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風のロッカ 星の旅  作者: 大石次郎


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ドワーフの復活 中

極北極寒のドワーフ神殿の近くに郷はありません。

氷山があるような地域での移動は砂漠よりも過酷なので、宿営地を組めるギリギリの所に僕らの為に仮設の宿営地をモイズン地方の野伏の方々が組んでくれているようでした。


移動は引き続き犬橇ですが、ラチャさんに補助してもらいつつオリィが御者をしています。

ズーレアさんは橇の定員とノームのヤンベさんと違い、フードを被っても目立ち過ぎるので、魚の姿で魔法道具の常温水槽(じょうおんすいそう)の中に海藻と一緒に入っています。

氷柱齧り亭の部屋の鉢より小さく少々窮屈そうですが、海藻にマナを送って活性化して、窒息や水質の悪化は防いでいるようでした。


僕が抱えていました。この環境では常温でも温かく感じます。

ラチャさんの御付きの2人は小型の犬橇で後ろに付いてきていました。

段々僻地に進むので、ペスは並走せずに先導してくれてます。


寒冷地では雪のせいで魔除けの街道の路面はあまり機能しないので、砂漠同様、魔除けの杭が打たれていました。

この型の魔除けは効果が斑になるので、それなりに注意は必用です。


少し雪が強くなってきたので、僕達は雪避け眼鏡を掛けていました。


「・・復活の使徒してなかったら何してたかな?」


マイサが不意に言ってきました。


「私、どうだろ? お母さんみたいに機織りと畑と鶏の世話だけで別によかったんだけど。あ、教会学校の初等部の手伝いもしたかったな」


上手く応えるのが難しいですが、黙ってもいられません。


「僕はそのまま。郷で狩人で素材の採集業を仕事。中等学校くらいは卒業したかったかな?」


「うん。・・皆、郷で暮らしてた。オリィは若い内は自警団で、年取ったら酒場の店主ね」


「ありそう」


それもいい。


「はぁ? 勝手に決めんなよ。俺は都会に出てたぜ?」


「都会で何すんだよう?」


「何かすんだよっ! マイサも1回都会行きたかったとか言ってたろ?」


「そんなの観光。ネムリ郷が一番だもん」


「よく使命がどうとか言ってなかったっけ?」


「使命は使命だよっ、どうとか、とか言わないでよ!」


何かマズい流れにっ、


「喧嘩になるから」


「オイ、ちゃんと犬を見ろよぉ、危ないぞぉ?」


「おおっ? ナイシィッ! ナイシィッ!」


慌てて綱を取るオリィ。そこで、あったかもしれない普通の暮らしの話、は途切れてしまいました。



途中ではやはり野生の魔物との交戦もあります。モイズン地方での最初の戦闘の相手は、雪茸魔(スノーファンガス)の群れでした。

体長1,5ベル(1メートル)程度のキノコ型の魔物です。毒胞子を放つ他、口だけはあってそこから冷気の息を吐きます。菌糸の根を張る生態ではありますが、狩りをする時は飛び上がって動き回りますっ。


冒険家、カーメン・ストレイシープの手記によると、


「コイツは食える。だが、下処理は必要だ。まず、ちゃんと殺す。菌類系モンスターはしぶといし、何なら死んでも身体の菌は生きてる。死んだというより、魔物として動き回れなくなった状態、と言った方が正確だろう。とにかくしっかりブチ殺したら、毒胞子が溜まってる笠と硬い根元を切り落とし、残った胴体の表面を全て削ぎ落とす。舌と冷気を吐く器官は売れるし食えないから切除、灰汁もあるから塩で茹でる。それから・・」


うん、レシピですね。得意の別称提案まで長いので割愛しましょう。


とにかく僕達はスノーファンガスの群れと対峙していました。


「参戦しま~す!」


常温水槽からズーレアさんも魚からオーシャンピープルの姿に変化して飛び出してきました。

ラチャさんの御付きの2人はたくさんいる犬橇の犬達が散り散りになったりしないよう、距離を取らせて落ち着かせるてくれました。

雪原では普通の平原の騾馬以上に犬橇は大事で、犬は興奮し易い動物です。必要な役回りでした。


「ペス! 毒があるから食べちゃダメだぞぅ?」


「がぅっ」


「盾よ!」


オリィは前衛と見た、自分とラチャさんとペスにだけディフェンドの守りを付与しました。


「風よっ」


僕はスノーファンガス達が一斉に吐いた冷たい息をガストの魔法で相殺しました。あちこち凍り付きます。


「ふぅ・・」


購入した鬼火(おにび)のワンドに炎のマナを溜め始めるマイサ。


ペスは素早く動き回りながら毛針(けばり)を断続的に撃って、スノーファンガス達を撹乱し始め、ラチャさんは火の属性の小剣を二刀流に構えてスノーファンガス達を切り伏せ焼き払い始めました。ちょっと香ばしい、いい匂いがします!


