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風のロッカ 星の旅  作者: 大石次郎


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14/25

エルフの復活 中

「じゃあウチ、晩御飯の鶏、絞めてくるよ!」


「ケルピー達もちゃんと労ってやるんだぞ?」


「わかったぁっ」


ユシャは帰ってきたばかりでも元気よく皆の夕飯の支度に鶏舎の方に出けてゆきました。


「・・小間使いや道化等をしていたフェザーフットが、ここまで野性的に星の各地で繁栄するとはな」


感慨深そうな顔をするフガクさん。


「僕らの移動にはいつも数日の時間差が出ます。現状の復活した種族はどうなっていますか?」


「というか毎回ノームの人達に新しい転送門に先回りされてるから、私達もすぐに移動せずに現地神殿に近い拠点にすぐ行ける門が開くまで待った方がいいかも?」


「それな」


「いや、ロッカ君達。ノームは君達の行き先に当て込んで近場の転送門を開通させてる。転送門を使うにしても既存の物でなるべく済ました方がいい、交渉材料になってしまうだろう」


これはユシャのお父さん。


「確かに・・」


全体としては信心深い種族ではあるんでしょうが、抜け目無い印象もあります。


「それは現地での数日の移動は修行や新しい装備の確認や現地の風土等を知る機会になっているんじゃないか? 大事なことだと思うよ」


ユシャのお父さんはほんと理知的な人ですね。


「復活させた神殿の近くに長く居過ぎるのは私もどうかと思うぞ? 暗殺まではされないまでも、過度な接触はあり得る。微妙な立場だ、お前達は。私も特使としてここに来るまでに同胞7~8人は殴り飛ばしてきたくらいだからな」


「どういう状況ですか??」


「これまで通りやるしかないかぁ。つーか、ドワーフの飛行船どうなってるんだよ?」


「やってはいる。機械蟲による遺跡管理の成果で我々穏健派は既に全個体復活できたが、神罰で失われた力と技術が中々致命的でな。管理不能になった機械蟲や改造巨人どもの処理に手間取っている」


世界中だから相当な規模でしょうが処理自体はできてるんだな、と。


「巨人に関しては我々ドワーフと無関係な上位巨人への対応を求められている。明らかにノームどもの差し金だっ」


「拗れてんなぁ・・」


「ノームとドワーフって何か仲悪いよね。ちょっと見た目似てる賞なのに・・」


「似ておらんっ!」


一括されて縮み上がるマイサと隣にいたオリィ。


「まぁまぁ、フガクさん。ええと、ドワーフに関しては仰有られた通りだ。全個体復活はかなり早いが、立て込んでいるようだね」


「ノーム族は?」


「ほぼ万全に近い。暴走ゴーレムの処理もおおよそは済んだようだ。今は元々野伏と近しい宗派や個人の教会関係者や、商人達と世界中で接触を始めている。野伏としては偏った情報の流布やドワーフとの対立は避ける方向で調整しているよ」


ノーム族、思ったより迅速ですね・・


「じゃあズーレア達、オーシャンピープルは?」


数日前は海王の祠の初期対応が終わって全個体復活を本格化させる、といった話でした。


「海域の安全があちこちで確保されたのと、オーシャンピープル達がほぼ放置しているから代わりに各地の海辺の野伏が対応することになっている。ただこれは短期的にもちょっと隠し切れないな」


影響を考えるとオーシャンピープルはこっそり復活ってワケにもいかないか。


「そっちはそっちで大変そう」


「これ以上ノームには頼る形にはしたくないから、オーシャンピープルの中でも社交的な人達と交渉はしている。先行の3種族に関してそんな所だよ」


うーん、陸の種族がもう1種族、やっぱり必要そうな段階ですね。


等と思いながら暫く協議を続けて、炊事場の方からいい匂いがしだすと、僕らも手伝うことにしました。

夕飯はヤポン地方らしい簡素な調理の肉、芋、フルーツの料理に加えて、淡水魚や食用の水草、野菜、パンや揚げ菓子や乳製品もあって何だか豪勢。


「マイジカの本気御飯だよっ!」


勢いあるユシャ。これに、


「我々の時代が終わる間際は不快な原料の固形携帯食(こけいけいたいしょく)も儘ならなくなりつつあった。よくここまで世界を回復させた物だ」


と少し涙ぐんだりするフガクさんなのでした。



エルフ神殿はずっと遡上してきた川の源流の1つだそうです。そしてマイジカ郷から源流へ直進した場合、ここが最後の郷となります。


通常かなり時間を掛けて陸路で神殿への定期調査や魔物の間引き、安全地帯の補強が行われていることもあって、川の魔除けの補強は不十分で、段々と強い魔物の川への侵入を完全に防げなくなるそうです。

神殿内にもかつてエルフに使役された植物の魔物やその子孫が蔓延ってるとか。


翌日、僕らは1日使って売却素材集めがてら現地の水辺と森の中で、増え過ぎたり被害を出してる魔物を退治して回ることになりました。


フガクさんは「殺し合いは封じられる直前まで散々していた」とマイジカ郷で待機して、郷の水車や水晶通信機の改良や修理をするそうです。


ともかく僕らはユシャの案内で、演習開始!


