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第23話「どんぶりと天丼」

麗奈の部屋から荷物を運び出し、マンションを出た一行。

1人2箱、計6箱で引越し用の荷物はぴったり運び出せた。


「そういえばイヴ、どこ行ってたんだ?」

「雑巾を3枚ほど積んでおこうと思ったのですが…

逃げられてしまいました」

「麗奈の部屋は綺麗だったから、

雑巾は特にいらなかったぞ?」


雑巾に逃げられたってどういうことだろう。

雑巾って野生で捕まえるものだったっけ。


「引越しにしては異様な荷物の少なさだけど、

とはいえ持って歩くのは重い。さっさと帰ろう」

「そうだね」

「私が全部持ちましょうか?」


なんでもないことのように聞いてくる。

パンパンのダンボールを6箱同時に持つつもりか?


「イヴ…本当に強いんだな」

「ええ。ですから遠慮なく」

「いやでも、なんだか申し訳ないから俺も持つよ。

それに、男の俺が手ぶらだと世間の目が痛い」

「今時、男らしいとか女らしいとか、

気にしなくていいんですよ?」

「とは言ってもな…まだ日本文化が追いついてないんだ。

あ、麗奈は別にイヴに持ってもらっていいぞ?」

「いや、私も自分で持つよ。そもそも私の引越しだしね」

「おふたりとも真面目なんですね」


微笑むイヴ。俺がイヴと戦ったら、数秒で倒されちゃうのかな。

男らしい女らしいを気にするなとは言え、

ちょっと情けない。鍛えるか。


「せっかく両手に花なのに、全員で

ダンボール運んでるのシュールだな」

「そんな…私が並んでしまっては、トップオブギャルに失礼です」

「その呼び方恥ずかしいからやめて…」


いいじゃん、トップオブギャル。誉れじゃん。


「こっちはエセ金髪だからさ。

天然のプラチナブロンドには敵わないよ」

「そうでしょうか?

私も髪を染めてみたいと思っていたのですが」

「いやもったいないって!

酢豚にパイナップル入れるようなもんだよ」


別にパイナップル入れてもいいだろ。

全国の酢豚パイナップルガチ勢に怒られるぞ。


「酢豚って、中華料理のひとつですよね?」

「そう。豚肉に甘酢の餡がかかってる食べ物。

たまにパイナップルを入れる愚か者がいるの」


ガチアンチすぎる。家で酢豚作る時には気をつけよう。


「少し不思議な組み合わせではありますね。

美味しくなる場合もあるのでしょうか」

「ないない。絶対ない。異物混入、この世の終わり、

全ての争いの元凶と言っても過言ではないよ」


過言だよ。お前酢豚のパイナップルに何されたんだよ。


「イヴは、何か好きな食べ物とかあるか?」

「ラーメンです」


即答。まったく迷う素振りがなかった。

そんなに好きなのか、ラーメン。


「日本はラーメンの聖地だからな…

しばらく楽しめると思うよ」

「これも日本に来たかった理由のひとつです。

まずはこの街にあるラーメンを制覇しようと思います」


家の近所だけでも10軒はあるけど…

この熱意なら、秒で制覇しそうだな。



////



神城家に到着。3人でダンボールを

麗奈の部屋に運び込んだ。

麗奈はこのまま荷解きをするようみたいだ。

手伝おうかと思ったが、また麗奈の下着など

見てしまっては一巻の終わりなので、イヴを連れて居間へ。


「まだ母さんと栞は帰ってこないみたいだな…

そうだイヴ、ラーメン作ろうか?」

「え、ラーメンって自宅で作れるんですか?」

「ああ。店とまったく同じとはいかないが、近い味は出せる。

ただ、麺だけは既製品で許してくれ。ウチには製麺機がない」

「スープが作れるだけで十分です!ぜひお願いします」


ラーメンのスープは、骨から取ろうとすると

かなりの手間と時間がかかる。

だが、肉から取ってしまえば家でも比較的手軽に作れるのだ。

麺は家にないので、栞に連絡して買ってきてもらおう。


ちょっと待てよ?どんぶりが足りない気がする。

ウチに4つあるから、あと1つあれば良いんだが…

もしかして、麗奈の荷物の中にあっただろうか?

ワレモノがあるって言ってたよな。


麗奈の部屋に行き、扉を開ける。


「なあ麗奈、どんぶり1つ持って——」



麗奈は、オトナな下着を手に持って眺めていた。



ゆっくりこちらに振り向いた。



終わった(本日2回目)。



「いやいやいや!何してんだよ!眺めてないで仕舞えよ!」

「アンタさあ…女の子の部屋の

タンスもドアも勝手に開けるんだ?」

「違う!どんぶりを獲得することで頭がいっぱいで」

「意味わかんないんだけど!?早くどんぶり持って出てけ!!」


好感度を失った。

どんぶりは獲得した。



キッチンで待っていたイヴの元へと戻ってきた。


「麗奈の怒鳴り声が聞こえてきましたが…大丈夫ですか?」

「ああ。ラーメン作りの道は険しいんだ」

「はあ」


ラーメン作りを再開。ラードもネギもニンニクも、

常備しておいて良かった。スープを取った肉で

チャーシューも作ってしまえば良いし、

夢の中でラーメンを研究した俺に死角はない。


イヴはキラキラした瞳で、ラーメン作りを眺めていた。

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