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風のロッカ 星の旅  作者: 大石次郎


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16/25

バルタンの復活 前

転送したのは妙に真新しいドーム型の建物で覆われた転送門でした。転送門自体は古びています。


「何か、いつもと違う感じだね」


「新築!」


「ノームだろ? 最近イキってるらしいからな」


話しながら円い転送門から降りていると、


「随分な言い種だね」


僕らはギョッとしました。ドーム内に入ってきたのは小型ゴーレムを連れたヤンベさんでした。


「ヤンベさん! また案内ですか?」


「ロッカ。違うよ、『また』でもない。前回は偵察と援護だ。あんまり慣れられても心外だね」


手強い。


「じゃあ何しに出張ってきたんだよ、ヤンベ婆さん」


ヤンベさんは無言でゴーレムに拳を射出させてオリィの足元の床を抉りましたっ。


「どぉおおっっ??」


「私は中年世代だよ? 2度と間違えないようにね」


「わ、わかった。以後、注意するぜっ」


「百発百中賞じゃなくてよかったね」


前より手厳しい気がするヤンベさんでしたが、実際機嫌は悪かったようです。

ヤンベさんはかつては王族付きのゴーレム技師だったそうですが、今はオーシャンピープル専門の外交員をしているとか。

今回も所要で近くに来た所、僕らの転送の話が伝わり急遽派遣されたそうです。


「いい迷惑だね。1日予定がズレた。顔も晒せないのに騾馬の手配までさせられて、未だに町中どころか人家の近くじゃゴーレムを使えないし、野伏は人手が足りないだとか言って来ないし、あんまり便利使いされちゃ敵わないよ」


僕らはヤンベさんが手配してくれた騾馬に乗っていました。向かっているのは気球の発着駅のあるティブラの町です。

ここは黄土大陸の東方にある緑土(みどりつち)大陸のイルフルル地方、位置の概ね固定された浮遊島(ふゆうとう)が一番多く見られる地域でした。


「どうもすいませんね」


「人に簡単に謝るんじゃないよ」


「・・・」


え? どうやっても怒られる。


「あんた前より当たり強くねーか? ジゴのオッサンといた時はもうちょっとやんわりだったろ?」


やんわりでもなかったけど?


「アイツはうるさかった。こっちの倍は言ってくるし、話がズレる。口は相手を選んで開くもんだよ」


格言ぽく、どうかと思うことを言ってくるヤンベさん。


その後の道中、ヤンベさんの毒舌は絶好調でした。どうも見知らぬ世界になってしまった中を、技師なのに外交員をやらされてストレスが溜まっていたようです。


ちなみにジゴさんは王達が居てオーシャンピープルの本拠地になっているモストリーテ地方で、調整役として飛び回っているそうです。

オトヒメさんはギョクコウの分体を連れてオーシャンピープル達と共に海王の祠が壊れた海域で海魔退治を始めたみたいですね。


あとは僕らが来た転送門のドームは現代では街道にわりと近いから復旧後に無関係な人達に発見されるのを防ぐ為に設置したとのことです。外から見ると迷彩効果も発揮するようです。

初期は遠隔で状態のいい所を大体の観測で復旧させてしまったから、こういった転送門も多いとか。



約半日で、夕方にティブラの町のすぐ近く丘の街道まで来ました。僕らの他にはいずれも遠くに、荷車を牽く騾馬が1頭、驢馬に乗った旅人、徒歩の旅人が何組かがいます。

ここらは風が気持ち好く、画のような風景ですが、何より目を引くのはおそらく今日最後の便の、街の向こうから上昇してゆく気球船2機と、降下してくる1機。

そして空の向こうに見える、いくつもの浮遊島っ!


「街に入ると完全に顔を隠さなきゃならない。私はここまでだね」


「ありがとうございました」


「バルタンどもはロクデナシだ。上手くやりな」


「もう日が暮れるけど野宿か?」


「近くの森の放棄されていた野営地をノームで徴発したのさ、それじゃあね」


よく見ると革布を被せた目が光ったりする小型ゴーレムの頭部を鞍の後ろに乗せた、フードを被ってるヤンベさんは森の方へと去ってゆきました。


「行っちゃった」


「徴発だとさ。絶対すげぇ改造してんぜ?」


「まぁね。行こっか?」


僕らはティブラの町へと向かいました。久し振りに公な出入りのある大きな町です。手形はヤンベさんから預かっています。「その妙な服装は悪目立ちする」と忠告もされているので、新しい装備に変えたいところですね。

ヤポンの密林では武装している人は似た格好だったからそんな違和感なかったんですけど。



・・・バルタン族。寿命は300年で各地の浮遊島を拠点とする有翼の種族。下半身も鳥のような姿をしていたようです。オーシャンピープル同様、特徴の無い僕らフェザーフットからすると背の高い人型の姿にも変身できたとか。

