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第2話「疑念と満点」

時は経ち、翌日の数学の時間。

小テスト返却の時間がやってきた。


俺は無事に満点を取れていた。

が、正直なところそこには興味がなかった。


全員分の小テストの返却を終え、氷室先生が話し始める。



「今回の小テストだけど、満点は2人!

神城くんと桐谷さん!拍手!!」


わーっと拍手は起こったものの、正直クラスはどよめいていた。


「え、桐谷...?」

「神城はわかるとして...なんで?」

「桐谷さんって勉強できたっけ...」



無理もない。カンニングを疑いたくもなるだろう。

が、桐谷の他に唯一満点の俺は、桐谷よりも後ろの席なのだ。

カンニングのしようがない。()()()()()()



「神城くんはともかく…桐谷さん、すごいわね!

見直したわ。塾にでも通い始めたの?」


ちょっとは俺も褒めてくれ。


「いや、なんか......お告げが」

「お告げ?神頼みってこと?」

「いや違......そもそも頼んでないし......」


思わず笑ってしまった。嘘つけない性格なんだな、桐谷。


「それから、神城くん。放課後ちょっと職員室に来て」

「え?はい...」



一方俺は、褒められるどころか呼び出されてしまった。

夢での出来事など知る由もないと思うのだが、

実質的にカンニングに加担してしまったので、若干の罪悪感はある。


ふと桐谷が、こちらを怪訝な顔で見つめているのが見えた。

気付かないフリ、気付かないフリ。



そして放課後。

職員室へ入り、氷室先生の席へと向かった。



「わざわざ呼び出しちゃって悪いわね、神城くん。

小テスト満点おめでとう」

「ありがとうございます」


褒められた。


「アナタ、難しい問題を用意してもいっつも涼しい顔で解いちゃうわよね...

たまには先生に質問してくれてもいいのよ?」

「それって勉強以外のことを質問してもいいんですか」

「何が聞きたいのよ…?」

「なんだろう、合コンの必勝法とか…将来の参考に」

「あ、もしかして煽ってる???」


人はなぜ、見えている地雷を踏んでしまうのだろう。


「すいません。本当すいません」

「満点に免じて、1回だけ許してあげるわ…本題に入るわよ」


やはりお褒めの言葉は本題ではないようだ。


「桐谷さん。今回満点だったでしょ?あの子、普段から赤点スレスレだし、

小テストなんてそもそも真面目にやるような子じゃないのよ。

他に満点だったのアナタだけだし、何か事情を知らないかと思って」

「俺、そもそも桐谷と仲良いわけじゃないですからね...

鉛筆でも転がしたんじゃないですか?今回4択でしたし」


すっとぼける俺。


「でも今どき鉛筆使ってる子なんているかしら?」

「鉛筆型シャーペン?とかあるじゃないですか」

「あんなの小学5年生女子しか使わないのよ」


...そうなの?


「まあいいわ。まぐれってことにしておきます。

4択の全8問だから、65000回に1回くらいの確率だけど」

「ちなみに、俺と桐谷の数学の評価は5になるんですか」

「約束は約束だから…してあげるわよ」

「あんな約束しちゃって良かったんですか?

これから俺が先生に何をしたって、評価下げられないですからね」

「何をするつもりなのよ…」

「冗談です。失礼します」



雑談もそこそこに、職員室を後にした。



////



教室に戻ると、みんな部活に行ってしまっていて、

誰もいなかった。





()()()()()()()



こいつ、絶対待ち伏せしてたな…



「......ねえ」

「どうした?」

「先生に呼び出されてたけど...何の話だったの」

「小テスト満点おめでとうって話。

俺と桐谷の数学の評価は5で確定だって」

「ふぅん......」

「あんまり嬉しくなさそうだな」

「いや、嬉しいは嬉しいけど......もっと重要なことがあんの。

変なヤツだと思わないで聞いてほしいんだけど」

「ああ」

「小テスト中に居眠りしてたら、

夢の中でアンタに答え全部教えてもらったんだ」

「へえ…不思議なこともあるもんだな」


すっとぼける俺。今日すっとぼけてばっかりだ。


「そりゃあ変な夢をみることはあると思うけどさ.....

全問正解なんてことある?流石にありえなくない?」


65000回に1回くらいの確率だからね。


「時にはそういうこともあるんじゃないか?

夢って、いまだに科学で解明しきれてないらしいし」

「なーんか腑に落ちないんだよね……

喉に小骨が刺さってる感じというか」


意外と鋭いな、桐谷。


「たまたまだって。

結果良ければすべて良し、別に悩むこともないだろ」


もう桐谷の夢にお邪魔することもないだろう。

桐谷が不思議な体験をするのも、これきりだ。


「あとさ......」

「まだ何かあるのか?」

「このサイダーあげる」

「え?」


俺が桐谷の夢の中で購入したサイダーだ。


「アンタこれ好きなのかなって。

お礼される筋合いないかもだけど、受け取って」

「ああ…ありがとう」



桐谷、金銭的に苦しいはずなのに、夢の中で助けられたかもというだけで

サイダーを奢ってくれたのか?凄い律儀なやつだな...


俺が予想外のサイダーに動揺していると、

ガラッ!と勢いよく教室のドアが開いた。



そして静寂を切り裂くような一声。



「兄貴!さっさと帰ろ!」



彼女は神城 栞(かみしろしおり)。俺の妹だ。

高校1年生、身長は一般的。足が太いが胸はない。

黒髪のミディアムボブで、外見だけは清楚に見える。草。



「なんかカスみたいなこと考えてない???」

「なんだよそれ...別に考えてないよ」

「ところで兄貴、桐谷さんと2人で何をしてたの...?」


栞は疑うような目つきを向けてくる。


「別に何も。サイダーもらっただけ」

「兄貴みたいなクソ真面目根暗陰キャオタクが

何をどうしたら学園一のギャルにサイダーをもらうのよ」

「口に出すぶん、お前の方がカスでは?」

「あ!!やっぱカスみたいなこと考えてたんじゃん!!」


荒ぶる栞の様子に、桐谷が呆気に取られている。

いつまでもこんなやり取りを見せるわけにはいかない。

神城家の恥。適当に切り上げなければ。


「じゃあ桐谷、俺たちもう行くよ...

サイダーありがとう。コンビニバイト頑張って」

「え、うん......また明日ね」

「ああ、また明日」



俺は若干不機嫌な栞とともに教室を後にした。

しかもサイダーをひったくられた。返せ。



「なんで私がコンビニでバイトしてるの知ってんの...?」

「アイツ、何者…?」



教室に取り残された麗奈は、一人呟いたのだった。


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