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第28話「三者面談と性癖の開示」

放課後。三者面談の時間が迫っている。

俺が廊下の待機イスに座っていると、

母さんがやってきた。


「そろそろ時間よね」

「ああ」

「アンタ、先生に怒られるようなこと

してないでしょうね」

「全然。むしろ氷室先生には好印象を

持ってもらってると思うけど」


なぜなら成績が良いから。睡眠学習のおかげで。

麗奈に勉強を教えるようになってから、

さらに成績は向上中なのだ。


「聞くの忘れてたけど、進路希望はなんて書いたのよ」

「帝都理科大を第一志望にして、第二第三は適当に」

「帝都理科大?なんでまた」

「麗奈を帝都理科大に合格させるって約束したから。

自分もそこを目指したほうが手っ取り早いなと思って」

「アンタ、ちゃんと自分がやりたいことで選びなさいよ…

あそこ偏差値高いし、別に反対とまでは言わないけど」

「現状、これといってやりたいことがないんだよ。

睡眠を研究するのも1つの道だとは思ったけど、

それは母さんが極めているようだから。

自分の能力の解明を目指すとしても、

何か別のアプローチを探したいなって思ってる」

「まあ、高校生の段階で

夢を選択するというのは難しいことだけど」

「帝都理科大で、何か俺の能力解明に役立つような

学科とかないのかな…一応パンフレットはあるんだけど」


母さんに、帝都理科大のパンフレットを手渡す。

進路相談室に置いてあったので、もらっておいたのだ。

母さんはパンフレットに目を通したのち、こう続けた。


「…アニムスの入浴剤の件があったでしょう?

どの成分が有効であるかはすでに研究室でも判明していたものの、

入浴剤という形が最適だという答えには辿り着けなかった。

そこで今、重要視されてるのが異所性嗅覚(いしょせいきゅうかく)受容体なの」

「異所性嗅覚受容体??」


聞いたことがない単語すぎる。なんだそれは。


「匂いって、鼻で感じるものだと思っているでしょう?」

「そりゃあそうだろ」

「実は、皮膚、心臓、腸、脳などにも

匂いを感じるセンサーがあることがわかってきたのよ。

これが異所性嗅覚受容体。わかりやすく言うと、

『変なところにある匂いセンサー』って意味ね」


なるほど。わかりやすい。


「アニムスの入浴剤は、おそらくこれを応用してる。

ただこれ睡眠科学の分野じゃなくて、神経薬理学の分野なのよね。

私たちの専門外だから、やや出遅れているのが現状よ」

「あー、それで神経薬理学の道に進むのはアリなんじゃないかって話?」

「そう。帝都理科大は、神経薬理学に力を入れている大学みたいだから。

パイプができるだけでありがたいし、

蒼が優秀な研究者になってくれれば言うことないわね」

「ハードル高いな…でも、考えてみるよ」


どのみちアテはなかったし。

夏休みあたり麗奈と一緒に、

オープンキャンパスでも覗きにいってみるかな。



「神城く〜ん、お待たせ」


氷室先生の呼ぶ声が聞こえる。

俺と母さんは、先生の待つ教室へと足を踏み入れた。



////



三者面談開始。

氷室先生に促されるまま、

俺と母さんは向かいの席についた。


「神城くんは本当に成績優秀で…

この間の期末テストも学年1位だったんですよ」

「あら、そうなんですか!

ちょっと蒼、そういうことは報告しなさいよ」


母さんに小突かれる。


「だって母さん日本にいないし、教えたところで

送ってくれる生活費が増額されるとかないだろ」

「バカね、お祝いくらいしてあげるわ。

氷室先生、蒼の生活態度の方はどうでしょうか」

「いたって良好ですよ。特に問題とかも起こしていませんし。

ただまあ、ちょ〜っと私のことをからかう節がありますけど〜?」


先生。チクらないで。


「蒼ったら…すみません。他に気になる点はありますか?」

「そういえば最近、桐谷さんと仲良いわよね?神城くん」

「そうですかね…」

「これまで話したこともない、くらいの感じだったのに。

親しげにしているのをよく見るもの。やっぱりギャルがいいの?」

「やっぱりギャルがいいの?蒼」


三者面談ってこういう話する場所じゃないだろ!?

いいじゃんか。人生、ギャルと仲良くなることだってある。


「ギャルといいつつ真面目なんですよ桐谷は。

実際、桐谷だって期末の成績、すごかったでしょ」

「ええ。まさか神城くんに並んで2位だなんてね。

あ、もしかして桐谷さんに勉強教えてあげたんでしょ?」

「まあ、はい」


夢の中でだけど。別に勉強を教えたことを隠す必要はない。


「は〜やっぱギャルか〜。私もギャルっぽい方がモテるのかな〜」

「先生は、真面目さをプッシュした方が

強みがいかせるんじゃないかしら?」


何の話をしとんじゃ。女子会か。


「ちなみに提出してもらった進路希望だけど…

帝都理科大に行きたいの?」

「はい。ちょうど気になる学科も、見つかったところなので」

「帝都理科大は理系の中でも難関大学だから難しいんだけど、

神城くんなら問題なく合格できると思うわ。頑張ってね」

「ありがとうございます」

「ちなみに桐谷さんも、帝都理科大を志望してたよね?」


他生徒の情報をリークすな。


「やっぱギャルがいいの、神城くん?」

「やっぱギャルがいいのね、蒼?」


マジでなんなんだこの面談。助けて。

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