第29話「ゲーミングお嬢様」
三者面談が終わった。意味あったんだろうか。
俺はギャル好きだというレッテルを
貼られて終わったような気がする。
「私はこのまま出掛けてくるわ。蒼はどうする?」
「栞とイヴのクラスでも覗きに行こうかな。
もう帰ってるかもしれないけど」
昼休みのあの盛り上がり方だと、
まだイヴが捕まってる可能性も全然ある。
「わかったわ。イヴはあなたのボディガードだけど…
あなたもイヴのこと、よろしく頼むわね」
「ああ、任せとけ」
母さんの表情が、夢の中の橘博士と被って見えた。
母さんもまた、イヴのことを娘のように
想っているんだろうな。
1-Cの教室を覗きに来た。
一問一答コーナーは終わったようだが、
相変わらず栞とイヴはクラスメイトと談笑している模様。
うーん、邪魔するもの悪いしな。
イヴに友達ができるなら、それに越したことはない。
静かに立ち去ろうとしたが、イヴに見つかってしまった。
なんという察知能力。俺の顔は見えなかったはずなのに。
「アオイ。三者面談は終わったのですね」
「ああ」
「神城先輩だ…」
「この間の期末、学年トップだったらしいぞ」
「栞ちゃんに似て、綺麗な顔だよね…」
ざわめきでよく聞き取れないが、
栞のクラスメイトたちに噂されている。
別学年の教室って気まずいんだよな。
栞はいつも何食わぬ顔で俺の教室に入ってくるけど。
「ねー兄貴!イヴと3人で遊びに行こうよ」
「いやいや、クラスメイトと行ってこいよ」
「初日からそれはハードル高いって。
こういうのは徐々に慣らしていかないと」
コイツ、イヴを独占して無双感を
味わおうとしているだけじゃないのか?
だが栞の言うことも一理あるか。
「イヴはどうしたい?どうせこれから先、高校生活は長い。
俺らと遊んでもいいし、クラスメイトと遊んでもいいんだが」
「では…今日はアオイとシオリに、
ゲームセンターを案内してほしいです」
ゲーセンを?まあ、日本の華のひとつではあるか。
それに、大人数で行くにはあまり向かない場所でもある。
クラスメイトたちを連れてゾロゾロ行くよりも、
数人くらいがちょうどいいかもしれない。
「1-Cのみんな、ごめん。今日のところはイヴを借りていくけど、
これからイヴと仲良くしてくれると嬉しい」
みんな、お任せくださいと言わんばかりにガッツポーズしていた。
こんなクラスならイヴも安心かな。
彼らに見送られ、1-Cの教室を後にしたのだった。
////
「蒼は、モテるのですね」
教室から校門へ向かう道すがら、イヴは少し悔しそうに言った。
クラスメイトが自分に興味津々だったのに、
水を差してしまったからだろうか…?
「兄貴はモテるよ。勉強もできるし、
ゲームもスポーツも大抵強いし、顔も悪くないし。
こーんなクソ陰キャオタクなのに」
クソ陰キャオタクっていうな。
オタクではあるが、陰キャというほどではないはず。
あと、そもそもクソではない。
「兄貴の連絡先教えて〜とか、告白の約束取り付けて〜とか。
たまに頼まれるもん。全部ブチのめしてわからせてるけど」
女の子をブチのめすなよ。
「お前…せっかくの貴重なチャンスを」
「だってみんな、兄貴と喋ったこともないんだよ?
なのに、噂で好きになってるだけだもん。
そんな軽薄な奴らに、兄貴を預けるワケにはいかないの」
栞なりに俺を守っているらしい。
でもたぶんその守り、過剰だと思うんですよね…
「あーあー、どうすんだこんなんで一生独身だったら」
「責任取って、私がずっと一緒に居てあげるよ。
死ぬまで一生、面倒見てね」
それはどちらかというと俺が責任を取っているのでは?
「お前、結婚願望とかないのかよ」
「ない。モテたいだけ」
歪んでいる。コイツの無双グセはどこから来たんだ。
「…兄貴は、結婚したいの?」
「考えたこともない。けど、
大人になったらしたくなるのかもな」
「結婚までいかなくても…
彼女とか、欲しくないんですか」
急にイヴに食いつかれた。
「現状に満足してるんだ。彼女ができて、
今の生活を手放すくらいなら正直いらないよ」
「なるほど…では、今の延長であれば良いんですね?」
「今の延長…?そうだな、そんなものがあるのなら」
今の延長ってなんだろう。
そして栞が、なんだか考え込むような表情をしていた。
「そんなことよりどのゲーセン行く?
ラウンドナインの中にあるヤツでいいか。綺麗だし」
ゲーセンは他にもあるが、イヴが初心者ということも
考慮すると、ラウンドナインにするのが妥当だろう。
俺が栞とイヴに問いかけた、その時。
「やはりラウンドナインですか…いつ出発しますの?
わたくしも同行しますわ」
背後から声を掛けられ、振り返る。
「九条院」
今まさに校門を出ようとする俺たちの後ろに、
九条院月華が立っていたのだった。