「ほっ」


僕はヒートキャッチグローブで握った野火(のび)のブーメランを投げ付け、不知火(しらぬい)の手槍を手に突進するオリィの頭上を追い越させて、飛び上がってきた2体のスノーファンガスを切り裂き焼いて仕止めました。


「枷を!」


拘束魔法(バインド)の光の輪で数体動きを封じて輪を操って1ヵ所に纏めるズーレアさん。


オリィは毒の胞子を嫌ったのもあるんでしょうが仕止めるのではなく、燃える穂先を振り回してなるべくスノーファンガス達を拘束された個体達が転がされた1ヵ所に集めるよう立ち回りました。

ラチャさんも察して目線でペスに促し、スノーファンガス達を1ヵ所に誘導しつつ、距離を取りだします。

僕も2投目は誘導優先にしました。そこへ、


「爆ぜよっ!」


最大のマナで火球魔法(ファイアボム)を放つマイサ。


ドォーーンッッッ!!!


爆裂! 纏めて仕止めました。


「百発百中賞っっ」


満足そうなマイサでした。



その後も演習と旅費用の素材集めを兼ねて軽く寒冷地の魔物達と交戦しつつ、2ヶ所の雪を避ける為に森の中に作られている魔除けの野営地2ヶ所で1泊ずつして、件の仮設宿営地に着きました。


やっぱり窮屈みたいで、犬を犬舎に預け終わるとズーレアさんはすぐに水槽から出てオーシャンピープルの姿に戻りました。


「あれ? 暖かいですね」


「だよね、ポカポカ賞」


小じんまりとした宿営地は何だか温かくて、結構降っているので雪もあまり積もらず少し湿度もありました。


「寒冷地でしっかりした宿営地を造るのはちょっと面倒でよぉ、保温系の魔法道具や素材をあちこち使ってんだ。排水用の溝を軽く整備したらすぐ使えるからなぁ」


「お金は掛かりそうですね」


「長く使う予定は無いからよぉ」


「羊とかは飼ってねぇんだな」


「玉子食べたいってヤツがわりといるから、飼い慣らした冬家鴨(スノーダック)の鳥小屋はあるぜぇ?」


僕達は宿泊用のテント向かったのですが、宿営地の野伏達は僕ら3人とズーレアさんに興味津々の様子でした。


人がいる気配はしたけどテントに入ると、


「あっ」


ビックリ! 中にはノームが2人いました。ヤンベさんじゃないです。たぶん男性と女性。2人とも成人であることは間違いないですが、ちょっと年齢はわからないです。


向こうもギョッとしていましたが、それは僕らやズーレアさんではなく中まで付いてくるペスに対してでした。


「魔法の縛り無しでダイアーウルフを連れ回してるのか?」


「2000年の間に僻地で魔物を飼い慣らすフェザーフットの多いことっ、原始的な文化だ」


「・・モイズン地方の野伏や野外活動する職業者は犬橇とダイアーウルフや魔犬(ワーグ)を使いこなすもんだぜぇ? というか、ノームが来てるなんて聞いてないだがよぉ」


迷惑顔のラチャさん。


「一番近い転送門が今朝開いた。そこから転送術と移送用のゴーレムで来たのさ。知らせはしたが、入れ違いだったな」


「安心しろ。中世のようだが、犬橇の定員は理解しているし、我々も用意できたゴーレムも戦闘に特化してない。状況の確認と迅速な連絡の為に来た。ドワーフどもにもすぐ近くの宿営地にノームも来てると言ってやるといい」


「信心の無いヤツらだ。多少盛って脅すのが効果的だ。手早く飛行船を造らせるんだ」


魔法石(まほうせき)の欠片の差し入れもあるぞ? この時代で用意できる3級品だがな。ハッ」


マナを回復する高価な魔法石の欠片を十数個持ってきてくれていました。


「どうも。えっと、助かります」


僕が受け取っていいのかな?


「・・微妙に口悪いな」


「・・ヤンベさんて、人当たり良かったんだね」


オリィとマイサはボソボソ話した結果、ノームの2人に睨まれて慌てて知らん顔していました。


「わたくしはズーレア・オーロラタクト。王達の命でドワーフの復活に立ち会います」


ズーレアさんがふわりと浮いて進み出ました。


「オイオイ、北海の社(ほっかいのやしろ)の巫女じゃないか?」


「生き残ったのか。あんたも上手くやったな。しかし、小間使いのようなことに派遣されるとは、我らより個体数が足りないようだ。ハハッ」


冷笑するノーム2人・・


「それぞれ巡り合わせた役割がありますので」


「そうだぜぇ? ウチのペス何かは『ノームを咥える』のが得意だからよぉ」


「がぁぅっ」


促されたペスがノーム2人にじゃれ付いて軽々帯を咥えて持ち上げ出して、2人は大慌てしました。


「わぁっ? よせよせ!」


「外交問題になるぞっ? うっはぁーっ??」


ペス、大活躍なのでした。

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