「ほっ」


ケルピーに乗って、僕らを襲う為に水面に顔を出した120ドシコベル(80センチメートル)はある牛噛り魚(カウブッチャー)3体に、両断のブーメランを投げ付けました。

驚く程簡単に真っ二つにしてゆきます。純粋な攻撃力でいったら今までで一番ですね。乗っているケルピーを操ってシルバーキャッチグローブで受けました。これは少々コツがいります。


「片付いたね」


「やるじゃん! ウチ、びっくり」


「素材回収したら次は森だぜっ」


「この魔物、何か美味しそう。新鮮!」


「えっ、マイサ。このカウブッチャーの群れは2日前に舟を襲ってるよ・・」


「ええ~? 今の無し無しっ」


そんな感じで近隣の目立つ川の魔物退治は済んだので僕らは陸に上がって、ケルピーはユシャの指輪の中へと戻ってゆきました。


さて陸戦の方はというと、


「どぉりゃ!」


飛び付いたオリィが一撃の手槍で首吊り樹(ハングツリー)を粉砕っ。


「死の引き手っ」


マイサも収束のワンドを振るって魔弾魔法(マナブリッツ)を連打して溶解草(メルトプラント)の群れを砕いて一掃しました。


「皆、ホントすごいよね。ウチもちょっとは手伝ってみたけど」


結構ゴツい斧でメルトプラントを数体仕止めていたユシャ。


「3年修行漬けで、ここで4ヶ所目だしね。でも、植物系の魔物の対策も大体はできたかな?」


「いいんじゃね? 段々薪割りみたいになってきたし」


「この杖、癖強いけど攻撃するだけなら今までで一番楽かも?」


森でも素材を集め終えた僕らは、予定より少し早かったですがマイジカ郷に戻ることにしました。



戻ってみると郷の水車の改良は済んでいましたが、思った程は機械化されていませんでした。


「意外と機械はあまり使わないんですね」


「この高温多湿では維持も難しいだろうし、限定的だ。我々ドワーフも今、可能な範囲でどの程度工学技術広めるか定まっていない。野伏達の資料で見た現代でも進んでいる地域の技術を拝借して調整した。現状こんなものだ」


「なるほど・・」


「堅いな、オッサン」


「中、どんな感じにしたの?」


「ウチも見たい!」


僕らは集まってきていた郷の他の人達に混ざってワラワラと水車内を確認して回りました。


増水対策で、郷外周の低い土地に掘られた水路に並んで作られた水車には4種類ありました。


穀類を挽く水車。陶芸用の粘土に混ぜる土を挽く水車。高い土地に水を送る水車。これらはどれも機械化はしないまま高性能化していました。

あとは発電する水車です。ここだけ神殿の設備からすると軽くですが機械化されています。


「今のフェザーフットの文明段階で電気その物を工学利用するのは難しい。まず、ここで起こした電気と、郷の道具屋の技術等で可能な程度の加工で造った触媒になる素材で雷属性のサンダージェムを生成する」


随分ゆっくりとした生成でしたが、水車内の機器の台座に納められた4つの素材が徐々に充電されてサンダージェムが生成されつつありました。


「これ自体が売れるが、多少目減りするのを前提にサンダージェムから属性の無い魔法石の欠片を精製する。ノームが配った廉価型の水晶通信機もだが、既にこの時代にある汎用型の魔法道具はそれでほぼ全て充填できるはずだ」


「おお~」


郷の野伏の人達が感嘆するので、少し赤面してしまうフガクさん。


「この程度でも一般化すればフェザーフット達の文明は一段階は進む。広めるといい。自力があればノームに突け込まれ難くもなるだろう」


「助かりますよ、フガクさん」


ユシャのお父さんも感服していましたが、フガクさんはしまいに、


「明日は使徒達の神殿行きに同行する。もう宿で休む」


と退散してしまいました。

でも間違いなくこれで文明は進みます。この流れは良いことばかりではないはずですが、1つずつ積み上げて適応してゆければいいんじゃないかなぁ。

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