火砲で吹っ飛ばし、飛行型の機械蟲で内部の安全を確認後、丸儲け号は凍り付いた遺跡の発着場に着艦しました。


「作業員の大半は非戦闘員だ。ここにいくらか機械蟲どもと残って仮拠点化を行う」


「バルタン神殿は野伏の管理調査が為されていない危険な遺跡だ。1度の攻略で踏破する必要もないから、消耗すれば即、ここに戻るとしよう」


「あたし以外の野伏もここに残らすよ。全滅した場合、引き継ぎできなくなるからね~」


さらっと怖いこと言うヨーニさん。

何にしても神殿には、先行させた機械蟲達の情報が揃ってから、武装したドワーフの方2人とヨーニさん、メリワリカさん、僕ら3人で向かうことになりました。


神殿周辺の遺跡に魔物は多かったり、大気の結界の欠損で空気が薄くなったり、冷たい風が吹き込んだり、光線害の強かったりする所もありましたが、先行の機械蟲達の情報でやり過ごすことができました。


「ブリキの鳥ちゃんより賢いね」


「というか、星の世界が近いよ?」


見上げると、昼なのに星がいくらかはうっすらと見えていました。大気の結界が無いと危ういくらいです。


「ネムリ郷思い出すな」


「だね」


「懐かしい賞・・」


程無く、神殿にたどり着きました。



管理されていない為、内部はエルフよりかはマシでしたが損耗が激しく、残ってる部位も植物による補強がない分、エルフ神殿より脆いくらいでした。

ほとんどの箇所でライトボールの魔法の灯りが必要。


内部に巣くう魔物は守護者とそれ以外の区別がもう曖昧でしたが、主に鳥と飛竜とその他飛行する魔物や風や雷、冷気の属性の霊体の魔物で構成されています。

それらも浅い区域までは機械蟲の偵察情報と陽動で回避できて、僕らはかつてバルタン達の居住区? であったらしい魔除けの残っていた区画を機械蟲達が占拠した所で休息できました。


「ここまでは何とかなったが、神殿に入れて寄せられる機械蟲は1割程度。深部まで安全を確保するのは厳しいな」


「・・なら、これを使おう」


メリワリカさん、種? のような物が入った小袋を取り出しました。


「メルトプラントを即、成体にできる魔法を掛けた物だ。数百体は出せる。今はこれくらいしかできないが、単純に先行と殿をさせるだけなら十分だろう・・」


心強い申し出でした!



居住区の水場の水だけで大繁殖したメルトプラントの大群で僕らは攻略を再開しましたっ。目立ち過ぎるのでもう隠れません! 最短で行きます。

メルトプラントはそう強い魔物ではありませんが数の暴力で神殿の魔物達を圧倒してゆきました。途中で集めた1割の機械蟲達とも合流しましたがこちらは温存っ。

しかし深部の中程でメルトプラント達が力尽きると機械蟲達が守護を代替えしました。強引に進み続けますっ。

機械蟲による守護も段々削られてゆくと、僕らも自分で戦わざるを得ません。機械蟲達が前衛なので、僕とヨーニさんはクロスボウ。マイサとメリワリカさんは魔法。オリィはドワーフの2人に借りたフガクさんが使っていたより火力は低いけど扱いやすそうな砲筒を使っていました。


最終的に機械蟲が残り5体という所で祭壇の間の前の広間へ続く扉まで滑り込めました。


「ロッカ君!」


「はいっ」


ジェミニクレストで扉を開け、全員で中に飛び込み、即座に扉を閉めました。


「これで開けてから閉めたの始めてです・・」


「使徒! まだ油断できんぞ?」


「祭壇の守護者は? んん??」


だいぶ傷んだ広間には石化した直径3ベル(2メートル)はありそうな卵? のようなものが数十個無造作に転がっていました。既に壊れた物も多数ありましたが・・


「・・・生きてる。これはコカトリス、いや石化巨鶏(キングコカトリス)の耐久卵だ」


疲労で顔色の悪いメリワリカさんがボソッといいます。


「耐久卵?」


聞き返した途端、ピシッ! 石化した表面かわ剥がれ、全ての無傷の卵が孵り、蜥蜴と雛の中間のような3ベル弱は有る魔物が一斉に誕生しましたっ。


「ピピィーっ!!!」


「ピヨヨっっ!!!」


「石化対策できてないからっ、ロッカ君は風で石化ガス対策よろしく~!」


「了解ですっ」


キングコカトリスの雛達は一時、可愛い挙動を見せましたが、すぐに魔物の顔で襲い掛かってきました。嘴から石化ガスが漏れていますっ。


「唸れ!」


ガストの魔法で突風を吹かして石化ガスを牽制します。雛自信はガスを受けても一瞬だけ表面が石化する程度です。

オリィはディフェンドの魔法を全員に、マイサはマナを溜め、ヨーニさんは風のクロスボウを連射、ドワーフの2人は残り2体の機械蟲にも針の射撃をさせつつ砲筒を撃ち、メリワリカさんはレジストの魔法を全員に掛けました。


乱戦になります!


