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第36話「謝礼、立ち会い」

栞との登校中。

やはり避けられぬ、この話題。


「さーて、兄貴にどんな高価なものを買ってもらおうかな」

「純粋に欲しいものを考えてくれよ。

あんまり高いと買うに買えないぞ」

「昨日買ってもらった腕時計を質屋に入れればいいじゃん」

「親からもらった大事な腕時計を

1日で質屋に入れるの、人でなしすぎるだろ」

「冗談だって」


あんまり冗談に聞こえなかったけどな。


「うーん…じゃあ水着を買ってもらおうかな」

「お前去年も買ってたじゃん。サイズ変わってないだろ」


身長も伸びてないし、胸も、まあ、うん。


「今は兄貴が私に大感謝するフェーズなのに、

なんでそんなカスみたいなこと考えてんの??」

「本当にすみませんでした」


もうこれから、考えてることは全て栞に読み取られる

前提で生きていくしかないのかもしれない。


「新しいデザインのが欲しいの!

そもそもサイズ変わってるし!!」

「わかったよ。大体いくらくらいなんだ?」

「童貞だからわからんか〜w」

「じゃあな、栞」

「ウソウソ、待って待って」


栞を置いて立ち去ろうとしたが、秒で回り込まれた。


「2万くらいかなあ」


たっか。でもギリギリ買ってもらえそうな

ラインを攻めてきたな。

栞は本当にそういうところの勘所がすごい。


「…わかったよ。今回は本当に助かったから、買ってやる」

「うわ〜ありがと兄貴!もう今日買いに行こ!

兄貴の気が変わる前に」

「別にいいよ。放課後に教室に迎えに行けばいいか?」


流石に今回ばかりは俺が迎えに行かないとな。


「うん。あ、麗奈さんもちゃんと連れてきなよ?」

「わかってるよ。また置いてけぼりにしたらどうなることか」

「麗奈さんに水着試着させちゃお」


そういう理由かよ。

なんで俺よりも栞の方が下心が先行してるんだよ。


「イヴにショッピングモールを案内したかったし、

丁度良かったかもな」

「確かに。これから先ちょくちょく使うだろうし」

「そういえば、ショッピングモールの名前って

ナインモールだったよな。うわ、絶対九条院グループじゃんか」


この街には九条院グループの施設しかないのか…?


「なおさらイヴを連れて行った方が良さそうだね」

「水着買ってるだけで絡まれることは

ないだろうが…そうだな」


そんなことを話しながら、学校へと向かうのだった。



////



つつがなく授業も終わり、放課後。

俺は教室にいた麗奈に声を掛けた。

流石にもう落ち着いているだろう。


「なあ麗奈。今日ナインモールに栞の水着を買いに行くんだが、

良かったら一緒にどうだ?俺、女物のことわからないし」


昨日の今日で麗奈を置いていくのが怖いから、とは言えない。


「うん、いいよ?ヒマだし」


ウチに引っ越してからも麗奈はバイトを続けているが、

シフトは減らしたらしい。

懐が逼迫してないのだからそれでいい。


麗奈とともに1-Cの教室へ行き、栞・イヴと合流。

俺と麗奈が2人で訪れたものだから、昨日よりも

さらに騒がれてしまった。麗奈が有名人なの忘れてた。



学校からナインモールへ向かう道すがら。

俺は麗奈とイヴへ話しかけた。


「ということで、栞の水着を買いに行くんだが…

2人も水着買うのか?」

「兄貴、セクハラだよ」


お前にだけは言われたくなさすぎる。

純粋に、もし買う予定がないなら付き合わせるのも

ちょっと申し訳ないなと思って聞いてみただけだ。


「お金に余裕できたし、新しいの買おっかな」


麗奈は買う気らしい。良かったな栞、合法的に

麗奈の水着試着が見れそうだぞ……合法的なのか?


「私は着る予定がありませんからね…」


一方、イヴは買う気ないらしい。かといって

イヴだけ単独行動させるのも微妙だ。どうしたものか。


「私だって別に着る予定はないよ。予定は作ればいいじゃん。

みんなで一緒にプール行こっか」

「麗奈…ぜひ行きたいです!では水着が必要ですね」


心なしか、麗奈とイヴの距離が少し縮まったような気がする。

今朝、2人で登校した時した時に仲良くなったのかもな。



////



ナインモールに到着。

女物の水着コーナーへとやってきた。


「じゃあみなさんごゆっくり。俺はコーナーの外にいるから、

栞の水着を会計するタイミングになったら呼んでくれ」

「兄貴もこっち来んのよ」

「なんでだよ!気まずいだろお互い」

「いやー男代表として兄貴の意見も

聞きたいと思うけど?そうですよね?」


栞は、麗奈とイヴに問いかける。


「ま、蒼の意見は欲しいかな」

「恥ずかしいですが…日本人男性の感覚は全くわからないので。

アオイが居てくれた方が心強いです」


栞は、絶対に俺がたじろぐ姿を見たいだけだ。

お前だけが俺の心を読めると思うなよ。

とはいえ、麗奈とイヴを無下にもできない。


「わかったよ…まあ1人で入るわけじゃないからよしとするか」

「じゃ、みんなで水着を選びましょ〜」


女子3人、仲良くキャッキャと水着を選び始めた。

これは長くなるぞ…栞の服選びに何度も付き合わされたからわかる。


けどまあ、みんな楽しそうだしいいか。

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