第26話「大魔神と良心」
翌朝。
目を覚ますと、隣には顔を真っ赤にしたイヴがいた。
「おはよう、イヴ」
「…おはようございます、アオイ」
イヴは明らかに様子がヘンだ。
イヴの夢には入ったものの、
イヴには会っていないから原因がわからない。
「兄貴〜おはよう」
「蒼〜今日は学校だよ〜」
栞と麗奈が俺を起こしに来た。
俺のベッドの上で赤面し、なんでか
微妙に服もはだけているイヴを目撃された。
「兄貴…?」
「アンタほんとにさあ…
何人の女と寝れば気が済むの」
「いやだから違うって!ここ俺の部屋だろ?
イヴが訪ねてきたんだ」
「アオイの言っていることは本当です。
アオイは何も悪くありません!」
イヴはすかさず俺を庇ってくれた。
なんていい子なんだ。
どっかのうっかりお嬢様に見せてやりたいよ。
「でもイヴ、なんだか顔が赤いよ?
兄貴に何かされたんじゃないの?」
「コイツ、昨日2回も私の下着見てるからね。
我慢できなかったのかも」
「これはその…ヒミツです…」
「「またそれ!?」」
九条院にも秘密にされてたもんな。
まーた風神雷神が爆誕してしまう。
月曜の朝っぱらから。
「ちなみに弁明しておくが、
イヴが俺と寝ることは母さんの許可済みらしいぞ。
あとイヴの夢には入ったが、イヴには会ってないんだ。
俺は何もしていない」
「「ふ〜〜〜〜ん?」」
1ミリも信じられていない。
そしてちょくちょくハモるな。
あ、そう言えば夢の中で橘博士に
聞いたことを試してみたいんだった。
「話は変わるんだけど…今後寝る時、
みんな自室のドアを開けたまま寝てくれないか」
「「こんの性欲大魔神がー!!」」
風神、雷神、性欲大魔神の三神の戦いが今、始まる。
いや俺、性欲大魔神じゃないけどね。
唯一事情を理解しているイヴは、
憐れみの目で蒼を見つめていた。
「私はあなたの誠実さを知っていますよ…アオイ」
////
朝の食卓。
俺の部屋でのドタバタが聞こえていたらしく、
母さんは呆れ顔でこう告げた。
「…アンタたち、朝から元気ね〜」
「母さん、イヴに俺の部屋で
寝ることを許可したんだって?」
「ええ、したわよ。イヴなら蒼に襲われても
返り討ちにできるだろうから」
信用してんのそっちかよ。
息子の誠実さを信用してくれよ。
なお栞と麗奈は、イヴの説得によって
落ち着きを取り戻した模様。
「そういえば母さん、イヴの夢の中で
橘博士に会ったんだ」
「あら、ドクターに?何か話したの?」
「俺の能力は、別に同じ部屋の相手じゃなくても
使えるんじゃないかって」
「あー、認識拡張の話ね。あなたが『届く』と認識できれば、
きっと同じ部屋じゃなくても大丈夫なはずよ」
「だから、今後実験してみようと思って。
みんなにドアを開けて寝るよう頼んだけど、怒られた」
「そりゃあ女の子ばっかりなんだから
そうでしょう。デリカシーを持ちなさい」
「「うんうん」」
栞と麗奈が頷いている。なんか特定のシチュエーションで
やたら息ピッタリになるんだよなこいつら…。
「一緒に寝たことあるんだし良くないか…?」
「事前にわかってるのと、いつ見られるか
わからないのは違うのよ、童貞」
栞にバカにされた。
「私は構いませんよ、アオイ。今晩からドアを開けて
寝ますから、アウトソムニアを試してみてください」
ありがとうイヴ。
君が神城家最後の良心なのかもしれない。
アメリカから来たばかりだっていうのに。
「でも、それじゃイヴの夢にばっか
入るかもしれないってことだよね…じゃあ私もドア開ける」
「じゃ、私も」
結局開けんのかよ。
俺、意味もなく童貞であることを発表されただけじゃん。
////
各自登校の準備をして、玄関へと集合。
ってあれ?イヴがウチの高校の制服着てないか?
プラチナブロンドの髪に碧眼というのは、
日本において異色ではあるが…とてもよく似合っている。
そもそも制服のデザインって西洋のものが
ベースになってるんだと思うし、当たり前か。
「今日からアオイたちの高校に転校します」
「えっそうなの?イヴって何年生なんだ…?」
よく考えたらイヴの年齢を知らない。
なんとなく年下かなとは思っていたんだけど。
「1年生です」
「じゃあ私と同級生じゃん!よろしくね〜イヴ」
「はい、よろしくお願いします」
「固いって!同級生なんだからタメ口にしようよ」
「…あ、ありがと、シオリ」
イヴは俯きがちに答える。
「可愛い〜〜!!トップオブギャルと
クールビューティに囲まれる生活、神」
「またトップオブギャルとか言ってるし…」
朝からテンションの高い栞と、呆れ気味の麗奈。
栞、無理に明るく振る舞ってないといいんだけどな。
ひょっとするとイヴに母さんを
取られたように感じているかもしれないから。
「イヴ、日本に来たばかりだし、
同級生の知り合いは栞しかいないと思うんだ。
どのクラスになるのかわかんないけど、
うまくフォローしてあげてほしい」
「任せときなさい。クラスで浮くなんて真似、
絶対させないから」
栞も、小さい頃は学校を休みがちだったから、
クラスでは若干浮いていたらしい。
同じ目に遭わせたくないのだろう。
「よし、じゃあ学校行くか。あ、母さん!
今日三者面談だからな!忘れないでくれよ」
「言われなくてもわかってるわよ。
みんな、行ってらっしゃい」
こうして俺たち4人は、家を後にしたのだった。




