第3話「妹尋問 vol.1」
学校から家への帰り道。
栞は俺から奪ったサイダーを飲んでいた。
「ぷは〜やっぱ美味しいね〜これ」
「俺も喉乾いたんだが?返してくれ」
「しょうがないな〜」
栞からサイダーを取り返す。
「ごくごく…やっと飲めた」
「兄貴は贅沢者だよ。私と間接キスなんて、そこらの男子なら卒倒モノだよ?
私じゃ満足できず、桐谷さんに手出しちゃうなんて」
「いやお前妹じゃん…そもそも桐谷に手なんて出してないし」
手は出していない。口は出したかも。
「これまでロクに話したこともないでしょ?なんでサイダーなんてもらったのよ」
"桐谷の夢の中に入った"なんて栞に知られたら、さらに機嫌を損ねるだろうな...
「桐谷が授業中に問題解かされてさ。
答えをこっそり教えてあげたんだよ。そのお礼らしい」
ギリギリ嘘は吐いていない。我ながら天才的な返しだ。
「まあ兄貴、頭いいもんね」
「寝てる最中に勉強してるだけだって。栞は知ってるだろ?」
「まーそうだけどさ…なんかスッキリしないなあ。
喉に小骨が刺さってる感じというか」
それJKの間で流行ってるの?
「なんか罪滅ぼしして、兄貴」
「罪犯してないんだが!?まあいいか…じゃあお願いでも考えておいてくれ」
「え!?いいの!?ゴネ得〜〜」
「やっぱなしで」
「ウソウソ!え〜何をお願いしよっかな〜」
なんとか誤魔化せた。栞の機嫌も直ったし。
我ながら、ちょっと妹に甘すぎるかもしれないな…
////
無事帰宅した俺と栞。
お腹も空いたし、晩御飯でも作ろうかな。
「今日はハンバーグでいいか?」
「なんでもいいよ。兄貴の料理、全部美味しいもん」
「料理も夢の中で練習できるからな。
中華鍋を振る筋力は夢から持ち帰れないけど、
焼き加減のコツとかは持ち帰れるから」
「ホント便利だよね。兄貴のその能力」
「そうだな。割と孤独だけど」
だからつい、桐谷にも話しかけてしまったんだ。
オタクの分際で。
「……あ!罪滅ぼしのお願い決めた!
ひさしぶりに私の夢に入ってきてよ」
「別にいいけど。何かやりたいことでもあるのか?」
「なんか体育でバドミントンやることになってさ。
こっそり練習してクラスで無双してやろうと思って」
「なるほどね。さっきも言ったけど、フィジカルは持ち帰れないからな」
「全然いいって。女子同士の戦いなんだし、
位置取りとかショットの打ち分けの方が重要でしょ」
「確かにそうかも...体育館の夢を見れるといいな」
極論、白くて何もない部屋の夢を見られてしまうと、
バドミントンの練習をするのが非常に難しくなる。
ラケットも羽根もコートもないからだ。
その場合は虚無の鬼ごっこを開催するくらいしかなくなるんだが、
栞はそれでも納得してくれるんだろうか...
そんなことを考えながら、てきぱきとハンバーグ作りを進める。
無心でタネをこねている間、ふと今日の桐谷の一件を思い出した。
なんか勢いで小テストの答え教えちゃったけど、
桐谷には感謝されるどころか勘繰られている気がする。
正直ちょっとやりすぎた。何も全問教えなくてもよかったな。
次からは、やるにしても控えめにしよう。
そもそも、次なんてないだろうけど。
////
栞と二人で晩御飯を食べ終え、夜も更けてきた。
ぼちぼち、栞のお願いを叶える時間だろうか。
「同じ部屋で寝ないと夢に入れない訳だけど…
俺が栞の部屋で寝ればいいか?」
「うん、そうして」
「じゃあ床に来客用の布団敷いて寝るわ」
「私のベッドで一緒に寝ればいいじゃん」
「もう俺ら高校生だし、そういうワケにもいかないだろ」
「別に気にしないのに。まあ兄貴の好きにすれば」
「ああ」
押入れから滅多に使わない布団を引っ張り出し、
栞の部屋に敷いた。布団で寝るの久しぶりだな…
俺も栞もそれぞれの寝床に入り、電気を消した。
「それじゃ…おやすみ、兄貴。また後でね」
「ああ…おやすみ」
俺は寝る環境が変わっても、割と寝られるタイプ。
小テスト中に昼寝したにも関わらず、
今回もあっという間に眠りに落ちていった——
そして気が付くと、
白くて何もない部屋に立っていた。
「だからこれだとバドミントンできないんだっての!!」
思わず叫んでしまった。俺がフラグを立てたせいか?




