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二話:彼と彼女

「あんた誰?」

 智は目覚めた先に、見知らぬ少女が逆さまで立っていたので、つい口走ってしまった。その後すぐに、もっと考えてから言うんだったと後悔する。

(落ち着け、まずは状況を確認するんだ)

 仰向け状態の智は、とりあえず視界に映る情報を整理した。灰色の石で出来た空間、数人のローブを着た人々、謎の柱。そして、腰まで届く金色の髪をした、綺麗と言うより可愛い少女。彼女に何者かと質問してしまった以上、話を続けるしかない。会話から情報を引き出し、こちらの有利になるようしなければ。ん? 彼女に日本語は通じるのか?

「失礼しました。私はクラントクス王国第4王女、ファリシア・イルペンテス・サラカートです。どうぞお見知りおきを」

 言ってファリシア・イルペンテス・サラカートは、白い衣装のスカート部分を手で広げ、腰を落とし、戻した。智は、その流れるような動作を見ながら内心驚く。ファリシア・イルペンテス・サラカートの言葉は明らかに日本語だ。だが、口元がおかしい。まるで、映画の吹き替えなのである。それともう一つ。今し方とった、恐らく礼の動作なのだろうが、一連の動きが余りにも美しすぎる事。この美しいとは、体の力加減・間の取り方に無駄が無い事を指す。つまり、彼女は礼の動作に慣れているのだ。それも人間が歩くほどに。美しいとは罪であり至高だが、これほどのものを見るのは久々である。映画の女優とは比べ物にならない。それと関連してだが、うすうす感じた事でもあるのだが、この場所、この人、この動作。もしかするとここは、日本どころか、地球でもないのではないか? 今、流行はやりの異世界ではないか? クラントクス王国など聞いたことも無い。智は、ファリシア・イルペンテス・サラカートの姿を観察した。彼女は明らかに日本人のそれではない。鮮やかな金髪と、幼さの残る丸めの子顔に、日光に透ける葉の様な瞳。背は智の胸ほどで、育ちの良さからか気品に溢れている。しかしここで、一つ言っておくとするならば。

 智は可愛いより、綺麗が好きなのだ。

「しかし仮に異世界だとすると、森に出るのが相場のはず。何故こんな所へ……」

 智は呟き、閃いた。

 召喚か。と、するなら何らかの脅威から守って欲しいが一番在りそうだな。

 実際の所、こんな推測はまず当たらないだろうし。それなら、どこぞの小国にでも連れ込まれたと考えた方が在りそうなのだが。日本語を喋っているにも拘らず、口の動きが合わない。これはどう考えても異常であり、そしてそれが、異世界などと言う非常識に繋がった要素でもある。

「そのファリシア・イルペンテス・サラカートさんが、俺に何の用ですかね?」

 智は心の中で苦悩した末に、とりあえず当たり障りの無さそうな質問をしてみた。ファリシア・イルペンテス・サラカートの様子から察するに、智はやはり、何か重要な立ち位置に居るようだ。嘘でなければ一国の王女が、ただの一般人である智に礼をとる。もしかすると、勇者系か?

「ファリスで結構です、神様」

(はい?)

 そこで智はやっと、体を起こして立ち上がった。ふらつく頭を手で押さえる。その後、首と肩を動かす。妙に軽い。ちなみになぜずっと倒れたままだったかと聞かれれば、単純に体が動かなかったからだ。と言っても、首から上は動いたので会話する分には困らなかったが。まあそんな事はさておき、問題にすべきは今しがたファリスが言った神様発言だろう。これはどう言う事なのか? どう言うべきか分からず黙っていると、しばしの間を挟み、ファリスが説明を始めた。

「この国には凄まじい力を持った存在――私達人間は、神と呼ばせて頂いているのですが。神を異世界から召喚する秘儀が伝えられているのです。あくまで、私達がそう呼んでいるだけなので、貴方様が知らないのも無理はないでしょう」

(神? 俺が?)

 俺は、ちょっと友人が少ないただの高校生だ。断じて神などではない。

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