とても気位の高い種族で、神からは魔族への対抗を命じられていたといいます。

大気と飛行生物使役の真理を体得し、地上の種族間で争いが絶えなくなくなるとこれを疎ましく思って、日照り、嵐、稲妻、竜巻を世界中で起こし、各国に大軍を率いて空から強襲して世界を滅ぼしかけていました。



ティブラは観光の町です。世界中にある浮遊島の内、開発された気球の発着駅のある町はどこもそんな感じみたいですね。

町中が商店街と歓楽街みたいで何だか奇妙な気もしました。


「気球の町だけにフワフワしてんな」


「オリィが上手いこと言ってる」


「『まだら猫亭』だったね、地図通りならこっちだ」


町に入ってみると確かにちょっと場違いな格好の僕らは、時々横目で見られながらイルフルル地方の野伏が待っているらしい宿に向かいました。


「お~っ、君達が使徒! ジャバウォックを一撃で仕止めたんだって~?」


イルフルル地方の野伏の頭目、ヨーニ・ゴールドバルーンは何だか個性的な女性でした。経歴も変わっていて、頭目に推薦されるまでは野伏と手品師を兼業していたそうです。


「それはドワーフの方ですね」


「道中はそれなりだったが、エルフ神殿に関しちゃ俺達は起こしに行っただけだな」


「エント達は枝を伸ばすからあんまり動かなくて、私のブリキの鳥ちゃんも不発だったよぉ」


「ふぅん? 水車でサンダージェムを造ったり魔法石の欠片を造ったり、っていう」


「それもドワーフのフガクさんです」


「ドワーフ、凄いね~!」


「はぁ」


「ま、いいや。明日の気球はちゃんと手配してるから、ちょっと間を挟むけど、現地には件のドワーフさん達がカッコイイ飛行船用意してるらしいからね!」


そう僕らは今回、気球を使ってまず別荘地開発が進んでるらしい浮遊島に昇って、そこからドワーフの方達が完成した飛行船を隠している未開発の浮遊島に鷲馬(ヒポグリフ)を使って渡り、

最後に今のフェザーフットの文明ではたどり付けない、『風の狩り場(かぜのかりば)』呼ばれる空域の先にあるバルタン神殿を目指す予定でした。


装備はヨーニさん達から購入しました。それなりに温かく風耐性と光線害耐性に気圧耐性があって飛行系魔法とも相性がいい銀鷹(ぎんたか)シリーズの防具と、

いずれも風の属性の、疾風のブーメランとウィンドキャッチグローブ、竜巻の手槍、イズナのワンド、全員にスワロウナイフ。

空では電撃を使う魔物も多いようだからモストリーテ地方でも使った雷避けの腕輪を全員身に付け、風避け眼鏡と空気が足りなくなった時用に大気のマフラーも取り敢えず首に巻いてます。


準備は万端!



ゴォオオッと燃焼器が炎を上げ発着場係員が係留具を外すと、気球士(ききゅうし)と僕らとヨーニさんを乗せた気球の籠は垂直に思ったより素早く上がり始めました!


「上がった!」


「内蔵がドゥンってなったっ」


「うぉおおお??」


「あたし、フォールの魔法得意だから安心してね~」


「墜ちる前提ですか?!」


というかフォール得意な人多いですねっ。


気球はどんどん上昇してゆきます! 横移動は風頼りだと難しいので、無理無い範囲で風の触媒エアジェムを仕込んだワンドを気球士の方が操って調整します。

程無く狙っていたらしい気流を掴まえると、目当ての浮遊島の港に向けて吸い込まれるように弧を描いて飛行しだしました。

浮遊島は地上から小さく見えましたが、近付くとかなり大きいですっ。


「あ~、このままぶつかったら木っ端微塵だなぁ」


「オリィ縁起悪い」


「アレ! ワイアームだよっ」


マイサが示した先にはワイアームが4体もいました。


「大丈夫だ。魔除けも付けてるがもう百何十年も俺達が気球で行き来してる、下手にちょっかい出すと痛い目に遇うって学習してるさ」


気球士の方は風の力のワンドとは別に、鞘に差してる電撃のワンドも抜いて見せました。


「あたしのクロスボウも強烈だからね!」


ヨーニさんは風の属性のクロスボウを構えてみせます。


「百発百中賞?」


「マイサちゃん、それそれ~!」


マイサとヨーニさんが盛り上がりつつ、ワイアーム達を素通りして、僕らの気球は遅いようで実は中々の速度を出して浮遊島へと飛んでゆくのでした。

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