僕はライトクロスボウを撃ちまくりましたが、火力が低過ぎて効果が薄く、飛び込んできた1体の額にスワロウナイフを投擲してからは結局、疾風のブーメランに持ち替えガストで牽制しつつ戦いだしました。

オリィも砲筒が弾切れになると、竜巻の手槍に持ち替えガスを警戒して接近に苦労しながら1体ずつ仕止め始めました。


ドワーフ2人は機械蟲が石化されると撃破から威嚇に切り替えて砲撃を続け、メリワリカさんは奥の手だったらしいハングツリーの苗をポーション液で7体出現させて1体の上に乗って応戦しだしました。

マイサは、


「逆巻け!!」


大旋風魔法(ハイツイスター)をイズナのワンドから放ち、後衛で詰まっていた雛達を一掃してくれましたっ。


連戦に次ぐ連戦ということもあってバテバテになりましたが、それから僕らは競り勝ち、キングコカトリスの雛の群を撃破したのでした!


「はぁはぁ・・・野伏による、神殿管理の重要性を思い知りました」


「自力でここまで来れてなくて、ごめんね~・・」


それなりにヘバりましたがどうにか回復すると、僕らは祭壇の間へと向かいました。



ジェミニクレストでオーブの中の6人のバルタンの最後の王達を復活させました。


「ぬっ?」


「目覚めたか」


「使徒はフェザーフットか。ふっ」


「良い仕事をした、小人達よ」


「ドワーフとエルフに先を越されたか」


「たかが知れているさ。くくっ」


おっとぉ、これまた手強い感じですね・・ここで、


「バルタンの最後の王達よ」


マイサにレイミーアズス神様降臨! ノームと違い顔色まで変わりませんが、即座に平伏するバルタンの王達。僕らも続き、メリワリカさんとドワーフ2人もその後に続きました。


「2000年の年月の事は気球を駆る者達に聞くとよいでしょう。貴方達の罪が忘れ去られた訳でもありません。いずれ遠い年月の先には必ずえる魔族との再戦を前に、贖罪はその意志と行動を持って為しなさい」


「心得ました」


「神よ、仰せのままに」


「貴方達から大気と空の生き物達への使役の奥義の多くを没収します。驕りを捨て、大空を多くの者達と分かち、為すべきことを為すと良いでしょう・・」


レイミーアズス神様はマイサから去ってゆきました。



今回はことさら大変でしたが、意外と日が高い内に神殿の島から出港できました。

去る前にドワーフの方達が船を軽く旋回させて艦橋の窓から手何かを振る機会を作ろうとしました。

すると、王に続けて復活させられたいくらか居た島内の配下のバルタン達が、生き残りを仕止めたらしいメルトプラントと機械虫をこれ見よがしに島の外に投げたり蹴ったりして見せ付けてきましたっ。


「あの鳥どもっっ」


「・・礼儀を知らない」


結局、フェザーフットだけ義務的に手を振って、丸儲け号は島を離れました。


力の没収でバルタンの力が衰え、風の狩り場の範囲が狭まって抜けられるようになったらしいので、僕らは雲海や狩り場は避けて大回りして滑降するようになだらかに降下を始めました。


「厄介だが、神への従属はノームより直接的で固い。意向には逆らわんだろ」


「連中の文明異物は破損率が高く、フェザーフットやエルフの森による進出も多い。そう簡単には好きにできん、と信じたいところだ」


「・・王達には『空の森』の拡大の優先を進言しておく・・」


「何だかなぁ、取り敢えず交渉してくのあたしら何だけど~?」


ゲンナリした様子の他の人達を尻目に、僕ら3人はちょっと苦笑してしまいました。大体こんな感じです。


「残りはロングフット族とワードラゴン族だね」


「ヤベェのだけ残ってんな。どうする? ロッカ」


僕の中では決めていて、


「ワードラゴンを復活させよう」


そうはっきりと答えました。2000年前、七大種族の中でロングフット族以外を圧倒した非常に戦闘的な種族です。


しかし、ロングフット族に対抗するにはこの種族の力が必須だという確信がありました。

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